『機動戦士ガンダム』の事件を文春がスクープ!? 担当編集者が語る、前代未聞のガンダム本へのこだわり

カイ・シデンに喋らせない(笑)

ーーレビルとゴップとエルランしか載ってないカラーページ、見たかった……! 他にはどのような点に気を使ったんでしょうか?

 写真も適当に入れているように見えると思うんですが、一般に流出していなさそうなものや証言者が撮影できないであろうものは基本的に入れてないんです。基本的には公式に発表されている画像か証言者が提供した画像、あとは取材者などが盗み撮りした画像、という理屈で説明がつくもののみに絞っています。どこから提供されたものかを明記する必要があったので。あと、あんまりカイ・シデンに喋らせない(笑)。

ーー確かに。カイが出てきて全部喋ると、この本はそれで終わっちゃいますね。

 便利すぎるんであんまり出したくないんですよ! あと、カイってこのあとどこかで本編の映像に出てくる可能性があるんで、そこで設定が変わってこの本が陳腐化するのも嫌だなという理由もあります。だから証言する人物も、チラッと本編に出てきたけどそのまま出てこなかったモブとかにしてます。例えば22ページの「ジオン兵士を悩ませる小さな「地球の伏兵」」という記事ですが、ここに証言者として出てくるのがこの記事でネタにしている第14話『時間よ、とまれ』の冒頭に出てくる慰問に来た手品師なんですよ。

ーーあ~~! いたな~~、手品師!

 実は『無敵鋼人ダイターン3』に出てきたコマンダー・エドウィンのカメオ出演なんで、文中でもE氏になってます。そういう感じで、できるだけ劇中にいるモブ、「これはひょっとしてあいつのことかな」という人に証言させるというのはライターの皆さんにお願いしましたし、「そんな都合のいいところにいる人物はいないので、もうちょっとなんとかなりませんか」みたいなご相談もしました。とにかく、この世界の人にとって知らないことや後からわかることってなんだろうというのを探りましたね。アニメを見ている僕らは知りすぎているので……。あと、わざと記事の内容を間違えるというのもやってます。

薗部真一氏

意図的に不正確な記事にしている

ーーわざとですか?

 この世界でこれだけの情勢しか知らされていない記者なら、こういうふうに間違えて記事を書くだろうなという想定ですね。たとえば『逆襲のシャア』の時点でのアムロに関する記事とかは事実と異なる内容が載った飛ばし気味の記事になっていますが、これは意図的に不正確にしてます。

ーーとにかくディテールへのこだわりがすごいですね……! しかしそれにしても、「もし〇〇の劇中に文藝春秋があったら」シリーズのムックはたくさん作れそうな気がします。

 できるとは思うんですけど、ガンダム的な作品世界の広がりがあるタイトルって意外に少ないんですよ。エヴァとかだと多分無理じゃないですか(笑)。だからある意味ではガンダムの懐の広さや、作品世界の枠組みを多くの人たちが真面目に作って共有してるっていうところによって成立した企画だなと思ってるんです。他の作品だと、ここまでやれるかちょっとわからない。情報量と登場人物と社会システムの設定がないとできない企画なんですよね。

ーーガンダムという作品だからこそ可能になった切り口のムックなわけですね。では、この本はどういう人に読んでほしいですか?

 作品としては宇宙世紀のことを描いた作品の公開ペースはダウンしてて、以前よりは多くのことが語られなくなってきていますが、それでも宇宙世紀という歴史はやっぱり魅力があるんですよね。これは、そこにもっと入り込みたいという人たちに向けて作った本です。なので、この本を読むことで自分も宇宙世紀の時代、ガンダムの世界に暮らしているような、そういう仮想体験をしてもらえればうれしいな……と思っています。

(c)創通・サンライズ (c)『証言「機動戦士ガンダム」文藝春秋が見た宇宙世紀100年』文藝春秋

■書籍情報
『証言「機動戦士ガンダム」文藝春秋が見た宇宙世紀100年』
出版社:文藝春秋
https://www.amazon.co.jp/dp/4160070213

(c)創通・サンライズ
(c)『証言「機動戦士ガンダム」文藝春秋が見た宇宙世紀100年』文藝春秋

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