『島々清しゃ』は不器用な大人たちを包み込むーー沖縄の離島で“グルーヴ”が生まれるまで

『島々清しゃ』は不器用な大人たちを包み込む

 最後、うみはさんごを音楽で包み込む。耳あてをさんごに預け、「耳ふさいでたらいつまでもあわん」と言って。彼女は自らの成長をもって、孤立し自らの世界の中に閉じこもって苦しんでいたさんごを包み込むのである。

 そして、祐子もまた同じようにうみをはじめ子どもたちに救われる。自然に島の人たちに溶け込んだかのように見える祐子だが、最初は真栄田に警戒され、ヴァイオリンで沖縄の曲を演奏するとうみに否定される。誰にも何も言わずに東京に逃げるように去ろうとする彼女が、最後に子どもたちと「島々清しゃ」を演奏する場面は、本当の意味で彼らに受け入れられたということを示しているのである。

 真栄田が、みんなで演奏した曲名を問われて「レッテルなんかいらん、グルーヴしてるかしてないかさ」と答えるように、彼らはグルーヴする。島の人間かそうでないかでもなく、母親がいるかいないかではなく、音が聞こえるか聞こえないかではなく、全ての垣根を越えて、音楽で一つになる。ただがむしゃらに「きれいな音になろう」とするうみと子どもたちが、不器用な大人たちを包み込む。その姿は、涙なくして観られない。

『島々清しゃ(しまじまかいしゃ)』予告編

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■公開情報
『島々清しゃ』
テアトル新宿ほか全国順次公開中
監督:新藤風
脚本:磯田健一郎
出演:伊東蒼、安藤サクラ、金城実花、山田真歩、渋川清彦、角替和枝、でんでん
プロデューサー:新藤次郎
撮影:山崎裕 照明:山本浩資 録音:吉田憲義 美術:金勝浩一
配給:東京テアトル
公式サイト:http://www.shimajima-kaisha.com/
(c)2016「島々清しゃ」製作委員会

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