有村架純は涙腺を刺激する女優だーー『僕だけがいない街』で健気なヒロイン演じる

有村架純『僕だけがいない街』で見せた名演

 NHK連続テレビ小説『あまちゃん』で、主人公の母・春子の若かりし頃を演じ、世の男性ファンの心を鷲掴みにした逸材、有村架純。アイドルを夢見て上京し、夢破れた少女の姿を健気に演じ切った彼女の最新作『僕だけがいない街』が、本日3月19日より公開されている。

 発表されるや否や、その映像化を巡って争奪戦が繰り広げられたという三部けい原作のコミックは、“リバイバル”というタイムリープ能力で2006年と1988年を行き来する時空を超えたSFミステリー。

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 18年前に連続殺人犯の手によって殺害された、幼馴染みの同級生を、過去に戻って救う運命を背負った主人公・藤沼悟(藤原達也)が、様々な困難に苛まれながら、事件の解決に向けて突き進んでいく姿を描いている。有村架純が本作で演じているのは、主人公・悟のバイト先の同僚で、2008年パートに於いて重要な役割を担うヒロイン片桐愛梨だ。

 SF小説や映画の世界ではポピュラーなタイムリープ物ではあるが、本作で描かれる“リバイバル”は、これまでの物とは少々違っている。最もポピュラーな『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ターミネーター』といった作品では、主人公自身がタイムマシンを使い、過去や未来に直接乗り込んでいったが、“リバイバル”は肉体ではなく、意識だけが過去に戻る。『僕だけがいない街』では、現在(2006年)の記憶をもったまま、1988年の小学生の頃の肉体に戻る。そして、本作での特殊能力“リバイバル”は、自分の意思とは無関係に起こってしまう。

 “リバイバル”という能力が発動されるタイミングは、悟の周りに関わる人間を救わなければならないという宿命とともに訪れる。そしてそれは、その事故(事件)を回避するまで何度も繰り返される。愛梨は、そのループに巻き込まれていく登場人物の一人だ。

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 両親を亡くし、親戚の家に居候しながら夢を叶えるため、ピザ屋でアルバイトをしている愛梨を、有村架純はその笑顔で周りを明るくするほど天真爛漫に演じる。そして悟のループに巻き込まれ、殺人事件に関わるようになってからは、主人公の悟以上に複雑な人生を歩んでいる少女・愛梨というキャラクターをシリアスかつ繊細に表現するなど、同一人物でありながら異なる運命の中にいる両者を、ごく自然に演じ分ける。

 容疑者の逮捕ですでに解決されていたと思われていた事件が、18年後に再び動き出した事から悟のリバイバルが発動し、一気に小学生時代まで巻き戻されてからの展開は、スリリングで、タイムリープがもたらす時間軸の変化に対するもどかしさを強調する。

 そこで登場するもう一人のヒロインであり、18年前に連続殺人犯の手によって殺害されてしまった少女、雛月加代を演じている鈴木梨央の大人顔負けの名演技も本作の見どころの一つだが、一度事件の解決に失敗し、再び2008年に戻ってきた悟を匿う、悟の唯一の理解者となったバイト仲間の愛梨の存在感は、特筆すべきものがあるだろう。

 自らも殺人事件の容疑者として警察に追われる身となっても、他人に心を開かない悟を献身的に見守り、単なる同僚という関係から恋愛感情へ発展していく過程を、有村架純が繊細な表情で見事に演じている。その健気な姿に世の男性ファンは打ちのめされるだろう。

 愛梨までも真犯人に命を狙われ、ボロボロに傷つきながらも、それでも悟を信じ続ける姿は、美しく、そして切ない。

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