サイダーガールの“夏”はまだまだ終わらない 濃密なセットリストで瑞々しい熱気を呼び込んだツアー初日レポ

『サイダーガールTOUR2026』初日レポ

 サイダーガールが、全国6都市を巡るツアー『サイダーガールTOUR2026「サイダーのゆくえ -残暑、君の街に夏が咲く-」』を、9月25日に東京・恵比寿LIQUIDROOMよりスタートさせた。

 約1年半ぶりとなった全国ツアーの初日公演では、インディーズ時代の楽曲から最新曲まで、12年のバンドキャリアを総括したような濃密なセットリストを展開。9月の終わりとは思えないほどの眩しい夏の景色を見せた。

サイダーガール レポ

 平日にもかかわらず、フロアは彼らの音楽を待ちわびるオーディエンスで満員。炭酸飲料のプルタブを開ける音を合図に、メンバーがステージに登場する。駆け出してきたフジムラ(Ba)が、「リキッド準備できてるか!」と勢いよく煽ると、その言葉に応えるように熱い歓声があちこちから沸く。1曲目は、甘酸っぱい青春のラブソング「パレット」。色とりどりの照明が明るく照らす会場に、疾走感溢れるサウンドが放たれる。オーディエンスがハンドクラップを打ち鳴らす中、ステージではYurin(Vo/Gt)と知(Gt)が向かい合って笑い合う光景もあり、スタートから高揚感に溢れていた。続く「リバーシブル」では、素直になれない恋心を歌うこの曲に思いを重ねるように、会場中から「ばかやろー!」の声が響き渡る。誰もが少年少女に戻ったような、瑞々しい一体感が生まれた瞬間だった。

 “変幻自在の炭酸系ロックバンド”を掲げる彼らは、ライブが進むにつれて、爽やかさだけに留まらない幅広い音楽性を見せる。中でも、「火鍋」は中華風のサウンドと重低音が混ざり合った新鮮な1曲。照明で赤一色に染まった会場に、Yurinの色っぽい低音ボイスが響き渡る。ライブのボルテージがどんどん上がっていく中、「ばかやろう」でバンドのグルーヴが頂点に達した瞬間は、フロアから自然と拍手が沸き起こった。

サイダーガール レポ
Yurin(Vo/Gt)

 すでに真夏のような熱気が立ち込める中、MCで「今年の夏はどう過ごしていたか?」という話題になると、「パスポートが切れていたから引きこもっていた」と冗談交じりに言うYurin。それに対して、知は「ひきこもった夏もいいじゃない」と優しく笑う。そして、「サイダーガールの曲はどれも夏だよね。昔の曲を聴いてセトリを考えていたら、12年くらい前に作った曲があったから、みんなに聴いてもらえたら」と思いを伝え、「猫にサイダー」を披露。この曲は、サイダーガールが生まれる前にボカロPだった知が制作した楽曲。ノスタルジックなイントロが響くと、小さく飛び跳ねて喜ぶ観客の姿も見られた。

サイダーガール レポ
フジムラ(Ba)

 ライブの勢いをさらに加速させたのは「オーバードライブ」。後ろにのけぞって激しくかき鳴らされる知の歪んだギターの音色と、「もっと、もっと!」と叫ぶフジムラの熱に煽られた観客は、タオルを振り回して飛び跳ねる。彼らの代表曲の一つである「シンデレラ」では、「祈りを込めて、全力で精いっぱい演奏していきます」というYurinの言葉通り、観客一人ひとりに語り掛けるように丁寧に届けられた。

サイダーガール レポ
知(Gt)

 2014年に結成され、今年で12周年を迎えたサイダーガール。改めてバンドの歩みを振り返った知が、「めちゃくちゃ長い付き合いになっちゃって、学生の時の友達より長く一緒にいるよね」としみじみ呟くと、フジムラが「もう好きとか嫌いとかじゃないよね」と笑う。すると、Yurinは「いや、全然好きだけど」とキッパリ返し、3人の長年の関係性を感じさせる微笑ましい一幕に笑いが起こる。

 さらに知は、今回のツアータイトルに込めた思いを語る。

「サイダーガール=夏のイメージがあると思うけど、僕自身はバンドを始めてから青春を感じることが多くて、それが幸せです。だから僕にとっての“夏”はライブハウス。みんなにも季節関係なくライブハウスに来たら“夏”を感じてほしい。そして、みんなの汗や涙が、僕たちの夏を咲かせてくれるんだと思う」

サイダーガール レポ

 その言葉を体現するように披露されたのが、公演2日前にリリースされたばかりの最新曲「咲く」。TVアニメ『千歳くんはラムネ瓶のなか』(AT-Xほか)第2クールのオープニングテーマでもあるこの曲は、演奏前に知が「バンドを組んだ時のことを思い出しながら作った」と語った通り、サイダーガールの原点を思わせる爽やかさと煌めきに満ちたサウンドだ。続けて、同アニメ第1クールのエンディングテーマ「陽炎」へ。作品の世界とも重なる眩しい青春の景色が、ライブハウスに広がっていった。

 そして最後に届けられたのは、メジャーデビュー曲「エバーグリーン」。王道の青春ロックサウンドを叩きつけ、ひと夏の終わりを惜しむような余韻を残して、ライブは幕を閉じた。

サイダーガール レポ

 身体を突き動かすリズムと、心を解放するメロディ。その両方が自然に共存していることこそ、サイダーガールの音楽の魅力なのだろう。突き抜ける青空を思わせる彼らの音楽は、LIQUIDROOMの空間にもよく似合っていた。そして来年1月28日には、ツアーの追加公演として再びLIQUIDROOMのステージへ戻ってくる。季節は冬へと移り変わっているが、きっと彼らはまた、眩しい夏の景色を咲かせてくれることだろう。

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