EL CAPITXN、TAEHYUNらとのコラボ楽曲がバイラルチャートイン 背後にある物語も“再生される対象”に
Viral Chart Focus
Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの4月15日付のTOP10は以下の通り(※1)。
1位:BMFUNK2341「MONTAGEM NATTO GAKKO 2」
2位:EL CAPITXN, TAEHYUN, Jeremy Zucker「Breaking Through」
3位:Shimuda & SlowlyDying「BAD ENDING FUNK」
4位:HIROMU(INI)「またどこかで」
5位:ROIROM「DRESS CODE」
6位:Diggy-MO'「爆走夢歌」
7位:JO1「EIEN」
8位:SB19 & BE:FIRST「Toyfriend」
9位:MAZZEL「Get Up And Dance」
10位:なえなの「ツンデレ feat.セカンドバッカー」
今週は、EL CAPITXNによる「Breaking Through」をピックアップする。3月26日にリリースされた本曲は、4月13日付のデイリーバイラルチャートに初登場2位でランクイン。その後、上位をキープしている。本曲は、BTSやTOMORROW X TOGETHERなどの楽曲制作を手がけてきたプロデューサー兼DJで、自らもアーティスト活動を行っているEL CAPITXNが主体となり、そこにTOMORROW X TOGETHERのTAEHYUN、米国のシンガーソングライターのジェレミー・ザッカーが参加する形で発表された楽曲だ。曲はEL CAPITXNとジェレミー・ザッカーらの共作。
すでにK-POPシーンでは名が知られたプロデューサーであるが、本作には単なるクレジットの記載にとどまらないストーリーがある。EL CAPITXNとTAEHYUNの絆の物語だ。EL CAPITXNは、2020年10月リリースのTOMORROW X TOGETHERの3rdミニアルバム『minisode1 : Blue Hour』収録の「Ghosting」のプロデュースを手がけており、作詞にはSOOBINとTAEHYUNが参加。その後もグループの楽曲の多くを担当しており、お互いのことはよくわかっている中で満を持してリリースされたのが今作というわけだ。
今回のコラボに向けていくつかのデモの中からTAEHYUNが選んだのが「Breaking Through」だったという。今作の再生の動機には、メンバーとの関わりの中で楽曲プロデューサーに対する信頼が生まれている点もあるはずだ。加えて、TOMORROW X TOGETHERというグローバルに展開するグループのメンバーが参加することで、ファンダム外への波及も自然に発生していると思われる。
EL CAPITXNは、繊細なコードワークと情緒的なメロディメイクを得意とし、叙情性と洗練されたサウンドデザインを横断する作風が特徴である。「Breaking Through」は、トレンドライクなトラックを軸にしながら、オルタナティブR&Bやエレクトロポップの質感を織り交ぜたハイブリッドなミディアムチューン。空間処理やシンセサイザーの重なりによって生まれる浮遊感が、聴き手を引き込む没入感へとつながっている点も、EL CAPITXNの手腕として注目すべきポイントだろう。
TAEHYUNとジェレミーという2人のボーカルについても触れたい。そのアプローチに共通しているのは、声を置くように歌っていること、さらに霧のような潤いのあるトラックに対して子音を立たせることなく声を張らずに母音を処理しているところである。ジェレミーは柔らかくもドライな声質の中、母音に微かな掠れを含んで余韻を作る。TAEHYUNは、ブレスを多めに含んだ柔らかい発声でメロディの上をすべるように歌い、トラックとの一体感を生み出している。2人とも、声音の微細な変化と、言葉ごとにピッチのピークを作り出すことで、声に揺らぎが生まれ、淡々と進行する曲にドラマ性を加えている。
「Breaking Through」のバイラルヒットは、信頼できる作り手と認知度の高いアーティスト、ファンダムによる加速、そこからのアルゴリズムへの派生という複数の要素が段階的に交差して生まれたチャートアクションだと考察できる。ここで見えてくるのは、リスナーの選択基準の多様化である。アーティストのバッググラウンドやそのストーリーが誰でも知ることができるようになった現在は、単に耳に残るかどうかだけではなく、制作背景や文脈、クレジットまで含めて楽曲を選択し、シェアしていることもあるのだろう。つまり、楽曲そのものに加えて、その背後にある物語もまた“再生される対象”になっているのだ。「Breaking Through」は、バイラルチャートにおけるナレッジ消費の顕在化を示す一例であり、その定義が更新され続けていることを浮き彫りにしている。
※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2026-04-15

























