『ちびまる子ちゃん』はなぜ愛され続ける? 23年ぶりの映画に見る、“憎めない”キャラの魅力

 脇役たちもしかりである。クールなおねえちゃんやお人よしで天然ボケが冴える祖父の友蔵、いいかげんな父のひろしらさくら一家。まる子のクラスメイトも、やさしいたまちゃん、キザな花輪くん、「ズバリ」が口癖の丸尾くん、お調子者のはまじに食いしん坊の小杉、辛辣な永沢くんに卑怯な藤木、暗いけれどお笑い好きの野口さんなど、個性豊かで、一見ありえないようなのに、どこかありえる気がする絶妙なキャラクターたちばかりで、まる子と彼らが繰り広げるエピソードには、いつかどこかで見たような風景が存在している。

 今回の映画では、海外からやってきた友人たちが、まる子たちの日々に新たな友情のワクワク感をもたらしていく。アンドレアと登校しながら、富士山を眺めるまる子。旅行に出かけておいしいものを食べたり、観光を楽しんだりする面々。富士山を見ることも旅行に行くことも、素敵な友達がいるだけで、いっそう楽しい。誰かと仲よくなり、一緒にすごすうれしさをアンドレアとの交流を通してまる子は実感し、だからこそ、アンドレアを喜ばせようと一生懸命になる。

 劇場の大画面で見たときに、主人公・まる子の魅力が改めてわかったような気がした。欠点だらけで、でも不思議と憎めない、そして、普段はなまけものなのに、友達思いでここぞというときひたむきなまる子の姿は、映画を見た人の心にきっと刻まれるはずだ。

 なお、本作品は、ゲスト声優として多彩な顔ぶれが登場しているのも見所の一つだが、中でも注目は劇団ひとり。『ちびまる子ちゃん』のスピンオフ作品である『永沢君』の実写版で主役をつとめた彼が演じるインド人の少年・シンは、作品に笑いの味を加える非常にスパイシーな存在となっているので、これから見る方は、ぜひチェックしてほしい。

◼︎田下愛(たおり あい)
フリーランス・ライター。雑誌、書籍、Webメディアで、幅広いジャンルの仕事をこなし、現在は、映画・マンガ・音楽などエンターテイメントを軸に活動中。著書に「選挙はエンターテイメントだ!」(HK INTERNATIONAL VISION)がある。

◼︎公開情報
『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』
公開中
監督:高木淳
原作・脚本:さくらももこ
声の出演:TARAKO、屋良有作、一龍斎貞友、水谷優子、島田敏、佐々木優子、渡辺菜生子
公式サイト:chibimaru-movie.com
(C)2015さくらプロダクション/フジテレビジョン 日本アニメーション 東宝

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる