次世代注目バンド・至福ぽんちょとは? 寄り添う優しさとその奥にある野心――結成から新曲「まだ嘘のまま」までに迫る

次世代注目バンド・至福ぽんちょとは?

『なんかいい日になる気がする』が生んだバンドの新たな推進力

――『与えられた場所で咲く』というアルバムが出て1年半くらいですよね。そこから、SNSの反響やライブでの反応も増えていったのではないかと思うんですが、この1年半を振り返ってどうでしょうか?

りおん:ライブで直接届けるっていうのが、やっぱり反応が一番分かるタイミングだと思います。ライブで一緒に歌ってくれてる人がいたりすると、曲をちゃんと愛してもらえてるんだなっていう実感がわきます。そういうのがこの1年半でライブを重ねるごと、いろんなイベントに出させてもらうごとに増えて。ちゃんといろんな人に届き始めてるんだなって気付けている気がしてます。

なお:SNSでエゴサもするんですが、『与えられた場所で咲く』以降、新曲を出せば出すほど、“至福ぽんちょ”っていうワードで検索に引っかかるものが増えてくれていて。いろんな人に届いてくれてるなっていうふうにも思いますし、早いテンポの曲とかライブでもみんな盛り上がってくれたりするようになって。サーキットライブやイベントの出演も増えて、少しずつ広がってるなっていう感じはしてますね。

――たいちさんはどうですか? この1年半を振り返って。

たいち:ライブもそうだし、さまざまなことを知ったって感じですかね。作曲だったり、歌詞を書く上でも、いろんな人との出会いや、その時々の感情を言語化できるようになってきたりして。活字もよく読むようになりましたし、映像作品もすごく観るようになりました。

――バンドの状況よりも、ソングライターとしての刺激のようなものが個人的な実感としては大きい。

たいち:そうですね。

至福ぽんちょ(撮影=堀内彩香)

――今年の1月にリリースした『なんかいい日になる気がする』というEPは、『与えられた場所で咲く』というアルバムから、曲作りにおいてはどんな変化が出てきたと思っていますか。

たいち:『与えられた場所で咲く』は自分たちの今ある環境で、“バンド”を全力で歌った作品だと思います。『なんかいい日になる気がする』は、自分の理想よりもだんだん遅れが出てきて、いろんなことが想像してた速度では進まなくなってきたと思った時にバンドの推進力となるような何かが欲しくて。煮詰まったり、考えすぎた結果、『なんかいい日になる気がする』っていう、それぐらいでやった方が意外とポッとうまくいったりするのかなっていう、ちょっと気まぐれ的なところも含まれた作品ですね。

――『なんかいい日になる気がする』の中では、「アンチ・ハレーション」が「日々」に匹敵する重要な曲だなと思っているんですが、そういう手応えはありますか。

たいち:ありますね。あの曲はすごく大変な曲で、できるまでにいろいろあって。いろんなデモを出していたんですけれど、「アンチ・ハレーション」の元となったデモにみんな「これでいきましょう」みたいな感じになった時に、僕だけあんまり自信がなかったんです。だから初めて、自分にない視点のものを完成させた曲だったなと思ってます。

――りおんさん、なおさんは「アンチ・ハレーション」についてはどう感じていますか。

りおん:歌詞を見た時に、「日々」は、隣に座ってあげるぐらいの寄り添い方があるような曲だったのに対して、「アンチ・ハレーション」はそういう優しさは確実に残ってるんだけど、もう少し力強く、前に進もうよ、っていうタイプの曲だという気がして。今までになかった明るい光みたいなのが入ったなっていう感じがしました。

なお:僕はもう、曲全体として新しいなっていう印象を最初に受けて。今までそんなにバンドサウンド以外の音が鳴ってることがあんまりなかったので、この曲を聴いた時は「おっ、なんかすごいじゃん」みたいな感じでした。

――スリーピースのバンドサウンドでずっとやっていこうというよりは、電子音を入れたり、サウンドのバリエーションを増やしていこうっていう発想はあった。

たいち:そうですね。スリーピースっぽいロックサウンドも好きなんですけど、それと同じぐらい、いろんなジャンルの音楽も好きなんで。今後どうなっていくかとかはあんまりわかんないですけど。いろんなことをやっていくんだろうなと思ってます。

――「アンチ・ハレーション」には〈才能では追いつけないし〉って歌詞があります。“才能”という言葉がキーワードになっていると思うんですが。

たいち:僕は才能がすごいあるわけではなくて普通の人なんで。頑張って、いろいろ勉強しないと追いつけないなあって。

――今、たいちさんがおっしゃったことって、僕は至福ぽんちょのいろんな曲の芯になってる気がするんです。つまり「日々」というのは、何者にもなれない人の方に寄り添う曲である。「“頑張れ”ではなく“頑張ったね”」というのは、特別な誰かになるために頑張ろうというのではなく、何者にならなくても幸せになれるよっていう曲である。で、「アンチ・ハレーション」は、才能では追いつけないけど、進んでいこうみたいな曲。そして、最新曲の「まだ嘘のまま」の歌詞にも才能という言葉がある。一貫してるなって思うんですけど。そのあたりはどうでしょう?

たいち:そうですね。才能はないものの、やっぱり欲しいというか。執着みたいなものが自然と出てるのかなって、今、気付きました(笑)。

至福ぽんちょ - アンチ・ハレーション (Music Video)

最新曲「まだ嘘のまま」に込めた思い、3人が思う“天才”とは

――「まだ嘘のまま」はどういうきっかけで生まれた曲でしょうか?

たいち:りおんが結構、嘘をつくのが苦手だったりして。どうしてもエンタメ要素が必要になってくる時に、話を面白く、ちょっと盛った言い方をするようなことだったり、「私たちここを目指します」とか「世界目指します」ということだったりをあんまり言えないほうで。ただ、それって損をしてないかなって思って。別に嘘だっていいというか。初めはみんな嘘だし、嘘なのか目標なのかって、後になってみないと分からないし。死ぬまでそれを続けていくのがたぶん人生だし。そういう気持ちを込めて書いた曲です。

――〈天才ぶって生きていこうぜ〉っていうフレーズは、嘘じゃない言葉として、まっすぐに言えるっていう感じ?

りおん:言い聞かせるみたいな感覚ですね。正直、そんなすぐには変わらないと思うんですよ。今も弱気の部分はあるし。だけど、そのマインドをちょっと心に置いておこうぐらいの、否定的で消極的な感情だけじゃなくしてくれるぐらいの感覚でいて。歌うときはそれを全力で表現しようって、自分に言い聞かせています。

至福ぽんちょ - まだ嘘のまま (Music Video)

――これはみなさんに聞かせてください。“天才”という言葉で何が思い浮かびますか? どんな人が“天才”だと思いますか?

なお:天才……なんですかね。なんでもできちゃう人、器用になんでもこなせちゃう人かなって思います。

りおん:私は、何かに手を出した時に、ちょっとした苦労も含めてすべてを刺激だと感じて、笑顔でやってのける人かなって思います。

たいち:天才は……世の中が勝手に貼ったレッテルくらいに思います。勝手に背負わされた看板みたいな感じですかね。僕は、天才って、架空のものぐらいに思ってます。中まで全部覗いちゃえば、きっとすべてには過程があって結果があるわけで。それを結果だけ並べて、すごかったら天才、すごくなかったら凡人って言ってるだけなんじゃないかなあと思っています。

――そういうたいちさんの実感みたいなものが、この曲にも結びついている感じがありますね。

たいち:そうですね。ちょっと皮肉ぶったところはあるかも。

――おそらくそういう皮肉ぶったものも、至福ぽんちょというバンドのエネルギーになるというか。

たいち:そうですね。「“頑張れ”ではなく“頑張ったね”」って歌ってるところが前に出てて、至福ぽんちょがそういう優しい、温かいバンドというイメージだけで見られがちですけど。僕が曲を作ってる以上、世間に対するクエスチョンは結構多いバンドなんじゃないかなとも思ってます。

至福ぽんちょ(撮影=堀内彩香)

――ちなみに、至福ぽんちょというバンド名はどういう感じで決まったんでしょうか? 

りおん:最初は響き重視でした。「ポンチョ」っていう単語から出てきて。で、何かの単語と組み合わせてみようっていろいろ案を出し合った中に「至福」っていう言葉があって。「至福ぽんちょ」っていう響きもいいし、漢字の意味としてもバンドとして「幸せ」っていう意味が入ってるのっていいじゃん、と。それで最初にこのバンド名にしようってなったんですけれど、後からこうやって由来を聞いていただく機会が増えてきて。「ポンチョ」って、響きが可愛いというのはありつつも、雨から防いだり、身を包むっていう意味があるじゃないですか。だから、人生の中で苦しくなってしまう部分、避けられない部分から、少しでも私たちの音楽で心を守れたり、ひとつの支えになれたらいいなっていう願いが後からできていったというか。

――至福ぽんちょという名前が自分たちにしっくりくる過程があった、みたいな?

りおん:そうだと思います。気付いたというか。

なお:やってるうちにそれが出てきたって感じですね。

たいち:そういう風に何かから身をしのげる存在になりたいっていう意味を僕がみんなに言った時にも「確かにね」みたいになったので。バンド名に近づくんだなと思いました。

――ライブについてはどうでしょうか。これまでのライブでもソールドアウトしたり、サーキットイベントでも入場規制があったり、ライブバンドとしての魅力も大きいと思いますが、自分たちのライブの強み、こういうところを見てほしいというところはどうでしょう?

りおん:私がライブで出したいと思っているのは、歌ももちろんですけど、自分のあんまり普段出さない、弱い部分、あんまり出したくないと思うような部分も言葉で出すということで。そのことで来てくれてるお客さんと心の距離を縮めるというか、できるだけ近くで届いてほしいなって思います。

なお:僕は、このバンドは歌詞がすごくいいと思うので、個人的にライブで意識しているのは、ちゃんと言葉が届くことを邪魔しないドラミングをしようっていうことですかね。とにかく歌詞を届けたいって思います。

たいち:音楽に真摯に向き合ってきた人が作るライブを、ぜひ身体で感じてほしいと思います。

――わかりました。では最後に聞かせてください。たいちさんのこれまでの話を聞くと、スリーピースのバンドサウンドだけでなく、いろんなことに挑戦したいということも思っていると思うんです。その上で、至福ぽんちょというバンドをどんな存在にしていきたいと思っていますか? 目標としてはどんなものを掲げていますか?

たいち:今断言できる「こういうものを」っていうものはまだ固まってないです。でも、ポップスをひっくり返したいなっていう思いだけがずっと、ふわっとありますね。そういう変化を起こすようなところに行けたら最高だなって思います。

至福ぽんちょ(撮影=堀内彩香)

「まだ嘘のまま」ジャケット写真
「まだ嘘のまま」

■リリース情報
「まだ嘘のまま」
2026年6月10日(水)リリース
Pre-add/Pre-save:https://shifukuponcho.lnk.to/StillPretending

■関連リンク
至福ぽんちょ lit.link:https://lit.link/shifukuponcho

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