嵐・松本潤は弁護士役をどう演じる? 『HERO』木村拓哉に匹敵できるか

 なので、全戦全勝のやり手弁護士を描いた『リーガルハイ』のような特殊なタイプを除いて、刑事事件の弁護はドラマに向いている題材とは言い難い(『リーガルハイ』ですら刑事と民事両方を描いていたわけだし)。日本に比べて有罪率が低い海外でさえ、「刑事専門弁護士」としてすぐに思い浮かぶのは半世紀以上前に放送されていた『弁護士ペリー・メイスン』くらいであろうか。そんな「負け戦」をフィーチャーして、ドラマとしても「負け戦」になってしまいかねない題材にあえて挑戦していくこのドラマに、興味をそそられないわけがない。

 この『99.9−刑事専門弁護士−』が描くのは、有罪率99.9%の中で、0.1%の無罪の可能性を探求する弁護士たちの姿だ。そう聞くと、どうしても木村拓哉が検察官を演じた『HERO』に似ているのではないかと思ってしまう。容疑者を取調べ、裁判にかけるために起訴するか否かを判断する手続きという、本来なら地味な作業の中で、ちょっとした疑問から事件の真相を知ろうとする型破りな検事の姿を描いた『HERO』と、すでに起訴された事件の真実を追う今回のドラマ。仕事自体は対極ではあるが、おそらくどちらも容疑者(起訴された後は被告人と呼びますが)に寄り添った法律家の姿が描かれるヒューマンドラマが軸となっているのではないだろうか。

 そう考えると、確実に放送が始まれば比較されてしまうだけに、松本潤はジャニーズの大先輩である木村拓哉に匹敵するほどの型破りなキャラクターを演じなくてはならない。とは言え、いきなりガチガチの法律論を並べる法廷劇を演じるよりは、明らかに向いていると思える。そして同じように、4月クール放送の弁護士ドラマとして竹野内豊主演の『グッドパートナー 無敵の弁護士』とも比較されることになるだろうが、こちらは企業法務を描いた作品なので、逆にガチガチの法律論を展開してくれる別のタイプのドラマとして期待するのが良さそうだ。

 今回の弁護士役が板につけば、今後松本潤には弁護士だけでなく、このような硬質な専門職の役柄も増えていくことになるだろう。元々クレバーな出で立ちと、ある程度の貫禄を備えていることは言うまでもなく、そろそろこのタイプの役を演じることに遜色はない年齢にもなっているだろう。ジャニーズ俳優の中でも秀でたカリスマ性を持つ逸材なだけに、演じられる役柄の幅が拡がっていく姿を見ることができるのは嬉しく思う。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■ドラマ情報
『99.9−刑事専門弁護士−』
出演:松本潤、香川照之、榮倉奈々ほか
脚本:宇田学
トリック監修:蒔田光治
プロデュース:瀬戸口克陽、佐野亜裕美
演出:木村ひさし、金子文紀、岡本伸吾
製作著作:TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/999tbs/

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