『とと姉ちゃん』“商品試験”が問いかける、企業批判者の責任と覚悟

 商品試験による企業批判の爽快感と、ペンがもたらす暴力が描かれた『とと姉ちゃん』第20~21週。

 時代は昭和30年となり、日本は神武景気に沸いていた。『あなたの暮し』の売上は15万部を超え、新企画として各メーカーの商品を審査する商品試験をスタートする。最初に検査したのは石鹸で、結果は大手メーカーのものよりも無名の会社のものの方が、質がよかったという結果となる。常子たちはすぐに記事にしようとするが、商品分析を担当した検査機関からは、大手メーカーとは仕事上でのつながりがあるために、検査結果を取り下げるか、メーカー名は伏せてほしいと言われる。仕方なく会社名を伏せて記事にした常子たちは、事務所の一階に実験スペースを作り、今後は自社で商品検査を試みることに。

 西田征史が脚本を担当した『実験刑事トトリ』(NHK)には科学的な実験をエンタメとしてみせるテイストがあったのだが、この商品試験のエピソードはその面白さが全開で、バラエティ番組を見ているみたいである。それは元々、『暮しの手帖』にあったテイストなのだろう。トースターで焼いたパンを積み上げた写真のビジュアルや石油ストーブの燃える写真など、雑誌に掲載された写真をみると、作っている側は、さぞかし楽しかったに違いない。花森安治のイラストで雑誌の品位を保ち、写真を使ってセンセーショナルな見せ方をする攻守の使い分けは見事で、そのスタイリッシュな実験精神は『とと姉ちゃん』にも受け継がれている。

 だが、この商品試験は爽快感と同時に少し嫌な気持ちにもなる。

 広告を入れないというスタンスもそうだが、試験を厳選におこなうために、全ての企業とのつながりを断とうとする『あなたの暮し』の編集方針は純粋で美しいものだ。だが一方で、企業を批判する振る舞いが、社会正義に酔って暴力を正当化しているように見えて、批判される側はたまったものじゃないなと、思ってしまう。

 もちろん、花山伊佐治(唐沢寿明)は自分のペンが暴力だということに自覚的だ。だからこそ、どれだけ横暴に振る舞っていても、ペンを握る時は神妙な顔となる。そこには自分が傷つける側であるという覚悟があり、戦時中に戦意高揚に加担したことに対する罪悪感がうかがえる。

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