アーティストの“マンガ愛”が生んだ名曲 indigo la End、UNISON SQUARE GARDENらが見せるカルチャーの化学反応

 2月11日に配信リリースされたindigo la Endの「カグラ」が各所で話題を呼んでいる。今作は川谷絵音(Vo/Gt)が愛読する、とあるマンガをイメージして作られた曲だ。曲題から察したリスナーも多いように、今曲で彼が題材としたのはおそらく、現在『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中の『カグラバチ』だと思われる。

indigo la End 『カグラ』Music Video

 川谷は、作品名こそ公にしていないが、「大好きな漫画があって、まだアニメ化もしてないしなと思い、勝手に主題歌を作ってしまいました」とコメントしており、手法として自身がよく行う「妄想タイアップ曲」だと解説している(※1)。作品を一ファンとして愛し、物語に深い思い入れを抱いたうえで、創作した“妄想主題歌”というわけである。このIndigo la Endの「カグラ」のみならず、情熱を発端として生まれたマンガを主題とする曲は、実はこれまでにも数多く存在している。そこで今回は、さまざまなマンガ作品をモチーフに生まれた楽曲をピックアップしてみたい。

UNISON SQUARE GARDEN「弥生町ロンリープラネット」「8月、昼中の流れ星と飛行機雲」

 まず最初に紹介したいのは、UNISON SQUARE GARDENの「弥生町ロンリープラネット」と「8月、昼中の流れ星と飛行機雲」だ。田淵智也(Ba)は、川谷同様にさまざまな作品に対し「もし自分が主題歌を作るなら」という“if”の発想から複数の曲を生み出しているソングライターでもある。先述した2曲もそんな楽曲だと言われている。「弥生町ロンリープラネット」「8月、昼中の流れ星と飛行機雲」はそれぞれマンガ『椿町ロンリープラネット』『ひるなかの流星』から想起して制作したのだろうと筆者は考えている。両作を手がけたマンガ家・やまもり三香は田淵が敬愛する作家の一人だ。現在放映中となる同氏原作のTVアニメ『うるわしの宵の月』(TBS系)のオープニング/エンディング両主題歌をUNISON SQUARE GARDENが手掛けたきっかけには、そんな二人の縁が背景としてもあるのだろう。だからこそ、今回のタイアップは“マンガ×音楽”の化学反応として、非常に理想的な形のひとつなのかもしれない。

Yayoityou Lonely Planet
8-gatsu, Hirunaka No Nagareboshi To Hikouki-gumo

9mm Parabellum Bullet「カタルシス」

 また、9mm Parabellum Bullet「カタルシス」も、作品愛に溢れたエピソードがある。曲名こそ公言されていないものの、2023年夏~秋頃のライブで未発表曲として当時たびたび演奏されていた今作。曲が生まれた経緯は菅原卓郎(Vo/Gt)曰く、『呪術廻戦』(集英社)の主人公・虎杖悠二のイメージソングが「ハートに火をつけて」だと知ったことをきっかけに、バンドから作品へのイメージソングとしてアンサー的に作ったのだという(※2)。歌詞には『呪術廻戦』を思わせるワードも多数盛り込まれており、原作読者であればすぐに連想できる作りともなっている。こうした双方向の敬意の交錯が垣間見えるエピソードは、マンガとバンド、どちらのファンにとっても非常に微笑ましい話でもあるだろう。

9mm Parabellum Bullet「カタルシス」MUSIC VIDEO

クリープハイプ「そういえば今日から化け物になった」

 クリープハイプの3rdアルバム『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』収録の「そういえば今日から化け物になった」も、マンガへの愛を感じられる楽曲だ。本作リリース時には尾崎世界観(Vo/Gt)がとあるマンガからインスピレーションを受けて作ったことが明かされていたが、具体的な作品名までは不明だ。アルバムリリース当時を思い返せば『亜人』(講談社)や『アイアムアヒーロー』(小学館)、『東京喰種トーキョーグール』(集英社)、『寄生獣』(講談社)などの現代SFとも言えるシリアスなストーリーの作品が複数注目を集めていた時代だ。歌詞に描かれる印象的なフレーズや感情描写に沿って考えれば、リスナーからは今曲の元ネタとして『寄生獣』を挙げる声も多い。尾崎の持つ文学的素養は今や大勢の知るところだが、彼自身はこれまでさまざまなマンガ作品に対して深い愛を見せてきた。そんな彼のマンガ愛も高じてか、直近のクリープハイプは「キケンナアソビ」や「ままごと」といった楽曲でのコラボによるマンガMVも実現させている。その動向には、“マンガ×音楽”の新たな可能性を拡大するユニーク性も秘めているかもしれない。

Souieba Kyoukara Bakemononinatta

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ムスタング」

 そんな“マンガ×音楽”の化学反応から生まれた曲を語るうえで、欠かせない重要作に触れて、本稿を締めようと思う。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「ムスタング」だ。彼らと縁深い作品は数多くあるが、おそらく多くのリスナーが真っ先に挙げるのは『ソラニン』(小学館)なのではないだろうか。浅野いにお原作の本マンガ実写化において、バンドがメインテーマとして作曲した同名曲「ソラニン」は、今や彼らの代表曲の一つでもある。しかし、そんなバンドと今作の縁を遡ると、その原点はマンガ実写化の約2年前、2008年リリースのミニアルバム『未だ見ぬ明日に』に収録された「ムスタング」だと言っていいだろう。後藤正文(Vo/Gt)はこの曲について、『ソラニン』に影響を受けて作ったことを公言。“マンガ×音楽”のジャンルを超えた相愛の結実が「ソラニン」という名曲を生んだのであれば、これこそが最も理想的なカルチャーの化学反応の結晶なのではないだろうか。

ASIAN KUNG-FU GENERATION 『ムスタング』

 絵と音。形こそ違えど、そのカルチャーの垣根を越えた、互いの創作に対するリスペクトから誕生した音楽。その背景にあるストーリーを知ることで、楽曲における視点は、より豊かに広がるはずだ。カルチャーの交流から生まれた楽曲の新たな聴き方にもなり得るのかもしれない。

※1:https://skream.jp/news/2026/02/indigo_la_end_kagura_mv.php
※2:https://columbia.jp/9mm/19thanniversary/report/report230809.html

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