『逃げ恥』新垣結衣と『校閲ガール』石原さとみ、対照的なファッションに見るそれぞれの個性
現在放送中のドラマ、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)と『校閲ガール』(日本テレビ系)の“衣装”が注目を集めている。ともにSNSで、「『逃げ恥』のガッキーの服どストライクすぎる」、「『校閲ガール』の石原さとみの衣装が毎回、お洒落すぎてツボ」などという声があがっており、視聴者の心を掴んでいるようだ。
『逃げるは恥だが役に立つ』は、職ナシ・彼氏ナシ・居場所ナシの森山みくり(新垣結衣)と恋愛経験のない独身サラリーマン・津崎平匡(星野源)が、雇用主と従業員という形で雇用契約結婚をする模様を描いたラブコメディ。新垣は、主婦として雇われているため、家事が仕事だ。そのため、家の中にいるのがほとんど。一方の『校閲ガール』は、ファッション誌編集者を目指し、憧れの出版社に入社したものの、校閲部に配属された河野悦子(石原さとみ)が、一見地味な仕事に真っ向から立ち向かっていく模様を描いたお仕事ドラマ。石原は、あくまで校閲者だが、事実確認をするために外に出て、様々な場所に足を運び、多くの人と知り合っていく。とてもアクティブで前向きなキャラクターだ。新垣は内、石原は外を拠点に活動している。
対照的とも言える双方の役柄。その違いはファッションからも伺える。例えば新垣は、主婦ということで基本的に動きやすい服装をしている。デニムを基本としたパンツスタイルがほとんど。相手に安心感を与えるような明るく柔らかい色味のアイテムが多い。また、装飾品はほとんど身につけておらず、スッキリと無駄のないコーディネートだ。みくり(新垣)の感情を表すかのように、ハッピーなシーンではピンクや黄色などの明るい配色、悩み葛藤するシーンでは黒や白などの無彩色を軸においたコーディネートが目立つ。
さらに、主婦の象徴とも言えるアイテム “エプロン”にも注目したい。新垣が家事代行として働いていた初回では“YES! GOOD JOB!”と描かれたエプロンを着用しており、仕事を完遂させるというみくり(新垣)の意志を表明しているかのようであった。また、みくりを風見涼太(大谷亮平)とシェアすることになった回では、自尊感情の低い男である平匡は、みくりに対して心を閉ざしてしまう。そんなシーンで新垣が着用していたエプロンには“TRUST ME”という文字がデザインされていた。まるで、平匡に信頼してほしいというみくりの想いが代弁されているかのよう。そういった、遊び心を感じさせるファッションもまた面白い。
片や石原は、ファッション誌の編集部志望ということもあり、個性的なファッションが目立つ。ヒールの高い靴を着用しており、機能よりもデザイン重視という印象だ。ワンポイント(アクセント)となるアイテムを取り入れているため、派手で目を引く。例えば、先週の第7話で着用していたファーティペットや、ほぼ毎週のように目にするスカーフなど。装飾品が多く、小物もバリエーション豊かだ。だが、カラフルかつ柄物が多いにも関わらず、どこかスッキリとした印象を視聴者に与える。それはコーディネート全体が、絶妙なバランスで保たれているからだろう。
衣装に合わせてそのつど変化するヘアスタイルや、コーディネートの配色がトーン(または明度か彩度)の異なる、同一色の場合がほとんどといったように、しっかりと細部に工夫を施すことで統一感を与えているのだ。そのため、ゴチャゴチャした重苦しい印象を与えない。また、常に“攻め”のファッションでありながら、毎回のようにテイストがガラッと変わるからこそ、お茶の間を飽きさせない。河野悦子の失敗を恐れず常に前に突き進むポジティブさや、型にはまらない自由さが、衣装を通しても表現されている。