フランスの漫画「バンド・デシネ」独自の魅力とは? 『レベティコ』翻訳者・原正人が語る、サウザンコミックスの挑戦

サウザンコミックスは「みんなのレーベル」

――フランスには、日本の漫画の影響を受けている作家さんもいますか?

原:今では大勢いますよ。フランスの漫画市場は、日本とはちょっと違って、フランス語圏のバンド・デシネ、日本の漫画の翻訳、英語のコミックスの翻訳、その他の漫画の翻訳が全体としてひとつの市場を形成しているイメージなんです。年間の刊行点数が、全体で5000点ほどと言われています。日本の漫画は年間12000点くらい出るらしいので、それと比べるとかなり少ないと思われるかもしれません。面白いのは、その5000点の3分の1が日本の漫画の翻訳なんです。長らくそういう状況が続いているので、日本の漫画の影響下にある作家がいても、何ら不思議がないんですね。

 僕が翻訳している『ラディアン』という作品がありますが、これなんかは本の開きを始め、さまざまな点で日本の少年漫画を模していて、しかもめちゃくちゃ上手い。もはやフランスでもバンド・デシネではなく、「MANGA」と呼ばれています。言うまでもなくフランス産の漫画なんですが、日本でアニメ化されました。しかも、作者はフランス人なんですが、普段カナダ在住で、カナダで創作されたものがフランスで出版され、それが日本語に翻訳され、続いて日本でアニメになり、それらがまた翻訳されてフランスや他の国で放映されるという、ある意味、現代の文化的混交の複雑さと面白さを体現した作品です。

――これからどういう作品を出していきたいですか?

原:サウザンコミックスは、僕のイメージでは「みんなのレーベル」です。僕は編集主幹として作品の選定はもちろん、クラウドファンディングから制作に至るまで、あらゆる局面で大なり小なり関わりますが、このレーベルで翻訳をすることは、少なくともしばらくはないと思います。

 これからは毎回異なる発起人さんと組んで、支持してくださる皆さんを巻き込みつつ、世界中の漫画を出版していきたいですね。最初はフランス語圏のバンド・デシネでしたが、第2弾はアメリカン・コミックスで、MK・サーウィックという人の『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』という作品です。第1弾の『レベティコ―雑草の歌』とはまったくタイプの違う作品で、こういうチャレンジができるのはすごく楽しいですね。第1弾がフランス語圏、第2弾が英語圏なので、第3弾はぜひアジアの作品に挑戦したいと思います。こんな風に、できるだけ特定の地域に偏ることなく、世界の漫画をバランスよく出版できたら最高です。

 漫画って世界中にあるんですけど、アフリカとか南アメリカの漫画はなかなか翻訳されません。アルゼンチンなんかは、すばらしい作家を輩出していたりするんですが、日本ではそういうことがなかなか知られていません。やっぱり紹介者の存在が重要なんでしょうね。世界のさまざまな地域の漫画を紹介したいという人がいれば、ぜひ一緒に盛り上げていきたいし、サウザンコミックスがそのための場になるといいなあと思っています。


■書籍情報
『レベティコ-雑草の歌』
ダヴィッド・プリュドム 著
原正人 訳
価格:紙製本=3,000円+税
   電子書籍=2,300円+税
出版社:サウザンブックス社
公式サイト

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