一家の“サバイバルライフ”はどう描かれた? 『はじまりへの旅』マット・ロス監督が語る制作背景

『はじまりへの旅』M・ロス監督インタビュー

「ヴィゴ・モーテンセンはまさに僕が求めていた役者だった」

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ーーそんな子供たちをまとめる父ベン役にヴィゴ・モーテンセンを起用した理由は?

ロス:実は、脚本の執筆段階では主人公のベン役に彼を想定していたわけではなかったんだ。特定の役者を想定して脚本を書いても、その役者とコンタクトが取れるかもわからないし、そもそもスケジュールの問題があるからね。ただ、キャスティングの段階で僕はすぐにヴィゴをファーストチョイスとしてベン役の候補に挙げたんだ。僕はヴィゴの出演作はほとんど観ているけれど、ショーン・ペンが監督した『インディアン・ランナー』に出ていた頃から、いい意味で複雑なニュアンスを持った深い演技をする役者だなと思っていた。面識はなかったけど、今までの彼の仕事はとても素晴らしいものだったから、僕も彼の功績に対して敬意を払っていたし、ぜひ一緒にやりたいと思ったんだ。映画作りはコラボレーションによって成り立っているところもあるから、誰と組むかによってその作品の評価が定義づけられるところもあるんだよね。コラボレーションする相手は非常に重要なわけさ。僕は、ヴィゴが品格を持って出演する作品を選んでいるなということも感じていた。どういう作品に出演するかはもちろん大事だけど、どういう作品に出演しなかったかということも、その役者がどういう人物なのかを知らしめてくれる重要な要素だと思っているんだ。

ーー実際にコラボレーションをしてみていかがでしたか?

ロス:ヴィゴは現場に入ってからもこちらの想像以上に役を掘り下げてくれた。役者によっては、まったく重要ではないことばかりに囚われてしまう人や、お金を稼ぐ目的のためだけに現場に来るような人もいるものなんだけど、ヴィゴは心の底から作品のことを思ってくれて、キャストやスタッフとコミュニケーションを取りながら、遊び心を持っていろいろなことを試そうとしてくれたんだ。特に今回の作品は僕にとって、監督も脚本を手がけた重要な作品だったから、作品のことを大切に思い、僕と同じぐらいの熱量を持ってコラボレーションしてくれる役者を求めていた。なかなかそういう人はいないものなんだけど、ヴィゴはまさに僕が求めていたそういう役者だったんだ。真剣に作品のことを考え、よりよいものにしようとみんなで一緒に作り上げようとする。そんなところが、彼の役者としての大きな魅力のひとつだと思うよ。

(取材・文=宮川翔)

■公開情報
『はじまりへの旅』
公開中
監督・脚本:マット・ロス
出演:ヴィゴ・モーテンセン、ジョージ・マッケイ、フランク・ランジェラ
配給:松竹
原題:Captain Fantastic
119分/シネスコ/英語/日本語字幕:中沢志乃
(c)2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:hajimari-tabi.jp

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