佐々木蔵之介、立体的な“キャラクター作り”の巧さ! 『破門』やくざ役のアプローチを読む

佐々木蔵之介、多面的な役作りの凄さ

 直木賞作家・黒川博行の「疫病神」シリーズ第5作「破門」を映画化した『破門 ふたりのヤクビョーガミ』。本作でイケイケの関西やくざ桑原を演じているのが、実力派俳優・佐々木蔵之介だ。コテコテの任侠の世界ではなく“厄介で一緒に仕事したくない人物”という監督のコンセプトを見事に表現。その実力を存分に見せつけた。

 佐々木と言えば、主演も脇役もこなす実力派俳優として、近年、映像界では引っ張りだこの存在だが、もともとは大学在学時に劇団「惑星ピスタチオ」の旗揚げに参加し、同劇団の看板俳優として活躍するなど、舞台俳優としての実力も兼ね備えている。2015年に上演された「マクベス」では1人20役というとてつもない設定での舞台を敢行。相手の名前がセリフで語られることがないにも関わらず、しっかりと群像劇を成立させる圧倒的な表現力で観客の度肝を抜いた。

 この舞台のように、佐々木の最大の魅力はキャラクター作りと言えるかもしれない。人物の一番の見せどころとなる特徴をしっかり捕まえつつ、一元的ではなく立体的に人物を表現するのだ。例えば『破門 ふたりのヤクビョーガミ』では、任侠ものではなく、エンターテインメント作品に登場するやくざとして、喧嘩っ早く、ユーモアを交えながら汚い手口を使ってでも目的を達成していくような軽やかで魅せる演技を披露している一方で、「イタリアンマフィアをイメージした」という洒落たスーツで眼光鋭く相手を睨みつけ、自身の正義(と言っても社会正義ではないが)を貫き通す重厚な一面も見せる。

 大ヒットを記録した『超高速参勤交代』シリーズで演じた湯長谷藩のお殿様も、家来や百姓に対して同じ目線で接するお人好しな面を見せつつも、いざ窮地に陥れば、自ら陣頭に立ち勇ましい一面も見せるという、同一人物ながらも振れ幅の大きい多面的な役柄をうまく表現していた。

 役柄を立体的に見せるコツとして、佐々木は「絶対こんなセリフは言わないよなという決めつけを持たないこと」とインタビューで答えていた。あるキャラクターを演じる際、しっくりこないセリフもあるという。そこで「そんなセリフ言わないだろうな」と考えるのではなく、役柄をそのセリフに近づけるように持っていくというのだ。こうしたアプローチ方法によって、自分が考えていたキャラクターにプラスした一面が追加され、人物を立体的に表現することができるというのだ。

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