手塚治虫が夢見た未来が現実に? 『ぱいどん』はAIと人間の共同作業の第一歩

ロボットは人間にはなれない

 そういえば同作が掲載された『モーニング』の記事ページの最後に、編集部のこのような言葉が載っていた。

「『TEZUKA2020』のみなさんは、人間による漫画の『創造』がいかに高遠であるかをむしろ思い知っている、と聞いています。奇しくもこれは、最初にアトムを作った天馬博士の『ロボットは人間になれない』という苦悩とよく似ています」(『モーニング No.13』より)

 たしかにアトムは人間にはなれなかった。だが、人間の社会で暮らし、人々を守ることでロボットとして大きく成長した。そして人々もまた彼から学ぶことが無数にあった。そういう共に助けあい、高めあうような良質な関係をこれから先のAIと漫画家たちが築いていけるならば、その結果として、まだ誰も見たことのないすごい発想とヴィジュアルによる「新しい漫画」が次々と生み出されていくだろう。そう、私たちはいま、手塚治虫が夢みた未来に生きている。

■島田一志
1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。@kazzshi69

■書籍情報
『モーニング No.13』
価格:364円+税
出版社:講談社
公式サイト

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