草なぎ剛の表情から目が離せない! 『嘘の戦争』第1話の“リアリティとユーティリティ”

 1月10日、草なぎ剛が主演するドラマ『嘘の戦争』(フジテレビ系)の第1話が放送された。初回拡大版は連続ドラマの1話目というより、秀逸な2時間サスペンスかと見紛うほどの濃密な時間だった。だが、まだ復讐劇はスタートしたばかり。スピーディーで見どころ満載だった第1話を振り返りたい。

 まずは、ストーリーのおさらいをしよう。草なぎが演じるのは、幼いころに家族を殺されたにも関わらず「父親の無理心中だった」と、嘘の証言を強要された過去を持つ千葉陽一という男である。「真犯人を見た」といくら訴えても、警察にまで「嘘つき」と言われ続けてしまう。ひどい話だ。そんな心の傷を抱え「どうせ嘘ばかりの世界なら、騙す側に」と、詐欺師の道へ。「一ノ瀬浩一」と名を改め、詐欺師仲間らと共に、タイで日本人を騙す日々を過ごしていた。そんな中、真犯人と同じ腕のアザを持つ男を見つける。復讐を誓った浩一は、急きょ日本へ。積年の恨みを晴らすために、事件関係者を追うのだった。

 やはり特筆すべきは、草なぎの表情だ。ラフな詐欺師の顔から、真犯人を見つけた瞬間に絶望を背負った復讐者の顔に急変化。また、あるときはビジネスをまとめるデキる男の顔。雨に打たれ子犬のように震える切ない顔。事件後に身を寄せた児童養護施設に戻り、朗らかな顔を見せたかと思いきや、鬼気迫る顔で敵を追い詰める。そして刺されながらも復讐に手応えを感じて満足そうな狂気じみた顔……いったい、草なぎはいくつの表情を使い分けられるのだろう。次にどんな顔を見せてくれるのか、それだけでもドラマに見入ってしまう。

 さらに、このドラマには視聴者を引き込む罠が仕掛けられている。ヒントは劇中で浩一が、詐欺師見習いのカズキに伝える「リアリティ(現実味)とユーティリティ(役に立つ)。その2つが揃ったとき、人は相手を信じたくなる」という言葉。詐欺師のテクニックとして述べられた言葉だが、ドラマの世界に夢中になる条件とも言えるだろう。

 カズキを演じるのは、Sexy Zoneの菊池風磨。このキャスティングは、当たり役になる予感がした。萌え袖&フードをかぶって、ツッパったような口調のカズキは、菊池のパーソナルイメージにとても近い。だが、悪態をつきながらも浩一の嘘に翻弄され「また騙された」と悔しがる姿に、純粋な一面を覗かせる。スリリングなストーリーにおいて、とても愛らしい存在として光る。そして浩一から詐欺師としての手ほどきを受ける場面は、ジャニーズの先輩、後輩という距離感を見ているようなリアリティがチラつくのだ。

 また、第1話で追い詰めた真犯人は、大きな力に動かされた1人でしかなかった。末端にいる人間は、巨大な力を前に真実を知らされない。それもリアルな世界でよく耳にすること。次々と嘘の情報に踊らされるシーンには、とてもリアリティがあった。“ああ、人はこうやって騙されていくんだ”と、見ていてゾワゾワした。そこで浩一が口にする「真実は自分で見極めろ」という言葉の重みが増すのだ。ここで視聴者は、すでにユーティリティを感じてしまっていることに気づくのである。

 詐欺師ならぬ、ドラマのペースに飲み込まれまい、伏線を見逃すまい、とますます目が離せなくなる。浩一の家族を襲った黒幕とされる大企業グループ二科家。その会長・興三(市村正親)とはどんな人物なのか。承認欲求の強い長男・晃(安田顕)と、警戒心の強い次男・隆(藤木直人)の間に何があったのか。心優しい救命救急医の長女・楓(山本美月)の浩一への想いはどうなっていくのか。そして、30年前の事件の裏側に何があったのか……。

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