トランプ大統領選勝利に米エンタメ界はどう反応? 現地在住ライターがレポート

 大統領選を経て最初の週末に放送された「サタデー・ナイト・ライブ」は、ヒラリー・クリントンに扮したコメディエンヌ、ケイト・マッキノンが、大統領選前日の11月7日に亡くなったレナード・コーエンの「ハレルヤ」を歌うオープニングで始まった。静かにピアノを弾き語るマッキノンは、後半の歌詞を変えて歌った。

I did my best, it wasn't much
I couldn't feel, so I tried to touch
I told the truth, I didn't come to fool you
And even though it all went wrong
I'll stand before the lord of song
With nothing on my tongue but

Hallelujah, Hallelujah
Hallelujah, Hallelujah

ベストを尽くしたけれど、十分じゃなかった
わからないものは、手に取ってみようとした
正直に話したけれど、欺くことはできなかった
そして、全て失敗に終わった
歌の神様の前で立ち尽くす
何もいうことはできないけれど
ハレルヤ、ハレルヤ
ハレルヤ、ハレルヤ

 「サタデー・ナイト・ライブ」はシーズンを通じてヒラリー・クリントン(ケイト・マッキノン)、バーニー・サンダース(ラリー・デイヴィッド)、ドナルド・トランプ(アレック・ボールドウィン)の3人を使ったスキットを繰り広げてきた。昨年11月にはドナルド・トランプがホストを務める回を放送し、バーニー・サンダース(を演じるラリー・デイヴィッド)が「レイシスト!」と本人に向かって叫ぶシーンもあった。「サタデー・ナイト・ライブ」にとって政治は常に最上級の笑いのネタで、番組は激動のアメリカをサヴァイブするために、人々を鼓舞してきた。だが、それも十分ではなかった。全て、失敗に終わってしまったーー。「ハレルヤ」の替え歌は「サタデー・ナイト・ライブ」の構成作家やディレクターたちの反省でもある。そして、歌い終わったヒラリーは、カメラに向かってこう言った。

「I'm not giving up, and neither should you(私は諦めない。あなたたちも)」

 この一言で、11月8日深夜の大統領決定の報からずっと晴れない霧の中を歩いているようなリベラル層(多くは、18歳から40歳までの高学歴を持つ層)は涙を流し、目を覚ました。この国の文化は、そしてエンターテイメントは、難解な局面を糧に活気を呈してきたのだ。きっと、これからも。

 

(文=小川詩子)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる