春の新ドラマは“深夜帯”が“プライムタイム”を超える!? 必見作を一挙紹介【まとめ後編】

期待の春ドラマまとめ後編

 そんな“深夜の昼ドラ”に対抗するのは、『トリック』や『特命係長 只野仁』シリーズなど、「深夜ドラマの草分け」的な存在であるテレビ朝日、「金曜ナイトドラマ」枠でスタートする、『不機嫌な果実』(4月29日(金)23時15分~)でしょう。「夫以外の男とのセックスは、どうしてこんなに楽しいのだろうか」という帯文で知られる林真理子の不倫小説のドラマ化となる本作。こちらは、97年にドラマ化、映画化されている有名作だけに、中高年の間では認知度が高いと思われます。今回、主役を演じる栗山千明と、その不倫相手を演じる市原隼人はもちろん、高梨臨、成宮寛貴、橋本マナミ、そしてSMAPメンバーでは今クール唯一のドラマ出演となる稲垣吾郎が、栗山演じる妻を冷遇する夫役を演じるなど、こちらもかなり濃厚な“深夜の昼ドラ”作品となる模様。ちなみに、テレビ朝日の深夜ドラマとしては、『AKB48ラブナイト 恋工場』(4月20日(水)25時41分~)も始まります。恋愛禁止のAKB48が、秋元康原作の恋愛ドラマを演じるという、なかなか複雑な構造を持った本作。「大人の恋愛」と「少女たちの恋愛」……テレビ朝日は、実に対照的な2本の恋愛ドラマで勝負します。

 そして、「深夜ドラマ」レースにおいては若干後手を踏んだ印象のあるフジテレビは、今クールより新たな枠を設定します。「昼ドラ」の覇者たる東海テレビの制作による「大人の土ドラ」です。まさしく「昼ドラ」から「夜ドラ」へ。その第一弾作品となるのが、『火の粉』(4月2日(土)23時40分~/フジテレビ)です。人気ミステリ作家・雫井脩介の小説の連続ドラマ化となる本作。その内容は、退官した裁判官とその家族が住む家の隣りに、過去に無罪判決を下した連続殺人事件の容疑者が引っ越してくるという、まるで黒沢清の映画のような物語となっています。その容疑者役であり本作の主役でもある男を、実に9年ぶりのドラマ主演となるユースケ・サンタマリアが演じることをはじめ、退官した裁判役を伊武雅刀が、その娘役を優香が演じるなど、共演陣も豪華です。

 その一方、昨年2年連続となる視聴率三冠(全日、ゴールデン、プライム)に輝いた日本テレビの「深夜ドラマ」は、剛力彩芽主演の『ドクターカー』(4月7日(木)23時59分~)の一本のみ。医師が同乗して現場で処置を行う「動く病院」こと「ドクターカー」に勤務する新人医師が、緊急医療の現場で奮闘するという本作。ちなみに、剛力彩芽は本作で、初めて母親役(シングルマザー)を演じるのだとか。かつて、フジの月9ドラマで『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』というのがありましたけど、それの「車版」といった感じなのでしょうか。とはいえ、経費削減のため「ドクターカー」を廃止しようとする院長の息子役を演じる中村俊介が、剛力彩芽をとにかくイジメ抜くらしいので……ここにも何やら「昼ドラ」の気配を感じます。

 などなど、虚実入り混じったメタドラマ的な作品から、映画を見据えた大々的なプロジェクト、さらには「昼ドラ」ならぬ「夜ドラ」で赤裸々に描かれる「大人の恋愛」まで。ある意味、プライムタイムのドラマ以上に振り幅の広い、そして刺激的な作品がラインナップされた春の「深夜ドラマ」に期待です!

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「CUT」、「ROCKIN’ON JAPAN」誌の編集を経てフリーランス。映画、音楽、その他諸々について、あちらこちらに書いてます。

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