Zeebra×STUTS×MaRI鼎談 「男だけの世界じゃなくなった」“女性ラッパー”を取り巻くHIPHOPシーンの現状と課題

評価に対する違和感ーー「女性ならではの目線の話がすごく大切に」(Zeebra)

ーーそういうところって、一つ一つはちっちゃい問題かもしれないけど、男性は感じてこなかったストレスでもあるわけで。それと、ヒップホップって、相対的にアーティストもリスナーも男性の方が多い。だからMaRIさんのリリックも、女性なら共感を呼ぶところも男性が聴くと引いちゃうところもあるかもしれない。だから『GOLDEN MIC』を通してMaRIさんやCharluさん、そして応募者の女性たちの言葉がもっとフォーカスされるようになったらいいな、と思います。
Zeebra:番組の中でも、MaRIたちに直接話してもらうシチュエーションを積極的に作っていきたいなと思っていて。ヒップホップって人生経験がすごくプラスになるじゃない。そういうところで、彼女たちのいろんな話をしてもらいたいし、女性ならではの目線の話がすごく大切になっていくんだろうと思う。
ちょっとMaRIに聞いてみたいんだけど、男性ラッパー同士だとライバルっていうかちょっとコンペティティブになるわけだけど、女性同士だとそういうのはどうなってるの?
MaRI:言いにくいところですけど、女の子のラッパーみんなで仲良しこよしって感じではないと思います。私も本当に仲がいい女性のラッパーは数人しかいない。
ーーそれに、アメリカのシーンでも昔から女性ラッパーが二人以上並ぶと、対立構造的なものをメディアも一緒になって煽る、という感じはありますよね。リル・キムとフォクシー・ブラウンとか、ニッキー・ミナージュとカーディ・Bとか。やっぱり女性同士の方が比較されやすいのかなって思いますし、必要以上に対立させようとするのは、よくない傾向だと思う。
MaRI:本当に嫌ですよね。二人で並ぶと、どっちが細いとかどっちの胸がデカい、とかそういう点でも比較される。コメントが全部、カラダに対しての内容なんですよ。
ーーMaRIさんは海外にもルーツがあるシングルマザーであり、若いうちにお母さんとも死別しています。人生の中で、ラップをやっていて救われたな、と感じることもありますか?
MaRI:めっちゃありますよ。まず、暇が嫌いで、音楽をやり始めてからは音楽のことをずっと考えているから、ネガティブなことを考える時間がなくなった。息子の存在と、亡くなったママとの約束があったからこそ音楽を頑張れるっていうのもあるし、そういう、自分にとって大切な“何か”があるからこそ、ラップを頑張っているんだと思います。あと、音楽の中だと本当のことを言えるんです。こうやって喋るよりも、リリックにした方が人に響くし、その時の気持ちが一生残るものになる。年ごとに曲を追いかけていくと、その時によって書いている内容も違う。後から「あの時、こんな風に思ってたんだ」って振り返ることができる。
ーー応募を迷っている人の中には、「ラップしてみたいけど、子供がいるからムリ」って感じているような人もいるかもしれないですよね。
MaRI:そんなの関係ないっすよ。私だって、息子を産んでからラップを始めましたもん。子供を産むまではずっとキックボクシングをやっていて。妊娠してそれができなくなって、キャバ嬢にもなって、という経緯がある。そもそも、私の親がめっちゃ忙しい人だったんです。昼と夜、二交代で仕事をやっていて、参観日もマジでたまにしか来ない、っていう。それが嫌だったから、私は息子の参観日は全部行きたいし、学校の行事にも参加して、土日は習い事をさせたいって思ってた。それでラップを始めたってところもあるかもしれない。「そうするには稼がないと」って。
Zeebra:俺もデビュー前にはもうお父さんだったから。みんなと同じだけの仕事量だと、自分一人はギリギリ喰えるけど、子供のことは食わせられない。だからみんなよりさらに仕事をしてーーって頑張ってたな。親っていうには年齢が近すぎるかもしれないけど、我々はこの番組だと保護者側なんですよね。これから入ってくる人たちをどれだけ伸ばしてあげられるか、っていうところが大事になってくるから、親目線みたいなものも活かせるかもしれないよね。
STUTS:MaRIさんが最初にラップをしたきっかけって何だったんですか?
MaRI:「日本にはケツ振るラッパーがいねえな」って(笑)。その時、アメリカではカーディ・Bとかニッキー・ミナージュ、ミーガン・ザ・スタリオンたちの人気がすごくて。MaRIもよくクラブに行ってたから、踊りながらそういう女性ラッパーたちのジェスチャーとかを真似していて。「可愛いし、あんな風になりたいな」って思うようになったんです。それでやってみた、っていう感じでした。だから、ラッパーになるきっかけなんて何でもいいんですよ。
ーー「私、今ラッパーじゃん!?」みたいな手応えを感じたのはいつ頃ですか?
MaRI:「BUM BUM」(2021)の時ですかね。デビューから数えると3曲目かな? 最初は(再生回数が)伸びなかったんですけど、途中から急に再生されるようになって。だんだんライブに来る人の人数も増えてきて、「わあ、これってラッパーじゃん」って。地元の名古屋でお客さんがどんどん増えてきたから「多分、(自分のことが)知られてきてるな」って。
ーー息子さんはMaRIさんのことをどんなふうに見ていますか?
MaRI:ちゃんとラッパーとして見てますよ。面白いです。今、9歳で。
Zeebra:3年生くらい?
MaRI:そうです。彼の曲もフリースタイルで録ったものが何曲かあるんですよ。それくらい、息子も音楽がめっちゃ好きで。今は(プレイボーイ・)カーティが好きですね。息子のクラスのママたちもラップを聴いている人がいるみたいで「インスタ、拝見してます」って言われるんです。参観日の時とかは気まずいけど(笑)。他のお母さんと違いすぎて、子供たちは逆にMaRIに興味を持ってくれてる感じがします。それを見て、自分の息子もニヤつくみたいな。
「自分に合った表現ができたらなんでもいい」(STUTS)

ーーSTUTSさんが作った応募用のビートも、すでに公開されていますよね。STUTSさんはABEMA『RAPSTAR』でもビートを提供していらっしゃいましたが、オーディション用のビートを作る時のマインドはどんな感じなのでしょうか?
STUTS:いろんな人がそれぞれの気持ちを乗せやすいビートになればいいな、っていうのは毎回思うことですね。あと、『RAPSTAR』とこの『GOLDEN MIC』ではやっぱり考え方が少し異なりました。
ーーたとえば?
STUTS:KMさんとChaki (Zulu)さんと「どういうビートがいいんだろう?」と3人でいっぱい相談しあったんです。結果的に、割とスピットする系というか、メロディに寄りすぎないタイプの三つのビートになった。海外の有名な女性ラッパーたちも割とみんながっつりスピットしているなっていう気がしていて。どちらかと言うと、男性ラッパーの方がメロに寄っているイメージがあったんです。じゃあ、そういうスピットがしやすいビートでいこうか、と。そうは言っても、自分に合った表現ができたらなんでもいいと思うし、オートチューンを乗せやすいビートもあるので、応募される方はあんまりそこは考えすぎなくてもいいのかなって思います。「○○系が流行っているから、こういうふうにやらなきゃ」とか思う必要はない。応募者の方は、自分が一番しっくり来るビートを選んで欲しいですし、例えば昔ラップをやっていた女性の方が、もう一回がっつりラップしてみるのも素敵だと思う。そういうこともあればいいな、と思いながらビートを作りました。



















