ホラー適性を持つ子役・後藤由依良に注目! 『ハロー張りネズミ』不気味な空気漂う第5話
先週に引き続き、原作でも人気の高いオカルトエピソード「ママ、淋しかったの」を描いた、11日放送の金曜ドラマ『ハロー張りネズミ』(TBS系)第5話。人気漫画家の母親が留守の間、家にひとり残された娘の周りで起きる謎の怪奇現象。一人でこの案件に立ち向かう七瀬五郎(瑛太)の前に、強力な助っ人として現れた霊能力者の河合節子(蒼井優)。そしてついに悪霊と対峙し、柱の中に封じ込めたところで終わった先週の前編。
後編では、その家の和室で異様な存在感を放つ古い柱の存在を調べ始めた五郎たち。柱が山奥の廃墟から持ち出されたものであることを突き止め、その場所に向かう。通りかかった人から「おばけやしき」と呼ばれるその廃墟は、かつて祈祷師の老婆がひとりで暮らしており、毎夜のように儀式が行なわれていたというのだ。あらゆる怨念が封じ込められた柱が、依頼人の家にやってきたことを知った五郎と節子は、ついに悪霊払いに挑むのである。
さて、今回最大の注目ポイントは、悪霊払いの場面と、そこで描かれる悪霊の造形である。前編では大きな手しか登場しなかったこの悪霊であるが、今回は依頼人の娘・七恵(後藤由依良)を操り、護符縄を外させると、ふわりと柱からその姿を現す。ここではまだ最近のテレビドラマでも頻繁に登場しそうな視覚効果で作られた、いかにもな姿である。
ところがそのあと、向こうの世界に引き摺り込まれた七恵を助けるために、五郎が柱から七恵を引っ張る場面に、どこか懐かしい感覚を覚えた。これは『学校の怪談』シリーズの2作目や3作目で、鏡の中に引き込まれた登場人物を助け出す場面によく似ているではないか。すると、その後はっきりと現れる悪霊は、実に見応えのある姿となっている。
前編同様の大きな手から、そこに出現する大きな顔。形を変えるごとに、妙に洗練されていくこのクリーチャー造形は、前述した『学校の怪談』の1作目で、用務員の妖怪“クマヒゲさん”が徐々に進化していった場面を思い出させる。20世紀の妖怪映画さながらの見事な特撮技術を想起させるこの場面に、ボルテージは最高潮にまで達する。2017年のテレビドラマとは思えないアナログな造形に、特撮への愛が溢れているのだ。
そして、クリーチャー造形に留まらず人間のキャラクターの描き方も実に巧妙だ。とくに、強い霊能力を持った七恵を演じた後藤由依良は、気にならずにはいられない逸材である。一昨年放送されていたTBS系火曜ドラマ『マザーゲーム〜彼女たちの階級〜』で、セレブな世界の一員になろうと見栄を張って堕ちていく貫地谷しほり演じる母親に振り回される、気弱な娘を演じていた彼女。
たった2話だけの登場ではあるが、霊に取り憑かれた彼女の演技は、このドラマを大いに盛り上げてくれた。母親の仕事場の隅で、黒いクレヨンで塗りつぶすように絵を描くときの生気を失った瞳。顔に謎の紅斑が現れながら包丁を持って歩く姿からは、『エクソシスト』で悪魔に取り憑かれるリンダ・ブレアだけでなく、『ザ・チャイルド』や『エスター』といった、“子供が怖い”ホラー映画のような、不気味な空気を漂わせている。