西島秀俊と石田ゆり子は“ただならぬ関係性”だ 『CRISIS』共演に漂う艶っぽさ

西島秀俊&石田ゆり子、共演に漂う艶っぽさ

 「道徳的に生きている人間の陥りやすい欠点が何かわかるか? 他人にも自分と同じ種類の道徳を求めることだよ」。4月18日に放送された『CRISIS(クライシス)公安機動捜査隊特捜班』(カンテレ・フジテレビ系)の第2話。ついに“国家を揺るがす事件”の序章とも言える“政府要人”の黒すぎる裏側が垣間見えた。物語的には、特に事件が解決されたわけではないため、なんとも不完全燃焼な終わり方だったと言えなくもない。だが、解決できなかったものを含め一つひとつの事件を積み重ねていくことで、やがて“規格外”の大事件へと繋がっていくのだろう。いわば、作品の全体から見れば第2話はまだ“伏線”の一部に過ぎないのだ。

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 事件を追求しようとする田丸だったが、鍛冶大輝(長塚京三)から自分の“道徳”を人に押し付けるなと注意され、畳み掛けるように「もしそれでもお前が、正義の旗を振って前へ進むと言うなら、それは単なる自己満足だ。自分に酔ってるだけだ」と言われてしまい、立ち止まるしかなかった。少女たちを助けたいという強い思いや、“国家の危機”を自分に訴えてきたフリージャーナリストの死を無駄にしてしまう不甲斐なさ、国家に対する不信感などが募り、心が揺れる。いくらクールで冷徹に見えても、ひとりの人間にすぎないのだ。

 放送開始前から、『SP 警視庁警備部警護課第四係』(フジテレビ系)の直木賞作家・金城一紀が原案・脚本を手がけたこともあって「『SP』を彷彿とさせる」や、西島秀俊と石田ゆり子の共演により「『MOZU』(TBS、WOWOW共同制作)を思い出す」という声が目立った。実際に、第1話、第2話までの内容は、どこかで1度は観たことがある展開がギュッと詰まっている印象なのだが、決して二番煎じ感はない。何よりもキレがあるアクションシーンに見惚れてしまい、気づいたら60分が経過しているから不思議だ。週を重ねるごとにより深く“闇”の部分に進んでいくことを予想させる展開に、ワクワクが止まらない。どこまで、沈んでいくのだろうか。

 まだまだ、謎も多く、人物の背景もほとんど描かれていない。なぜ、彼(女)らは警察庁警備局長・鍛冶直轄の秘密部隊である公安機動捜査隊特捜班に在籍しているのか、どんな過去を背負っているのか……。特に第2話では、田丸三郎(西島秀俊)と林千種(石田ゆり子)のミステリアスな関係性に、密やかな色気を感じざるを得なかった。千種は、“新興宗教団体 神の光教団”に出家信者として潜入している林智史(眞島秀和)の妻で、そんな千種の夫を説得し、今の任務につかせたのが田丸だという。だが、ふたりの関係性はそれだけではないように思う。どことなく“男女の関係”が漂っているのだ。

 教会で俯きながら座っていた田丸の隣に腰掛けてから、「後ろから見たら、熱心に祈ってるように見えましたよ」と声をかける千種。ふたりの間には物理的になんとも言えない距離があり、その“距離感”こそが妙に艶っぽさを感じさせる。千種が、もう2年も帰ってきていない夫がいつ戻ってくるのかと問いかけると、正確のことは言えないがそんなに長く待たせることはないと答える田丸。決してお互いの顔を見ず、正面だけを見据えて会話していく。

 一通り会話が終わると「もう行きますね。また、来月」と、田丸の方に顔を向ける千種。田丸も顔を上げ、数秒互いに見つめ合う。そこで、会った時から田丸の異変に気付いていた千種は、「今日はずっと泣きそうな顔してる。何かあったの?」と小首をかしげた。再び俯いた田丸は、弱々しい声で「まだ、行かないでください。もう少しそばにいてください」と、普段のクールな田丸からは想像もできないような言葉を漏らす。その田丸のお願いに顔色ひとつ変えず「はい」とだけ答える千種。お互いにただ正面だけ見据えて無言で座り続けた。

 もしかしたら田丸は、自身の“道徳観”もしくは“正義”を智史に押し付けたのかもしれない。その罪悪感ゆえに千種のことをほっとけず特殊な関係になり、待ち合わせの場所は“教会”で、千種には田丸の姿が祈るように見えたのではないか、と深読みしてしまう。事件を追求できなかったことへの無念さだけで弱音を吐くほど心を痛めているのではなく、鍛冶の言葉が心に刺さっているからこそ田丸らしさを失っているのではないだろうか。

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