『家族ノカタチ』最終回は“家族関係”をどう描き切るか? 香取慎吾のモノローグから考える
「笑顔は心の鎧だ。本当の気持ちを隠してくれる。怯えも動揺も怒りも、ほとんどの感情は、これで隠せる。そう、笑顔を作ることで」(第9話)
冒頭のモノローグでそう語りながらも、突然の告白に動揺を隠せない大介。さらに大介は、自らの率直な気持ち……もはや「アフォリズム」ではない自らの率直な「心情」として、次のようにひとり語るのだった。「人はこんなとき、普通どんな顔をするんだろう。図々しくて迷惑だとばかり思っていた親父に、いきなり『俺、死ぬの』なんて言われたら……」。そんな彼の異変を誰よりも早く、そして誰よりも深く察知したのは葉菜子だった。前回のクライマックス。川辺に佇む大介のもとに歩み寄り、「やめなよ、その作り笑い」と語りかける葉菜子。互いに目を潤ませながら川辺で静かに語り合い、やがてそっとハグし合うそのシーンは、このドラマ切っての名シーンと言える、実に感動的なものだった。
家族や友人ではない「他人」だからこそ、率直に話せることがある。それは、これまで本作が描いてきたテーマのひとつでもあった。しかし、そのときその「他人」は、果たして本当に「他人」と言えるのだろうか。ここへ来て急速に近づき始めた大介と葉菜子の関係は、最終回でどんな結末を迎えるのだろうか。そして、あらかじめタイトルに銘打っているように、本作が提示する新しい「家族の形」とは、果たしてどんなものだろうか。いよいよこれで終わりなのかという一抹の寂しさはあるけれど、そのなりゆきと結末を、テレビの前で静かに見守りたいと思う。
■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「CUT」、「ROCKIN’ON JAPAN」誌の編集を経てフリーランス。映画、音楽、その他諸々について、あちらこちらに書いてます。
■ドラマ情報
『家族ノカタチ』
毎週日曜日 夜9時から放送中
出演者:香取慎吾、上野樹里、西田敏行、水原希子
脚本:後藤法子
監督:平野俊一、酒井聖博、松田礼人
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
公式サイト:http://goo.gl/AYBYWb