『SCOOP!』『何者』『溺れるナイフ』ーー話題作の陰にこの人あり 伊賀大介に訊く、日本映画の「衣装」の現在

スタイリスト・伊賀大介インタビュー

「“一人だけ時代が止まってる”感を出したかった」

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(c)2016「SCOOP!」製作委員会

——大根監督作品には、その後、映画『モテキ』から、来年公開予定の映画『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』まで続けて参加されていますが、公開中の『SCOOP!』ではどんなポイントに気をつかいましたか?

伊賀:あの作品では、福山雅治さん演じる主人公の“一人だけ時代が止まってる”感を出したかったんです。だから、できるだけワンポーズで通そうと。

——アロハに革ジャン。

伊賀:あれ、シャツは4枚、パンツも2本用意したんですけど、同じ服しか着てないように見せているんですよ。

——その小汚さも含めて、ああいう人が現代の社会にいるとしたら、きっといつも同じ格好をしてるだろうと。

伊賀:そうそう。その対比として二階堂ふみちゃんは着せ替え人形みたいバシバシ服を替えていこうと。

——なるほど。

伊賀:(二階堂)ふみちゃんと、一回原宿に一緒に買い物に行ったんですよ。『こういうリュックとかどう?』とか、いろいろ相談しながら。

——それって、つまり二階堂さんの趣味を反映させるってわけじゃなくて、役者さんと登場人物の着る服を一緒になって考えるってことですよね。

伊賀:そうです。あの役は、あまり洗練されすぎてちゃダメな役で。台本にも『あのきゃりーぱみゅぱみゅみたいなヤツ』ってセリフがあったので。

——あったあった(笑)。

伊賀:しかも、『ぱみゅぱみゅ』っておじさんだから言えないっていう(笑)。その感じも含めて、おじさんが遠目から見た感じの“きゃりー感”を出そうと思ったんです。

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——先ほどの衣装部と装飾部の分業でいうと装飾の範囲に入る、カバンや財布やスマホにも伊賀さんの意見が反映されているんですよね?

伊賀:個人的に一番こだわったのは、福山雅治さん演じる主人公の財布で。どういう財布をつかっているかだけじゃなくて、劇中でその中身がチラッと見えた時に、風俗店の会員証がいっぱい入っててほしかったんですよ。

——入ってた入ってた(笑)。

伊賀:当然、ライターは使い捨てライターで。そこに、ラブホテルのロゴが入ってるやつにしてくださいとか。そういうのって、画面に反映されないことも多いんですけど、役者さんが小道具として財布を持たされて、そこにちゃんと役柄の名前が入った免許証と風俗店の会員証が入ってたら嬉しいじゃないですか(笑)。黒澤明イズムじゃないですけど、そういうところからちゃんとやっていきたいなって。

——観客の立場としても、作品にどっぷりと没入する上で、そういうのってすごく重要だと思います。

伊賀:そういう小さなディテールがリアルだと、映画としての大きな嘘もつきやすくなると思うんですよね。

——それ、本当に大事です。

伊賀:あと、今回『SCOOP!』で嬉しかったのは、福山さんが作品の宣伝の時に、劇中の服をよく着てくれていたことで。撮影中も、よくそのままの服で飲みに行っていて、その時はバレなかったらしいんですけど、作品の宣伝が始まってからはバレるようになったって(笑)。でも、実際にそういうアプローチって衣装の立場としてもすごく助かるんですよ。デニムとか、やっぱり撮影の間だけ履いているのと、それを普段も着てるのとでは、馴染み方が違うじゃないですか。『SCOOP!』に関しては、それがすごく効いていたと思いますね。

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