THE RAMPAGE 岩谷翔吾「なぜここまでダンサーの気持ちがわかるんだろう」 恩田陸『spring』を読んで

ステージに立つ人間の気持ちが本当にうまく捉えられている

ーーこの小説の中で、岩谷さんが特に琴線に触れたシーンはどこでしょうか。

岩谷:ラストで春が、地の文章で今までの人生を振り返りながら、人々の視線について考えるシーンです。417~418ページにかけては、すべての文章が素晴らしくて感嘆しました。

 踊っている時、振付を考えている時は、観客の視線を感じなければならないし、どう見えるか、見てどう感じるかを常に意識していなければならない。
 しかし、それはあくまでも、俺自身の視線だ。俺が観客になって、客観的に、踊る俺、踊るダンサーを見ている。
 だが、今回、俺を見ているのは、純然たる「他者」なのだった。
 俺の知らない、俺を知らない、むきだしの視線で俺を見ている「他者」。彼らの視線を、ずっと痛いほどに感じ続けていたのだ。(『spring』P417~418より)

 ステージに立つ人間の気持ちが本当にうまく捉えられていると思います。例えばアリーナで1万人の前で踊って高揚を覚えたあとに、ホテルに1人で帰ってカップ麺を食べながらボーッとするようなことがあります。そんな時の気持ちは、ステージに立ったことがある人間にしかわからないものがあると思います。さっきまで1万人の歓声を浴びていた分、光と影のコントラストが強すぎて、1人になると孤独感を強く感じるんです。そして、人前に立つということはどういうことなんだろうと思索したりします。そういう経験があるからこそ、春が自問自答するシーンにはグッときました。

ーー本書をもしプレゼントするならば、誰にあげたいでしょう。

岩谷:やっぱり先ほど話に出した、メンバーの翔平ですね。翔平は野生児なので普段本を読むタイプではないんですけど、だからこそ彼がどういう感想を持つのか、聞いてみたいものです。

ーー岩谷さんの今後の文筆家としてのご活動について教えてください。

岩谷:初の書き下ろし小説『選択』(幻冬舎)を10月10日に出版することになりました。これは4年前から書いていて、何回書き直したかは分からないほどで、もう100校くらいになっていると思います(笑)。4年もの月日をかけて試行錯誤し、今自分が出せる魂を全部注ぎ込みました。ぜひチェックしていただけたら嬉しいです。

■書籍情報
『spring』
著者:恩田陸
価格:1,980円
発売日:2024年3月22日
出版社:筑摩書房

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