高杉真宙×葵わかな×清水尋也『逆光の頃』鼎談 清水「力を合わせてひとつの作品を作り上げた」

『逆光の頃』インタビュー

高杉真宙「同年代の共演者が多い作品は、すごく刺激を受ける」 

ーー清水さんは劇中でギターボーカルを披露していましたよね。もともと、音楽をやっていたのですか?

清水:バンドを組んでいたので、ベースはもともとやっていました。ギター自体はちょろっと触ったことはあったのですが、しっかりと練習したのは今回が初めてです。

葵:あれ本当に弾いてたんですか?

清水:本当に弾いてます。後からギターと唄をのせると思っていたのですが、小林監督から「一発でここで撮るから」と言われ、あの場で本当にギターを弾きながら唄っています。すごく緊張しました……。

高杉:ずっと練習してたもんね。

ーー高杉さん、清水さん、葵さんが互いのお芝居を見て刺激を受けたことを教えてください。

高杉:たくさんあります。たとえば、先ほど話していたギターボーカルのシーンはすごく刺激を受けました。あのシーンの孝豊は、ステージに立つ公平を観客に混じって下から観ているという設定です。そのため、僕自身、尋也がギターを弾きながら唄っている姿を間近で観ていたのですが、本当にかっこよくて……。なおかつ、色気が凄まじいんですよ。

葵:確かに、雰囲気ありますよね。当時16歳にはとても見えなかったです。

高杉:化け物かよ……って思いましたね(笑)。あとは、葵さんは本当に京都弁が上手で、全く違和感がないんですよ。だから、僕は葵さんの自然な京都弁に負けないくらい、しっかりとお芝居をしないといけないと、改めて気が引き締まりましたね。同年代の共演者が多い作品は、どうしてもお互いを意識してしまいます。相手にも自分自身にも敏感になっているので、些細なことでも気づきがあるんですよ。だからこそ、すごく刺激を受けますね。

清水:僕は、真宙と葵さんを見ていて、とても落ち着いた質感があるお芝居をされているなという印象を受けました。もともと『逆光の頃』という作品自体が、あまり起伏がなく、淡々と物語が紡がれていくと言いますか、ゆったりと上品な時間が流れていくイメージです。そんな本作を通して、気づいたことは、うまい芝居をするよりも深い芝居をすることが大事だということです。特に、孝豊のお父さん役を演じた田中壮太郎さんのお芝居を観て感銘を受けましたね。もちろん、うまい芝居をするために技術を磨くことも僕たち役者にとっては必要なことです。ですが、もっと内面的なもの、目に見えないものが芝居にはあると感じました。感情や知識、人間性、培ってきた経験など、その人自身の豊かさが深い芝居に繋がるのではと思います。新しい発見と言いますか、以前よりも役者としての幅が広がった気がしますね。

葵:『逆光の頃』は原作があるため、もともとある世界観のイメージを壊さないようにお芝居をするのがとても難しかったです。でも、高杉さんと清水さんは原作の空気感を大切にされた上で、型にはまり過ぎないお芝居をされていました。孝豊なんだけど高杉さんでもあり、公平なんだけど清水さんでもある。おふたりとも自分らしさを出しつつ、しっかりと役柄を全うしていて、そのバランス感覚がとても上手なんですよね。孝豊も公平も原作の漫画とは、ビジュアルがだいぶ違うのですが、キャラクターのイメージは崩さずに再現されていて、とても驚きました。

葵わかな「“原作を忠実に再現すること”に重きを置いていた」

ーー特に印象に残っているシーンを教えてください。

高杉:僕は印象に残っているシーンが本当に多過ぎて、ひとつには絞れないんですよね(笑)。どのシーンも大切にしながら丁寧に撮影を積み重ねていったので、僕にとってこの作品自体、とても思い入れが深いです。今、パッと思いついたのは“大文字の送り火”のシーンですね。公平を想ってというのもありますが、孝豊がどんな考えを持って生きている人間なのかが描かれています。孝豊という人物の内側、根っこの部分が垣間見えるので好きですね。その繋がりで言うと、孝豊が「宇宙人は絶対いる」と思いながらみことと一緒に月を眺めているシーンも印象深いです。ファンタジー要素が混ざっているため、映像自体も幻想的で素敵なんですよ。

清水:僕は、公平と孝豊がふたりで河原を歩いているシーンですね。実はあのシーン、様々な場所で何テイクも撮影しています。セリフ以外の視覚的な要素として、京都の街並みや色合いの美しさがしっかりと映えているところが好きです。僕も真宙も特に意識はしていなかったのですが、歩いてるふたりの距離感が絶妙なんですよ。実際に無意識のうちに、仲が良い人とは距離が近く、あまり親しくない人とは距離が遠いじゃないですか。だから、あのシーンは公平と孝豊の関係性が最も表されているように思います。

葵:私は、孝豊がいる教室にバトミントンのシャトルを拾いに行くシーンですね。髪型を変えて何度か撮り直しています。すごく苦戦したシーンなので、その分思い入れも深いです。最初は3月に撮影して、髪型はポニーテールだったのですが、なかなかオッケーが出ませんでした。でも当時は、何がダメなのかがわからなかったんです。そして、9月にもう一度撮影をし直したのですが、そのときは髪を下ろして挑み、すぐにオッケーが出ました。髪型もあると思いますが、それ以上に自分自身が半年の月日を経て役に馴染むことができたのかな、と。この作品は全体的にあまりセリフがないのですが、あのシーンはセリフも多かったので、余計に印象に残っていますね。

高杉:初めてふたりで撮影したシーンだよね。だから、9月に撮影し直したときは、あっさりオッケーが出て、少し拍子抜けしてしまいました。

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