K-POPの制作現場からボカロPへの転身まで 韓国出身の音楽プロデューサー・TAK、音楽的ルーツに迫る

TAKの音楽的ルーツに迫る

「トッケビの花」が繋いでくれた“縁”

――日本のポップカルチャーがお好きなのは過去作からも伝わります。15年前にTAKさんがサウンドクラウドにアップされた「2010ANISONG MIXSET TAK」を聴いたとき、Poreter Robinson世代の日本人として“同じ村の人だ!”と思いました。

TAK:あれを聴いてくれたんですか(笑)。あのミックスはまさに浪人時代に作ったもので、まさか日本の方に届くとは当時思ってなかったですね。時代感も共有できたようで嬉しいです。韓国語にも「같은 나이(同年代)」という言葉があるのですが、そういう感慨深さがありますね。

――TAKさんの時代感は楽曲にも現れているような気がして、凄まじいペースで再生数が伸びている「PPPP」はバイレファンキのリズムが鳴っていますが、このジャンルが国際的な認知度を獲得していったのはコロナ禍前後のような体感があります。それがボカロ曲に応用されてバイラルを生むことにクラブカルチャーの文脈と同時代性があるといいますか。

TAK:確かにそれぐらいの頃だったかもしれないですね。でも実はあまり意識せずに使ったリズムで(笑)、あとから「あ、これバイレファンキだったんだ」と気づいたくらいです。それが韓国語の音韻と重なって「PPPP」の個性になったと思うと、面白いですよね。

 韓国語の歌詞に「진짜진짜귀여워(チンチャチンチャカウィウォ=本当に本当にかわいい)」「언니(オンニ=お姉さん)」など、日本のリスナーにも聞き覚えのある言葉を意識的に使ったことも、幅広く届いた理由のひとつかもしれません。

[MV] TAK - ‘PPPP’ feat. 初音ミク、重音テト

――「トッケビの花」にも言葉の妙があるように感じます。ボカロ以降のJ-POPを、促音(っ/ッ)が多用される韓国語で表現されていて、大変ユニークな印象を受けました。

TAK:YOASOBIの影響が強く出た曲ですね。YOASOBIの曲はサウンドの質もさることながら、音楽そのものの力がすごい。韓国でもすごく人気があるアーティストなんですけど、トップラインが良いとかテクスチャー面が優れているだけでなく音楽全体が素晴らしいんですね。自分もYOASOBIみたいな曲を作りたいと思ったのが、「トッケビの花」の出発点でした。

――YOASOBIがインスピレーションだったんですね!「初音ミクの消失」や、YOASOBIの楽曲でいう「UNDEAD」などは流れるような音韻ですが、「이랬다 저랬다 도깨비 (イレッダ チョレッダ トッケビ)」の1節に顕著なように、本作はやはり促音が重要なのではと感じます。

TAK:Eveさんもこの曲が好きだと仰っていたんですよね。具体的にどういう部分がお好きなのかはお聞きしそびれてしまったのですが、「『トッケビの花』、本当に良かったです」とDMが来て。もちろん僕はEveさんを知ってましたが、まさかご本人から連絡が来るとは思わず……。「日本に来るときは連絡してくださいね」と言ってくれて、実際にEveさんのアジトみたいな場所に招待してくれたんです。そこから「アイオライト」のアレンジを担当させていただくところに至ったので、「トッケビの花」が繋いでくれた縁とも言えますね。確かに、何かしらユニークな部分はあったのかも……。

[MV] TAK - 'トッケビの花' feat. TENKO SHIBUKI

――KMNZに提供した「WAVE」もバイレファンキアプローチの楽曲ですが、あの曲は韓国語的なリズムに日本語を当てはめた印象を受けました。

TAK:実際、下敷きになっているのは元々K-POPとして制作していた楽曲なんです。KMNZからオーダーをいただいたとき、スケジュールがかなりタイトで、手元にあったデモをKMNZに合わせて修正して送りました。複雑な要素がたくさん入っていたので最初は「大丈夫かな」と心配していたのですが、先方から「すごくいい」と言ってもらえて。あの曲に関してはKMNZの対応力が光ってると思います。とんでもなくすごい仕上がりになっていて、作った僕も本当に感動しました。あの曲、テンポが5回変わるんです。しかも声のトラックだけで100個を超えていて(笑)。KMNZのみなさんがハモリまですべて録音してくれたうえに、ボーカルエディットもやってくださって、本当に助かりました。いろんなジャンルを詰め込んだK-POP的な構成でも、あれだけのクオリティで表現できるんですから、凄まじい実力ですよね。

WAVE(Prod. by TAK )/ KMNZ [Official Music Video]

――最新作「numb numb」について教えてください。

TAK:初音ミクと重音テトの百合的な感情を込めた曲で、ジャージークラブのリズムを使っています。コンセプトは「K-POPの練習生システムの中で、ミクとテトが韓国のアイドルとしてデビューしたら?」というもの。ミクは16歳、テトは31歳という公式設定の年の差も物語の中に活かしています。ちなみに途中で使われているバイオリンの音は全部DTMで打ち込みました。NewJeans以降はポップミュージックにおいてもジャージークラブをカッコよく表現できると分かったので、その感覚をボカロでも表現できればと。

[MV] TAK - ‘numb numb’ feat. 初音ミク、重音テト

――リズムゲーム→K-POPタイトル曲→ボカロと、TAKさんの音楽は複数の場所を横断してきましたけども、今後はどんな方向に向かいたいですか?

TAK:「自分が面白いと思うことを追いかけるだけ」というのが正直なところです。今一番面白いのがボーカロイドなので、ボカロPとして活動しています。

 ジャンルのトレンドで言えば、今は10年前のように「これが最も流行っている」というひとつの答えがない時代だと思います。YouTubeやInstagramによってリスナーそれぞれのアルゴリズムが違うから、様々な好みやトレンドが同時に存在している。ハイパーポップはもはや基本的なテクニックになりましたし、アンダーグラウンドなDJがSkrillexの曲をかけても違和感がない。ジャンルという壁がなくなってきた時代だと思います。クリエイターにとって最大の悩みは、「流行を追う」のではなく「自分がトレンドになる」しかない時代になったことかもしれません。

 自分が昔から愛する文化と最新のカルチャーを混ぜ合わせて、面白いものを作り続けることが目標です。こうして日本語でインタビューを受けること自体が夢のようで、本当に嬉しい。様々な領域で活発に活動して、幸せに音楽をやっている自分をもっと多くの人に知ってもらいたいと思っています。

TAKライブ写真

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