奇妙礼太郎、ニュートラルに紡いだ『1976』に宿る歌うたいの妙味 50年を生きた今の“自分っぽさ”が詰まった作品を語る

奇妙礼太郎、『1976』に宿るもの

「何がどうなっても“楽しい”しかないと思う」武道館公演への想い

ーー音も、今回ご自身で打ち込みも含めて作ったままっていう曲が多いじゃないですか。

奇妙:打ち込み全部はさし変えてないのかな。自分が中込さんに送ったトラックのままのやつもあるかも。「silvers」とか「Buddha Beat clubへようこそ」とか。

ーー以前は「DTM全然できない」みたいなことをおっしゃっていましたけど、今はどうなんですか?

奇妙:そんなにできるわけじゃないですけど、まあやってますね。ほかの人みたいにすごいできなくても別にええかって思ってるから、自分なりにやればいいし。自分で聴いて、これは嫌やなと思ったら使わないし。

ーーそこまで自分で作るというか、完結するっていうのは、奇妙さんにとっては気持ちいいことなんじゃないですか?

奇妙:そうですね。誰かみたいに作らないといけないと思ってると曲作るのが苦しいなと思うんですけど、今回みたいな感じの作り方やと無限にできるんで、なんにもしんどくないし。「苦しまないとダメですかね」とも思いますけどね。

ーーたとえばこの中で言ったら、「愛がすべてのこと」はドラマのタイアップなわけじゃないですか。それはまた違った難しさがありましたか?

奇妙:そんなに。なんか、自分でしかないから。「自分ができることってこんなことやけどいいですか」みたいな感じはありますけどね。でもそれでよかったらいいし、違うなってなったらお互いの落としどころまで持っていくこともできるし。締切とかはありますけど、基本的に自分ができることって自分っぽいことなんで、それでやらせてもらえるなら楽しいけどっていう感じではありますね。

ーーその「自分はこれしかできないけど」っていうところがコンプレックスになったり、マイナスに作用したりしていた時期もあったわけですよね。

奇妙:そうですね。みんなパソコンで音楽作ってるなと思ってMacBookを何回も買ったのに、全部どっか行きましたし(笑)。画面の上にぐっちゃぐちゃにファイルが並んで「なんじゃこりゃ」ってなって。今はiPadでやってるんですけど、iPadのいいところはファイルがめちゃくちゃに並ばないところですね。でも、できないことをできないって言ってても何も変わらないんで。100mを5秒で走れないって悩んでてもしょうがないし、だったら車乗ったら済むしっていう。だから中込さんが自分にとっての車なのかもしれない。自分の不可能を可能にしてくれる人が周りにいるからアルバムもできるわけで、一人で全部やったら、めっちゃ暗いアルバムができるかもしれないし。まあそれも作っていいし、なんでもいいんですけどね。

ーー別に車に乗る時は乗ればいいし、歩いて行く時は歩いて行けばいいっていう。

奇妙:ああ、それいいですね。次からインタビューで使おう(笑)。自分から出るもの全部出してもいいし、それを人に聴かせて「全然好きじゃない」って言われてもいいし。10人に聴いてもらって、10人とも嫌いでもいいけど、1万人ぐらいの人が聴いたらそのうちの何人かが「あ、結構好き」って言ってくれたりすることもあるから。だからできるだけ多くの人に一旦聴いてもらうっていうことがすごく大事になるんやなと思いますね。できたものも大事やけど、とにかくいっぱいの人にタッチしてもらうっていう……SNS戦略の話してるみたいになってますけど(笑)。

奇妙礼太郎 撮り下ろし写真

ーーでもそういう意味ではこのアルバム、ドラマの主題歌もあるし、代表曲のカバーも入ってるし、サザンオールスターズのあの曲も入ってるし、とフックはたくさんありますよね。

奇妙:あ、そうですね、確かに。やってんなあ(笑)。

ーーそういうアルバムの最後を「わたしの歌」のセルフカバーで締めるっていうのも、すごくいいなと思いまして。これはソロ1stアルバム『YOU ARE SEXY』に入ってた曲ですね。

奇妙:これ、作ったの2017年とかで、10年近く前なんですけど。自己肯定感という言葉をその頃に初めて知ったんです。自分のこと好きか嫌いかみたいな、そういう概念自体ないときに初めて知って、そういう本をちらほら読んだりしてたんです。これ、当時即興で録ったんですけど、それを思い出したりしますね。今もこういうことを考えているかと言われたら、もうちょっと進んでるっていうか、自分のことを好きでも嫌いでも別にどっちでもいいやん、そんなこと考える必要もないやんっていうところに最終的に落ち着いたんですけど。でもこの曲を歌うこと自体はすごい好きで、バンドの演奏もすごいことになってて、ライブでやると毎回すごい瞬間が訪れて最高やなと思うんです。

ーーこの歌詞も、そのやり方だからこそできた歌詞なわけじゃないですか。たぶん考えて書こうと思ったら、この言葉って出てこないと思うんですよね。〈わたしはわたしを好き〉って結構強い言葉ではあるじゃないですか。それを今邪念なく歌えているっていうのも、心境の変化があるんだろうなと思います。

奇妙:うん。でも好きにならないといけないわけでもないし。どっちでもいいよって感じですね。どっちでもいいけど、こんな曲もあったからちょっと聴いてみてって。だから、これからちょっと歌詞変えたりするかも。ちょっと語尾を変えたりとか。

ーーいいですね。だからじつはすごくリアルタイムというか、この曲もライブの定番であり続けているし、カバーとかカバーじゃないとか、新曲だとか新曲じゃないとか、このアルバムは関係ないと思うんですよ。

奇妙:それはもう自分では言えない。本人が言うなよっていう。

ーー2026年の奇妙礼太郎を詰め込んだ、すごくニュートラルでフレッシュなアルバムだなと思います。これを掲げての武道館っていうのも楽しみですね。

奇妙:そうですね。いろんな曲やろうと思ってるんですけど、たぶん一瞬で終わるんで。何やろうかなって考えてますね、今。

ーーゲストとして、塩塚モエカ(羊文学)さん、ヒコロヒーさんとSundayカミデさんに加えて、有山じゅんじさん、内田勘太郎さん、木村充揮さんというレジェンドの皆さんも参加されるということで。

奇妙:そうですね、そこがいちばん押しそう(笑)。たぶん有山さんがずっと喋って、ギター持つまでに時間がかかる。

ーー(笑)。武道館っていう場所に対してはどう思ってらっしゃるんですか、奇妙さんとしては。

奇妙:世代的にはすごい思い出ある場所っていうか、関西人にしても、自分の時代の人って、「日本武道館か大阪城ホールか」みたいなイメージがあって。売れてる人がやってるみたいな場所、みたいな感じですね。だからなんか他人事みたいな感じなんです。「どんなライブになりそうですか」とか聞かれるんですけど、やったことないからわかんない。でも何がどうなっても“楽しい”しかないと思うんで、怪我とかだけないように。無事済んだらそれだけで素晴らしいなと思ってます。

奇妙礼太郎 撮り下ろし写真

奇妙礼太郎『1976』ジャケット写真
『1976』

■リリース情報
奇妙礼太郎『1976』
2026年4月22日(水)発売

<収録曲>
01.オー・シャンゼリゼ
02.元気でやってるか(塩分チャージCMタイアップソング)
03.愛がすべてのこと(TBSドラマストリーム『終のひと』主題歌)
04.愛の讃歌
05.silvers
06.Budda Beat Clubへようこそ
07.Blue so much
08.窓の外
09.1976
10.いとしのエリー
11.陽炎
12.わたしの歌

■ライブ情報
奇妙礼太郎『奇妙礼太郎 日本武道館 単独公演 “1976”』
日時:2026年7月3日(金)open 17:30  start 18:30

『奇妙礼太郎 日本武道館 単独公演 “1976”』

■関係リンク
奇妙礼太郎公式サイト:https://kimyoreitaro.com/
楽曲配信リンク:https://jvcmusic.lnk.to/strangereitaro_music
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