暴飲暴食P「うそつきマカロン」、バイラルヒット “使う音楽”と重音テトの声の相性は?

Viral Chart Focus

 Spotifyの「DailyViralSongs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「SpotifyTopSongs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの3月18日付のTOP10は以下の通り(※1)。

1位:中島健人「最初はキュン!」
2位:透(toh)「WAITING AT 3AM」
3位:東京真中「ブレインロット(feat. 重音テト)」
4位:暴飲暴食P「うそつきマカロン (feat. 重音テト)」
5位:=LOVE「劇薬中毒」
6位:SEKIMANE, SUNJI「BEAUTIFUL MOON FUNK」
7位:かぐや(CV:夏吉ゆうこ), 月見ヤチヨ(CV:早見沙織), TAKU INOUE「ray (超かぐや姫! Version)」
8位:SixTONES「一秒」
9位:kz, かぐや(CV:夏吉ゆうこ)「Reply」
10位:YX「Miniskirt」

UGC文化との相性の良さがバイラルヒットに直結

 今週は、暴飲暴食P feat. 重音テト「うそつきマカロン」をピックアップする。暴飲暴食Pは22歳。新卒の社会人1年目であり、音楽活動も同時にスタートさせたクリエイターだ(本人のXプロフィールより)。本曲は、日本のバイラルチャートで上位にランクインするだけでなく、韓国で5位、台湾で25位、ベトナムで38位を記録するなど、アジア圏での同時多発的な拡散が確認できる。1月28日にリリースされた本曲は、2月16日付のSpotifyデイリーバイラルチャートで21位に初登場。その後順位を上げ、3月18日付で4位を記録し、現在も上位をキープしている。

暴飲暴食P 「うそつきマカロン」feat. 重音テト

 〈Te amo 사랑해 I love you Я люблю тебя 我爱你〉と多言語で愛を連呼するパートがフックとなっているのは間違いないが、本作がここまで拡散した要因は、単なるキャッチーさにとどまらない。既述したフレーズの、均等なリズムで言語が切り替わる構造が、映像編集とリンクしやすい性質を持っていた点が重要である。この構造はカットの切り替えと同期しやすく、約15秒前後の短尺動画に最適化された設計。結果として、TikTokを中心としたUGCにおいて“使いやすい音源”として機能し、再生導線を形成したと考察できる。

重音テトの声と“使う音楽”の相性

 さらに、ボーカルに重音テトが起用されている点も見逃せない。テトはUTAU発の音声キャラクターであり、ユーザー主導の創作文化の中で育ってきた存在である。“誰でも使える”“正解が存在しない”という前提を持つその出自は、UGC文化と極めて高い親和性を持つ。この“誰のものでもない声”という匿名性があるからこそ、歌詞の内容は特定の人物の物語ではなく、聴き手自身の物語へと変換される。重音テトは単なる歌唱手段ではなく、ユーザー主導で育ったデジタル文化の象徴として、UGC的再生を加速させる媒介となったと考察する。

 歌詞で綴られるのは、他者にどう見られるかによって形づくられていく自己像だ。自分の意思よりも、好きな相手の期待に合わせて作られていく“演出された自分”。〈自分がいなくなったって本望〉〈作り物だけど マカロンになるよ〉〈たくさん噛んで 一部にしてね〉といったフレーズで、相手への強い依存が無邪気な言葉で露わになる。音像自体は軽やかでポップであり、言葉も口語体で親しみやすいが、そこで語られている内容は極めて重い。この“聴感の軽さと意味の重さのズレ”がギャップとなり、共有や再視聴を促す中毒性につながっている。

 自分の嗜好や本心ではなく、“どう見られるか”によって自己を設計する感覚は、SNS上で日常的に反復されている行為そのものだ。“可愛いと歪みの共存”というテーマは日本にとどまらず、アジア圏のポップカルチャーとも共振し、地域横断的なバイラルを生み出した。今週のチャートが示しているのは、音楽が“聴くもの”や“歌うもの”であると同時に、“使うもの”にもなっている変化だ。完成された作品としてではなく、二次的な表現を生むための素材としての強度。その価値がUGCというカルチャーによって再定義されつつあることを、本作は象徴的に示している。

※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2026-03-18

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