誰もが持つ“心の宝石”を輝かせるために 癒しのジュエリーミステリー『鎌倉硝子館の宝石魔法師』の魅力

 がんばりやの人たちが心を研磨しすぎて、すり減らしてしまわないように、優しく導いてくれる彼らのような人たちが、どこかにいてくれたらいいのにと思う。自分の輝きを信じられなくなっているときに、ちゃんとその心には唯一無二の宝石があるのだということを、確認したい。そんなことを思いながら、鎌倉の街を歩いてみたくもなってくる。

 ちなみに、更紗のことを“自分のことは置いてきぼり”と書いたが、彼女もまた導かれてやってきた客の一人ではあるわけで、宝石魔法師でもないのになぜ不思議な能力がなぜそなわっているのかも、悠斗との関係性の変化とあわせてぜひ楽しんでほしい。

 そして忘れてはいけないのが、ヴェトロ・フェリーチェの看板猫のティレニア。猫の姿のままで人の言葉をしゃべるどころか、美青年に変身する彼の存在は物語にとっていちばんの癒しである。以前、同じことのは文庫から刊行されている『おまわりさんと招き猫』をはじめとするしゃべる猫の登場する小説を紹介したが(『吾輩は猫である』『長靴を履いた猫』『おまわりさんと招き猫』……「しゃべる猫」なぜフィクションで人気?)、『鎌倉硝子館の宝石魔法師』もそのリストに加えておかねばならない。

■書籍情報
『鎌倉硝子館の宝石魔法師 守護する者とビーナスの絵筆』
著:瀬橋ゆか
イラスト:前田ミック
発売日:2022年1月20日
価格:770円(本体700円+税10%)

『鎌倉硝子館の宝石魔法師 雨の香りとやさしい絆』
著:瀬橋ゆか
イラスト:前田ミック
発売日:2023年4月20日
価格:803円(本体730円+税10%)

『鎌倉硝子館の宝石魔法師』特設サイト:https://kotonohabunko.jp/special/housekimahoushi/

関連記事