日食なつこ、目も耳も飽きさせない豪華絢爛『大日食観測会2026夏』 10月からは二度目の未発表曲ツアーへ

日食なつこ『大日食観測会2026夏』レポ

 夏だ! というメッセージが、終演後のスクリーンには映し出されていた。背景には青空と入道雲と風船ーーそのカラッとしたテンションこそ、このライブのバイブスである。7月に行ったインタビューでは「ライブが楽しいものに変わってきた」と語っていたが、誰の目から見ても日食なつこは溌剌としていたと思う。そしてそれは彼女の実力に裏打ちされた、自信の表れだったと思うのだ。(※)

 豪華絢爛、幕の内弁当のようなライブである。「いろんな姿の私を皆さんに見せつけます!」という宣言通り、この日のライブは日食CREWの4人編成を主軸に据えつつ、パーカッションを迎えながら1〜5人編成と自在にその陣容を変えていく。セットリストは過去最大の曲数という気合いの入りぶりで、ソロでは打ち込みのトラックを流しながらハンドマイクで歌う曲も差し込むなど、とにかく目も耳も飽きさせない構成である。というわけで、約1年半ぶりの自主企画ワンマンライブ『大日食観測会2026夏』。それは彼女の魅力をふんだんに詰め込んだようなステージだ。

 定刻を過ぎると、遊園地を模したビジュアルイメージよろしく、パレードを思わせるマーチ風のBGMが流れ出し、真っ白の衣装に身を包んだ日食なつこがステージに現れる。薄暗い舞台とのコントラストが鮮やかで、まるで発光するような存在感だ。まずは弾き語り、グランドピアノの前に座り、初期の代表曲「ヒューマン」で熱い夏が始まった。

 日食なつこの声は凛々しい。気品と気骨を感じさせる声である。そしてどんどん歌が上手くなっている気がする。広い会場を包み込むような伸びやかな歌は、頭から終わりまでずっとブレない。良い曲と良い演奏ーーというのはもちろんのこと、彼女の声こそがこの日の主役である。

 新曲の「煙と水晶」が素晴らしい。日食なつこと言えば、つい「水流のロック」や「ログマロープ」のようなパワフルな楽曲を思い浮かべてしまうが、彼女は元来美しいメロディを書く詩人なのだ。この曲が持つ儚さと繊細さ、そしてそれ故の美しさは、彼女のディスコグラフィの中でも随一ではないだろうか。

 ここからはステージピアノに乗り換え、お馴染みの日食CREWーー沼能友樹(Gt)、仲俣和宏(Ba)、komaki(Dr)の3名を招き、バンド編成にシフト。普段はステージの左に日食、右にkomakiが向かい合い、中央にギターとベースが位置することの多い4人だが、この日は日食なつこが中央に座り横並びのような陣形。メンバーの立ち位置も新鮮である。

 日食CREWの代名詞と言っても差し支えないだろう、この布陣での1曲目は「0821_a」。まさに鉄壁の演奏と言ったところで、この曲を皮切りにライブが加速していく。まずは「五月雨十六夜七ツ星」が凄過ぎ。4人のスキルがぶつかり合い、火花を散らすようなスリリングなアンサンブルに思わずテンションがブチ上がる。で、その勢いのまま「夜刀神」。おどろおどろしいピアノリフに、不安を煽るようなギター、のしかかってくるような重苦しいベース、そして濃紺な赤と紫が交差する不気味な照明......これはとことんハードな悪魔みたいな曲であり、たぶん夏の肝試しの時間である。演奏を終える時に告げる「ご愁傷様」という台詞がカッコよく、ライブではこの一言が聞けるのがいい。

 間髪入れずに「√-1」、冒頭のベースにゾクっとする。細やかなタッチで楽曲の緩急を操るドラムも抜群で、はっきり言って日食CREWで聴くこの曲は素晴らし過ぎるのだ。「音楽のすゝめ」はやっぱり名曲、「ワールドマーチ」まであっという間に駆け抜けていく。

 ここでようやくMCが入った。兎にも角にもエネルギッシュで、お客さんの歓声もひとしお。今日はのっけから熱気が凄いんじゃない? と思っていたら、日食も「すでに終わっても許されそうな熱量です」「4曲目でイヤリングが吹っ飛びました」と話しており、やっぱりこの感覚は気のせいではないのだ。何より「私も夏の思い出を作りにきた」という表情が楽しそうである。

 ここからはテンポよく編成チェンジを繰り返す。まずは「hunch_a」をベースレスの3人で爽やかに聴かせ、続く「水流のロック」ではベースが戻り、代わりにギターがはけての3人編成。ダンサブルな「大停電」ではドラムとツーピースになり、かと思えば「環礁宇宙」ではゲストの木川保奈美が登場。パーカッション、ピアノ、ドラムという新鮮な布陣に変容し、打楽器が増えたことでリズムが強調された演奏に変わっていく。

 潤いのあるイントロが印象的な「シーラカンス」は、コンガが実に良い味を出していてグルーヴィ。「seasoning」は木川と日食の2人編成、この曲のパンデイロ捌きはかっこよすぎ。思わず身体が動き出してしまうようなリズミカルな演奏に心が踊る。

 日食がひとりステージに残り、再びソロ演奏。「8月32日」は侘しさを感じるメロディと、もやがかかったような照明がばっちり。物寂しい打ち込みのトラックがどうにもノスタルジックな気分を運んでくる楽曲であり、これもひとつの夏の景色だろう。そしてそのムードを引き継ぐのがハンドマイクで歌った「最下層で」と、MCを挟んで歌われた新曲の「畦」である。「畦」は侘び寂びの景色、あるいは日本人の心象風景なんかが浮かんでくるようなしっとりとした夏の歌であり、これまでの日食にはなかった曲調だと言えるだろう。

 「ノスタルジックしんみりはここまで。あとはカチ上がる曲しか残っていません!」という宣言が、静けさの漂う会場に放たれて歓声が上がる。そう、一転してハジけるような夏の曲が続き、一気にクライマックスへと向かっていく。日食CREWと木川保奈美がステージに戻り、5人編成で「蜃気楼ガール」「真夏のダイナソー」を演奏。眩しいサマーソングに大きなクラップが起こる。オリエンタル風の曲調がバリ踊れる「LAO」から、緊迫感と疾走感を備えた「閃光弾とハレーション」、そして最後はもちろん「ログマロープ」だ。イントロだけで大きな盛り上がりを見せる会場に、「あー楽しかった、ありがとう!」と返す日食なつこ。ドラムとパーカッションと客席から響く手拍子が重なり合い、とんでもない高揚感が生まれていく。なんとも胸がすくような景色である。

 それにしても、ライブに行くと若いお客さんが増えた気がする。というか、目に見えてこの音楽への支持が広がっているのだ。展覧会、未発表曲ツアー、ベストアルバム、及びそのツアーと15周年企画を華々しく展開した2024年。そしてその勢いのまま発表したアルバム『銀化』とZeppツアー、さらには二度目の『令和モダニズム』の開催と、日食なつこはこの2年間ブーストし続けてきた。その積極果敢な姿勢がこの音楽の裾野を広げたのは間違いなく、日に日に新たなリスナーが集まっているのだろう。

 10月からは二度目の未発表曲ツアー、『エリア未来2 “ブラックホール”』が開催される。代表曲も人気曲も一切なし、誰も聴いたことのない楽曲を、最高の歌と演奏で聴かせる企画である。会場は前回よりもうんとキャパを増やして、全国7箇所のZeppを回る予定だ。なお、「ブラックホール」に関して日食は、「曲には重厚感があると思います。臓腑の底にドスっと落ちてくるような未来を浴びてもらうことになるんじゃないかな」とコメントしていた。そう、恐らく『大日食観測会2026夏』とは対をなすライブになるはずだ(だから今回の衣装は白だったのだろう)。漆黒の未来を楽しみに待ちたい。

※:https://realsound.jp/2026/07/post-2455473.html

日食なつこ公式HP:https://nisshoku-natsuko.com/
X(旧Twitter):https://x.com/nsn58
Instagram:https://www.instagram.com/nisshokunatsuko_official/

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