キャリー・ジョージ・フクナガ監督が語る、映画とネットとテレビドラマの未来

フクナガ監督が語る、動画コンテンツの未来

「映画かドラマかを選ぶ基準は『"物語"をどう伝えるのが一番いいか』」

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――あなたは、Netflixで作品を配信するメリットはどこにあると思いますか? また、映画館で公開する作品との違いをどのように考えてますか?

フクナガ:今回、Netflixでの配信が決まったのは、実は映画が完成してからなんです。だから、作品を制作するにあたって何か違うアプローチをとったわけではありません。メリットとしてはもちろん、世界中で6500万人以上ものユーザー数を誇るNetflixですから、自分の作品を映画館で上映される映画とは比べものにならないほど多くの観客に届けられるという点が挙げられます。特に今回の作品は、題材が少年兵という国際社会的にも重要な題材だったので、世界中のなるべくたくさんの人に作品を届けたいという気持ちが強かったんです。それが、Netflixで全世界同時配信を決める理由の一つになりました。

――先ほどソダーバーグ監督の名前も出ましたが、彼は現在、映画界からテレビドラマ界へと活躍の場所を移していますよね。あなたも長編映画、テレビドラマ、長編映画と撮ってきて、再び新しいテレビドラマ作品を手掛けるという噂も耳にしてます。今後も、長編映画を作ることもあるしテレビドラマを作ることもあるという、扱うテーマによってフレキシブルに対応していくというスタンスで監督業を続けていくつもりなのでしょうか?

フクナガ:これからは、ますますそういう監督が増えていくと思いますし、もちろん自分もそうしていくつもりです。そこで判断基準となるのは、"物語"をどう伝えるのが一番いいかということです。例えば原作が長編小説なら2時間の映画にそれを収めようとするより、テレビドラマとして8時間かけて伝えていった方が物語の深みを伝えられるでしょう。ただし、現状では、映画なら大きな予算で2時間の作品を作るのが可能な場合でも、TVドラマだとそれと同じか映画より少なめの予算で8時間の作品を作らなければいけないということもまだまだ多いんですよ。だから、状況次第、作品次第でこれからも柔軟に動いていきたいと思っています。

――あなたは父親が日系アメリカ人三世であることで知られています。好きな日本の映画監督、好きな日本の作品などがあったら教えて下さい。

フクナガ:日本映画はたくさん観ていますが、中でも最も影響を受けているのは今村昌平監督です。10年ほど前ニューヨークで特集上映が開催された時、彼の多くの作品に触れることができました。『豚と軍艦』など初期の作品が好きで、特にカメラワークやフレーミングには感嘆させられました。マーティン・スコセッシ監督がやっていたことを、10年も早く先取りしていた(笑)。最近の監督では、是枝裕和監督の自然体でリアルな演出も好きですね。『誰も知らない』の子役たちの演技は素晴らしかったです。

(取材・文=済藤鉄腸)

■済藤鉄腸
ライター。ネット配信で映画を観るのが好き。MUBIとNetflixで引きこもりが捗る。配信スルー映画・日本では知られていない世界の映画作家たちを紹介するブログ"鉄腸野郎Z-SQUAD!"を書いてます。

■作品情報
『ビースト・オブ・ノー・ネーション』
監督・撮影:キャリー・ジョージ・フクナガ
出演:イドリス・エルバ/エイブラハム・アタ
Netflixで配信中
https://www.netflix.com/jp/title/80044545

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