トム・ハーディは“型破りな双子”をどう演じ分けた? 『レジェンド 狂気の美学』演技の凄み

トム・ハーディー、双子役の凄み

20160406-Legend-sub5-th.jpg

 

 肉体改造を駆使した役作りが評判になったハーディだが、その反面、役作りにのめりこみすぎて、トム・ハーディという俳優の顔がまったく印象に残らない。『ダークナイト ライジング』では眼以外をマスクで多い、表情が全く分からないヴィラン“ベイン”を熱演し、ディカプリオにオスカーをもたらした『レヴェナント 蘇りし者』でも、ディカプリオと同じくらい極限状態に追い詰められた極悪人を演じて話題になった。また、『マッドマックス 怒りのデスロード』ではタイトルロールのマックス役に抜擢されたが、シャーリーズ・セロンが演じたフュリオサという個性の強いキャラクターのサポートに回ってしまったため、主人公なのに印象が薄い。

 つまり、ハーディはどの作品に出演しても、与えられた役柄と同化してしまい、常にそのキャラクターになりきってしまうのだ。一人二役に挑んだ『レジェンド 狂気の美学』での演じ分けが完璧な理由はそこにある。ハリウッドで活躍するスターの中には、どの作品に出ても同じような演技しか出来ない役者が多数存在する中で、カメレオンのごとくキャラクターになりきってしまうハーディは貴重な存在だ。日本でもようやくその顔が認知されるようになってきたトム・ハーディという俳優が、その才能を更に開花させる日も近いだろう。

■鶴巻忠弘
映画ライター 1969年生まれ。ノストラダムスの大予言を信じて1999年からフリーのライターとして活動開始。予言が外れた今も活動中。『2001年宇宙の旅』をテアトル東京のシネラマで観た事と、『ワイルドバンチ』70mm版をLAのシネラマドームで観た事を心の糧にしている残念な中年(苦笑)。

■公開情報
『レジェンド 狂気の美学』
6月18日(土)より、YEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国ロードショー
監督・脚本:ブライアン・ヘルゲランド
出演:トム・ハーディ、エミリー・ブラウニング、タロン・エガートン、デヴィッド・シューリス、ポール・べタニー、クリストファー・エクルストン
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
2015年/イギリス/英語/131分/シネスコ/原題:「Legend」/R15+
(c)2015 STUDIOCANAL S.A. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:http://www.legend-movie.net

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる