“囲碁で生死をかける”とはどんな状況か!? 韓国アクション『神の一手』が描く驚愕の世界

 そして何より、アクション・シーンのクオリティも高い。近年、韓国映画のアクションは急成長しており、アクションの聖地・香港の映画人の間でも「韓国映画には脅威を感じる」と噂されているという。本作でもアクション経験豊富なチョン・ウソンが、その長い手足を駆使したキレのある格闘アクションで魅せてくれる。一方、肝心の囲碁シーンも凄まじい。普通の囲碁だけでなく、「独房で壁越しに打つ」「巨大冷凍庫の中で上半身裸になって打つ」「ヤクザ十数人に囲まれて打つ」など、ほとんどソリッド・シチュエーションものに近い、異常な状態で碁を打つことになる。碁のルールは分からなくても、その異常な状況と、俳優陣の熱演によって、「何か大変なことが起きているらしい」というのは伝わってくる。実際、著者も囲碁のルールはよく分かっていなかったが、問題なく楽しめた。ほとんど力技と言ってもいいが、筆者はその「腕力」を評価したい。

 もちろん冷静に考えると、作中で碁を打つ必要なないかもしれない。しかし、碁を打たなければ、本作は凡庸な復讐アクションでしかなかっただろう。碁と格闘、正反対に位置する要素を力技でくっつけた、韓国映画界のエンタテイメント的な腕力を感じさせる、文字通りの力作だ。

■加藤ヨシキ
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■作品情報
『神の一手』
発売中
DVD:¥4,743(税別)
Blu-ray:¥4,743(税別)
発売元:ツイン
販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
監督:チョ・ボムグ
脚本:ユ・ソンヒョプ
アクション監督:チェ・ボンノク
撮影:キム・ドンヨン
音楽:チャン・ヒョクチン

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