アイドルがドラマ脚本家を刺激? Perfume×木皿泉コラボが成功したワケ

 そもそも「日常を大切にするとか、食事が大切」みたいな思想は声高に主張する程、本質から遠ざかる。本作のように淡々と見せた方がむしろその良さは伝わってくる。こういった言葉の無意味化、無機質化は、中田ヤスタカがPerfumeの楽曲でやり続けてきたことをドラマに落としこんだもので、三人の女の子のチャーミングな軽やかさが、自意識過剰な引きこもりの中年男性の心を救うという物語に説得力を与えている。

 その意味でも久々に心から楽しめる木皿泉ドラマだった。ただし、三人の仕事している場面が、映像として登場せず、全部台詞で処理されていることが気になった。単に予算がなかったので撮れなかったのかもしれないが、20代の女性が現代社会で働くことの苦しさが台詞だけでしか語られないのだ。力丸の抑圧となっている両親も画面に登場しないことを考えると、演劇的な効果を考えたのかもしれない。この演出は、木皿泉作品が持つ、現実に対するシェルターのような世界観を際立たせていたのだが、同時に他者の存在が画面に映ること自体を拒絶しているかのような居心地の悪さも感じる。

 もしかしてこの三人は本当は仕事なんかしてなくて、力丸を外に連れ出すために未来から送り込まれたメイドロボットなんじゃないかと疑ったりもした。これは半分は冗談だが、三人が社会に対して抑圧を抱えているなら描くべきだし、描かない理由があるのであれば、ちゃんと映像にしてほしいと思った。もし続編があるならそこに期待したい。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■番組情報
ドラマスペシャル『パンセ』
テレビ大阪にて、4月9日(日)25:05~25:38(前編)、25:38~26:10(後編)放送
主演:Perfume(あ~ちゃん、かしゆか、のっち)
出演:勝村政信、片桐はいり、古舘寛治、大島蓉子ほか
脚本:木皿泉
監督:後藤庸介
プロデューサー:阿部真士(テレビ東京)、後藤庸介(共同テレビジョン)
制作協力:共同テレビジョン
製作著作:テレビ東京
公式サイト:http://www.tv-tokyo.co.jp/pensees/

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