前作から20年『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』の政治性をどう捉える?
また、極悪エイリアンが相手であれば角が立たず商業的なリスクを負わずに済むという思いつきは、近年の、アメリカの都市でのテロ事件を想定した『世界侵略: ロサンゼルス決戦』や、ボードゲームが原作だといいながら太平洋戦争でのミッドウェー海戦を思い起こさせる『バトルシップ』などに影響を与えた手法だ。このような作品の政治的な部分について真面目に述べると、「観客はアメリカ賛美を割り切って面白がっている」とか、「この手の映画で無粋なことを言うな」と言われそうなのだが、実際、現代においてここまで露骨に無邪気なメッセージを与える「この手の映画」というのは、むしろ珍しくなってきているため、自然とそこに興味の焦点が集まるのである。
アメリカ独立戦争を題材としたエメリッヒ監督の歴史大作『パトリオット』は、その題名が「パトリオット(愛国者)」であるように、愛国心を持った市民のあるべき姿がテーマになっている。面白いのは、このようにアメリカへの愛国的なテーマを追求していたエメリッヒ監督は、じつは映画監督としてドイツで成功してからアメリカへ渡って来た人物なのである。逆にいえば、彼はむしろアメリカの外から来ているからこそ、てらいのない愛国的テーマを、割り切った態度で打ち出せるのかもしれない。
この20年間の社会状況の変化により、本作において様式的にポップ化し再現された前時代的無邪気さというのは、より陳腐化してしまったようにも思える。だが、現在だからこそ当時とは異なる意味合いでリアリティを獲得している部分もある。大統領選の共和党候補として支持を集めるドナルド・トランプ氏が唱える、メキシコ人に対する排外政策の精神的なルーツには『アラモ』への共感があるはずであり、本作もまた同じ根を共有しているからである。
■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter/映画批評サイト
■公開情報
『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』
7月9日(土)TOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー
監督:ローランド・エメリッヒ
出演:ジェフ・ゴールドブラム、ビル・プルマン、リアム・ヘムズワース
配給:20世紀フォックス映画
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公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/idr/