>  >  > 小野寺系の年間ベスト10

年末企画:小野寺系の「2016年 年間ベスト映画TOP10」

関連タグ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2016年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマの三つのカテゴリーに分け、映画の場合は2016年に日本で劇場公開された洋邦の作品から、執筆者が独自の観点で10本をセレクト。第一回の選者は、本年度のリアルサウンド映画部でもっとも多くのレビューを執筆した、映画評論家の小野寺系。(編集部)

1.『ヘイトフル・エイト』
2.『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』
3.『ザ・ウォーク』
4.『溺れるナイフ』
5.『レッドタートル ある島の物語』
6.『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』
7.『シン・ゴジラ』
8.『ブリッジ・オブ・スパイ』
9.『ファインディング・ドリー』
10.『死霊館 エンフィールド事件』

 2016年の世界的な衝撃といえば、やはり人種差別や女性差別発言を公然と繰り返してきたドナルド・トランプ氏の大統領選勝利だろう。『ズートピア』、『スター・トレック BEYOND』、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』など、多くの国内外の映画がそのような差別への批判を先鋭化させてきたのは、現在の風潮に対する不安や抵抗の表明といえそうだ。

 なかでも最も痛烈だったのが『ヘイトフル・エイト』である。アメリカがいままでどのような罪を犯してきたかを、現在も継続される問題として、ひとつの山小屋のなかで容赦なく再現し告発してみせる。その大胆な発想と見事な演出は、タランティーノ監督の過去作のなかでも最良の一本であり、同年に公開された他の作品を圧倒していたと感じる。

 リチャード・リンクレイター監督の傑作『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』は対照的に、限定的であるが故に輝く「最高の時間」を描く。「映画と時間」の関係を追求してきた監督の、ある意味究極的な「青春映画」である。

 『ザ・ウォーク』は、見世物小屋から始まった映画の歴史を反芻するように、新しい体験を観客に届けた。「手にびっしょり汗をかいた」との声も多く、あらゆるスペクタクルが試され飽きられてきたはずだった映像表現の世界に「いまだにそんなことがあり得るのか」という希望を示した。

 また2016年は、近年まれにみる日本映画の当たり年だったことは、周知の通りだろう。『シン・ゴジラ』、『君の名は。』 、『この世界の片隅に』への人気など、アニメーション作家が躍進したことでも記憶されそうだが、実写作品『溺れるナイフ』はざらついた映像で、まさにナイフで切り裂くような鮮烈な印象を残す。多くの日本人監督が脚光を浴びた年となったが、最も大きな才能を発揮したのは山戸結希監督だ。

 ほか、天才アニメ監督の歴史に残る長編『レッドタートル ある島の物語』。ゴジラを超えるモンスター的存在だった『マダム・フローレンス!』。しみじみ味わい深く人生の価値が語られた『ブリッジ・オブ・スパイ』と『ファインディング・ドリー』。ホラーを通し映画的充実とは何かを再確認させてくれる『死霊館 エンフィールド事件』など、ほぼリアルサウンド映画部にて論じているので、ぜひ読んでいただきたい。

 この原稿を書いている時点で、まだ年内に『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を含めて期待作が残っている。年内に若干の変動の可能性があることを付け加えたい。

【TOP10で取り上げた作品のレビュー】
『ヘイトフル・エイト』は何を告発するのか? タランティーノ最高傑作が描くアメリカの闇
映画の“高所恐怖”表現はどう進化したか? 『ロイドの要心無用』から『ザ・ウォーク』への系譜
『溺れるナイフ』は究極の少女マンガ映画だーー山戸結希監督、文法を逸脱した映像表現の力
『レッドタートル ある島の物語』は”人生そのもの”を提示する 天才アニメーション作家の成熟
音痴歌手が人気者になるのは美談なのか? 『マダム・フローレンス!』が突きつける、現実の二面性
『シン・ゴジラ』は日本の何を破壊する? 庵野秀明監督が復活させた“おそろしい”ゴジラ像
スピルバーグ監督の新たな到達点 『ブリッジ・オブ・スパイ』に宿る信念を読む
『ファインディング・ドリー』が持つ、小市民映画としてのやさしさーー痛みとともに描く人生の意味
『死霊館 エンフィールド事件』はホラーの枠を超える傑作だーー天才監督ジェイムズ・ワンの演出手腕

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■作品情報
『ヘイトフル・エイト』
監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
音楽:エンニオ・モリコーネ 
美術:種田陽平
出演:サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、ウォルトン・ゴギンス、デミアン・ビチル、ティム・ロス、マイケル・マドセンandブルース・ダーン 
配給:ギャガ
原題:The Hateful Eight/2015/アメリカ映画/168分
(C) Copyright MMXV Visiona Romantica, Inc.  All rights reserved.
公式サイト:http://gaga.ne.jp/hateful8/top/index.html

「年末企画:小野寺系の「2016年 年間ベスト映画TOP10」」のページです。の最新ニュースで映画をもっと楽しく!「リアルサウンド 映画部」は、映画・ドラマ情報とレビューの総合サイトです。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版