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年末企画:麦倉正樹の「2016年 年間ベスト映画TOP10」

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 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2016年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマの三つのカテゴリーに分け、映画の場合は2016年に日本で劇場公開された洋邦の作品から、執筆者が独自の観点で10本をセレクト。第三回の選者は、リアルサウンド映画部の立ち上げ時から執筆し、シーズンごとのテレビドラマ紹介記事も好評を博しているライターの麦倉正樹。(編集部)

1.『インサイダーズ/内部者たち』
2.『淵に立つ』
3.『ジュリエッタ』
4.『二重生活』
5.『ビューティー・インサイド』
6.『母の残像』
7.『FAKE』
8.『若葉のころ』
9.『ひと夏のファンタジア』
10.『ゴッドスピード(原題:一路順風)』

 『ちはやふる』、『シン・ゴジラ』、『君の名は。』、そして『この世界の片隅に』など、公開前よりもむしろ公開後にさらなる評判を呼び、動員の伸ばしていく邦画が複数本見受けられるなど、非常に珍しい年となった2016年。それはそれで非常に好ましい状況であると思うと同時に、そういった「大波」を受けて多くの人に気づかれないままひっそりと劇場公開を終えてしまった映画も、いくつかあったように思う。よって今回はそのような観点から、「2016年見逃すには惜しい映画」を10本選出することにした。

 一時期ほどの勢いは感じられない気がする韓国映画だが、ウ・ミンホ監督の『インサイダーズ』は圧倒的に面白かった。巨悪に立ち向かう社会派エンタメ作品としてはもとより、片腕のイ・ビョンホン、悪党たちのゲスい会食シーンなどケレン味もたっぷりで、個人的にはかなり堪能した。同じく韓国映画では、毎朝目覚めるたびに別人になっているという荒唐無稽な物語を見事純愛物語として成立させた、パク・ジョンヨル監督の『ビューティー・インサイド』も印象深かった。さらに、小品ではあるものの、河瀬直美プロデュース、チャン・ゴンジェ監督による日韓合作映画『ひと夏のファンタジア』も、是非観てもらいたい一本だ。

 冒頭に挙げた作品を始め、メジャー/インディーの区別なく、そして新人からベテランまで、例年以上に見るべき作品が多かった邦画では、画面の奥行きや配置を計算し尽くした、実に精度の高い映像と脚本に唸った深田晃司監督の『淵に立つ』と、ベテラン・テレビマン岸善幸の映画初監督作となった『二重生活』を推したい。さらに、ドキュメンタリーという体ではあるが、事前のネタバレ禁止が周知された森達也監督の『FAKE』のクライマックスがもたらせるカタルシスも忘れがたいものがあった。

 欧米に目を向けると、『ルーム』、『母よ、』、『めぐりあう日』、『ミモザの島に消えた母』など、母親と娘、あるいは母親と息子など、複雑に織り込まれた親子をテーマとする映画が多かった。その中でも、アルモドバルの『ジュリエッタ』、ヨアキム・トリアーの『母の残像』は、とりわけ強く心に残っている。両作品とも、「死」や「喪失」、そして「再生」というテーマを内包している点も、なかなか興味深かった。

 決して完成度が高い映画ではないけれど、忘れがたく美しいシーンが複数あるという意味では、台湾映画『若葉のころ』を挙げておきたい。ミュージックビデオの出身のジョウ・グータイ監督の初長編映画となった本作。そこで、ほとんど完璧な芝居を披露している女優ルゥルゥ・チェンの名前ともども覚えておきたい一本だ。そして、最後に挙げた『ゴッドスピード』もまた、台湾の映画である。よくわらかないままマフィアの「運び屋」をやらされていた青年と、香港の喜劇王マイケル・ホイ演じるタクシー運転手の珍道中を、レフンの『ドライヴ』に勝るとも劣らない美しいバイオレンス描写とともに描き出した本作。東京国際映画祭でのみ上映、劇場公開されていないので、本来リストに入れるべきではないかもしれないが、台湾の次世代を担うであろう監督チョン・モンホンが、きっちりとした形で日本に紹介さることを願いつつ、今回のリストの最後に入れることにした。

【TOP10で取り上げた作品のレビュー】
思わぬ相手に届いた“手紙“は、物語をどう動かす?『すれ違いのダイアリーズ』『若葉のころ』評

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。

■公開情報
『インサイダーズ/内部者たち』
出演:イ・ビョンホン、チョ・スンウ、ペク・ユンシク
監督・脚本:ウ・ミンホ
原作:ユン・テホ
配給:クロックワークス
2015年/韓国/ビスタ/DCP5.1ch/130分/R15
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公式サイト:http://inside-men.com/

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