地方のタウン情報誌 次々に消滅で存続の危機? 地方を取り巻く4つの問題点
秋田県ではふたつのタウン誌が休刊に
秋田県民に親しまれていたタウン情報誌「あっぷる」が2024年3月号を最後に休刊するというニュースが、3月3日付の秋田魁新報で報じられていた。1990年に創刊し、400号をもって最終号となったという。秋田県出身者として非常に残念に思うとともに、正直、経済停滞と人口減少が続く秋田県で、よく令和の時代まで残ったなあと感じてしまう。
秋田県内のタウン情報誌の筆頭格である「あきたタウン情報」はまだ刊行中であるが、県南地方をカバーしていた「月刊アンドナウ」はコロナ騒動真っ只中の2021年3月号で休刊になっている。ちなみに、筆者は「月刊アンドナウ」の編集部から依頼されて、表紙のカットを描いたことがある(この原稿を書きながら思い出した)。
地方のタウン誌は1980年代に創刊ブームが起こり、バブル景気の勢いもあって部数を拡大した。バブル崩壊後の1990年代後半もバブルの余韻が残っていたため、広告出稿は多かったといわれる。2000年代に入ってからも、地方はインターネット広告の影響を受けにくかったため、堅調に部数を維持しているケースも少なくなかった。
タウン情報誌は、理容室や病院の待合室に常備される雑誌の定番であった。居酒屋や飲食店、喫茶店などにも置かれることが多かった。こういった場でバックナンバーが読まれることも多かったため、すぐに読み捨てられる週刊誌と違って広告効果が一過性ではなく、後からじわじわ効いてくることもあり、広告出稿をする側からも評判が良かったといわれる。
しかし、さすがに2010年代に入ると地方にもネットの波は押し寄せるようになり、広告出稿数は激減。それに追い打ちをかけたのが、2020年に始まったコロナ騒動である。連日テレビでの放送もあり、旅行や外出などの自粛ムードが急速に広まった。NHK受信料の支払い率日本一の秋田県でもその影響は大きかった。
それにもともと進んでいた少子化が加速し、人口がもうすぐ90万人を割りそうになっている。経済も冷え込み、タウン情報誌に広告を定期的に出稿できるほど経営体力のある個人商店がどれほど残っているのだろうか。秋田県のある書店主がこのように話す。
90年代の頃は秋田県内の駅前も活気があったし、個性的な店も多く残っていたんですよ。だからどのタウン情報誌もネタがあったし、広告も入っていただろうから取材力もあった。でも今は、そもそも店の数が減ってしまったでしょう。秋田県に限ったことではなく、全国に残っているタウン情報誌の編集部は、ネタ出しに苦心しているのではないでしょうか」
タウン誌は存続の危機なのか?
思えば、KADOKAWAが刊行していたもっとも有名なタウン情報誌のひとつ「東京ウォーカー」も2020年6月20日発売号で休刊になっている(同時に「横浜ウォーカー」「九州ウォーカー」も休刊した)。もはや誰もがスマホで店探しをする時代、存在意義を失いつつあるタウン情報誌は少なくないと思われる。地域密着の特性を生かして、ネットには落ちていないきめ細やかな情報をいかに集めるか。生き残りをかけて、タウン情報誌は正念場を迎えている。