朝ドラの定型を崩してきた『べっぴんさん』、残り一ヶ月でどうなる?

 大河ドラマもそうだが、長期にわたる実話を元にした歴史モノは、史実通り満遍なく描こうとするあまり、書かなくてもいい時代まで書いてしまい、物語としてのメリハリを失ってしまう。『べっぴんさん』が見事だったのは、見せるべきポイントを絞りこんで母(戦中派)と娘(戦後派)の対立を主軸に置いたことにある。

 現在、物語は大阪万博が開催された1970年となっている。さくらはキアリスの新入社員として悪戦苦闘しているが、母娘の葛藤の問題はほとんど完結しているので、おそらく、クライマックスは岩佐栄輔(松下優也)の行く末なのだろう。かつて、すみれ達といっしょに働いていた栄輔は、紀夫の帰還と共にすみれの元を離れ、若者向けブランド「エイス」を立ち上げ、時代の寵児となった。

 栄輔のモデルはメンズファッションブランド「VAN」(のちの「ヴァンヂャケット」)の創業者・石津謙介だと言われている。大手商社「KADOSHO」の古門充信(西岡徳馬)は石津と業務提携した丸紅の社長・檜山廣だが、1976年にロッキード事件で逮捕されてしまう。その影響もあって、ヴァンジャケットは倒産するのだが、この場面を本作はどう描くのか?

 かつて栄輔は、取引先の工場の経営危機に気づかなかったすみれに「やっぱりあなたは、人の心がわからん人や」(99話)と言った。これは、一見するとさくらの気持ちがわからないすみれのことを重ねて言っているように聞こえるが、あれは一種の愛の告白で、かつてすみれのことを好きだった自分自身の気持ちを遠回しに語っていたのだろう。すみれを好きだったが故に、すみれから離れなければならなかった栄輔の栄光と挫折を最後にどのように見せるのか、注目している。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■番組情報
NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』
制作局:NHK大阪放送局
出演:芳根京子、生瀬勝久、菅野美穂、蓮佛美沙子、高良健吾、谷村美月、百田夏菜子、土村芳、永山絢斗、市村正親、名倉潤、松下優也ほか
作:渡辺千穂
音楽:世武裕子
平成28年10月3日(月)〜平成29年4月1日(土)全151回(予定)
<総合>
(月〜土)午前8時〜8時15分/午後0時45分〜1時[再]
<BSプレミアム>
(月〜土)午前7時30分〜7時45分/午後11時〜11時15分[再]
(土)  午前9時30分〜11時[1週間分]
<ダイジェスト放送>
「べっぴんさん一週間」(20分)
<総合>
(日)午前11時〜11時20分
「5分で『べっぴんさん』」
<総合>
(土)午後2時50分〜2時55分     
(日)午前5時45分〜5時50分/午後5時55分〜6時
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/beppinsan/

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる