歌声分析 Vol.18:UNISON SQUARE GARDEN 斎藤宏介 軽やかなグルーヴ、完璧なピッチとリズム感 卓越した技術を紐解く
難曲をポップスへ昇華する、楽しみながら音楽と戯れる歌声
アルバム『MODE MOOD MODE』に収録された「MIDNIGHT JUNGLE」(2018年)は、ロカビリーを彷彿とさせるリズムが特徴的なダンサブルなアップチューン。音符も言葉も詰め込まれた一曲だが、歌は決して慌ただしく聴こえない。斎藤は曲のリズムを利用しながら、言葉をグルーヴの中で泳がせるように歌い進めていく。言葉の響きをリズムのうねりと見事に一体化させることで、タイトさとしなやかさを両立させている。
TVアニメ『ブルーロック』(テレビ朝日系)第1クールオープニング主題歌となった「カオスが極まる」(2022年)は、UNISON SQUARE GARDENでなければ再現できない一曲と言える。本曲では斎藤のスキルが、次々と繰り出される。〈Check it! My foot or BPM〉から始まる歌い出しのブロックでは、子音のアタックを強めにし、メロディのインパクトを印象付ける。続く〈analyze 突き詰め memorize〉からのブロックでは、早口でウィスパーボイス風なアプローチをしているが、母音を立たせ音と音を繋げているため、ラップのような印象にならず、曲の持つ高いテンションを落とさずに進んでいく。サビの〈楽園は近いぞ〉でのフレーズ途中の転調も自然で完璧。これだけの難曲をまったく力まず、一気に歌うことができるのは、斎藤の唯一無二の才能だ。
TVアニメ『うるわしの宵の月』(TBS系)オープニング主題歌として書き下ろされた「うるわし」(2026年)は、軽快なポップチューン。本メロへ入る直前に配された「シュビドゥビドゥ」というコーラスも印象的だ。ジャズやドゥーワップなどのソウルフルなコーラスワークを思わせるアプローチであり、ロックだけにとどまらない田淵智也(Ba)の幅広いバックボーンが垣間見える。単なる彩りではなく、楽曲全体を貫く軽快なグルーヴを提示し、そのまま本メロへ橋渡しする役割を担っている。この展開を受け取った斎藤はブレスを含ませ、囁くように歌い出す。注目したいのは、子音と母音で声の質感がほとんど変化しない点にある。顕著なのが〈放棄して 無謀をして 抱きしめてね なんちゃって〉の“して”、“として”、“しめて”の部分。音節が最初からひとつの響きとして完成しているのがわかる。この連続性こそが、UNISON SQUARE GARDEN特有の情報量の多いメロディを、軽やかに聴かせる大きな要因となっている。
斎藤宏介の歌声は、正確なリズム感、一音目から完成する発声、そして力みのないハイトーン……そのすべてが組み合わさることで、UNISON SQUARE GARDENの複雑な楽曲は大衆性を宿した音楽ミュージックとして成立している。しかも斎藤の歌唱には、難曲を攻略する緊張感ではなく、楽しみながら音楽と戯れているような余裕がある。
本稿の執筆にあたり、改めて彼らの曲を聴き、斎藤宏介の歌唱について考察したが、分析すればするほど、無二の歌い手だという事実がはっきりと立ち上がってきた。彼が今後どんな曲をどんな風に歌うのか、興味が極まるばかりだ。


























