「なきごとであり続けることを選びたい」ーー水上えみり、新体制となって守り抜く居場所 創意工夫から生まれる“革命”とは

「甘々吟味」で〈きっと大丈夫〉と歌えた理由
ーーでは新曲「甘々吟味」について伺いたいのですが、事前に聞いてた話によれば、この曲には高校時代のクラスでの思い出の風景が描かれてるんですよね。11月11日、授業を受けている時にひとりの女の子が買ってきたポッキーをクラス全員に配って、11時11分になったらみんなで「ポッキー ポッキー」と言いながら楽しく食べた……という出来事が元になっているとか。
水上:そうなんです!
ーーそのことも含めて、「ポッキー」CMキャンペーンソングとしてどのように取り掛かっていったのかを教えてもらえますか。
水上:チームで本当にいっぱい話し合って、メロディを何パターンも出しながら書いていきました。自分の曲作りの方法から見直して、結構メンタルやられるぐらいまで曲と向き合ったんですよ……。もともと私は詞先で書くんですけど、メロディから先に作るっていう不得意なことにもチャレンジしつつ、やっぱり今までの作り方が一番納得いくなって気づいたので、最終的には歌詞を書いてからメロディを作るっていうやり方にしました。聴く人が楽しい気持ちでポッキーを食べてほしいから、小気味いいサウンドにしたいなってまず思いつつ、今回ポッキーの味が変わったみたいなので、その印象を盛り込むために食べ比べもしてみて。カカオが新しくなったことでコクも出たなと思ったから、「じゃあ〈ビター〉とか〈スイート〉って言葉も入れてみる?」みたいに考えていったり。そしたらバンドやってた高校生活の楽しかった思い出と、そこに付随する苦しかったこと、家から出られなかった不登校の期間のことも思い出してきて。楽しいんだけど、楽しいだけじゃない楽曲をちゃんと作れたらいいなと思って書きました。

ーーポッキーを食べた時の楽しさとなきごとのアイデンティティを重ねるという点では、どのあたりに手応えがありますか。
水上:落ちサビからラスサビにかけてですかね。あの頃の辛かった自分に何か言ってあげられることはあるかなと考えた時に、やっぱり当時は何を言われても聞かなかったと思うんですよ。特に説教くさいことは響かなかった。だけど、私と“同じ目線”になって話してくれる人に対しては、すごく心を開けていたんじゃないかなって。当事者としてその目線に立って曲を作り続けてきたからこそ、書けた歌詞だと思います。
ーーその落ちサビ、〈小さな世界で/どうしようもなくて/でもきっと大丈夫〉という歌詞は曲の印象を左右する大事なパートになりましたね。
水上:そうなんです。〈きっと大丈夫〉っていう歌詞を入れるかどうか、最後まですごく迷いました。そもそも、この落ちサビのセクション自体を入れるかどうかもずっと悩んでいて。〈きっと大丈夫〉って、いきなり根拠ないじゃないですか。根拠のない「大丈夫」に救われたこともあるけど、それをこの曲で言っていいのかな、「大丈夫」の聞こえ方としてどうなのかなって不安になっちゃって。でも「この歌詞に救われる人がいると思う」ってチームのスタッフが背中を押してくれて、実際リリースしてみたらそう言ってくれるファンの人もいたから、落ちサビを入れてよかったと思いました。そこがあるからラスサビの〈世界の隅から飛び出せ〉も説教くさく聞こえない気がするし、大事なパートだなと思ってます。
ーー〈ビタースイートベイビー〉〈恋してプレッツェル/溶かしてチョコレート〉というフレーズも肝だなと思って。ポッキーって一見甘いお菓子に見えるけど、プレッツェルがあるからしょっぱい一面もあって、そのどちらとも言えない構造自体が〈ビタースイート〉な人生を歌っているなきごとと重なっているなと思ったんです。一見〈スイート〉な人生を送ってそうな人も〈ビター〉な経験をたくさんしてきているし、「甘々吟味」自体も楽しい思い出から幕を開けたかと思いきや、それだけじゃない人生を綴った曲だと思うので。さっきの言葉を借りると「めっちゃ人生」ですよね。
水上:ありがとうございます。いいですね、その説明使っていこうと思います(笑)。
ーーぜひ(笑)。
水上:実はGlicoの工場見学に行ったんですよ、課外授業みたいに。
ーーへえ!
水上:そこでGlicoが「創意工夫」という言葉を大切にしているって知ることができて。Glicoってハートの形をしているキャラメルから始まっていて、もともと甘いだけの嗜好品という概念だったお菓子にグリコーゲンを入れて、健康も意識したおやつを作ろうと言って生まれたみたいなんです。創意工夫の「創」ってただ作るだけじゃなくて、今までになかったものを“創る”という意味だから、まさに私たちアーティストも同じだなって。ライブでもただ泣き言を言うだけじゃなく、もやもやしていた感情の落としどころが見つかって、“その先”まで見えたらいいなと思ってやっているので。別に何かが解決しなくても、たわいもない飲み会で楽しい時間を過ごしただけで「なんか明日も頑張れる気がする」みたいな感覚にライブハウスでもなってほしいからこそ、“観に行った”だけじゃなくて、その人が持って帰った感情がすごく大事だなって思うんですよね。自分たちもそういったものを“創って”いきたいし、〈創造しようか革命讃歌〉も工場見学に行ってGlicoが考えてきたことを知ることができたから落とし込めたフレーズな気がします。そういうシンパシーを感じられたのは嬉しいですね。

ーー〈きっと大丈夫〉もそうでしたし、その〈創造しようか革命讃歌〉っていう歌詞も頭から曲を聴いていったら出てくる想像のつかない言葉だなと思ったんですけど、リスナーと目線を合わせているからこそ、すごく効いてくるフレーズだなとも思って。先ほどの「無理にならない程度に手を引っ張れる存在であれたら」という想いと近いのかなって思いました。
水上:そうですね。「手を引っ張る」ことにわりと消極的な思考を持っているんですけど、この曲だからこそ積極的になれたらってすごく思っていたので。〈世界の果てまで繋がれ〉とか、いつもの私だったら使わない前向きすぎる言葉、背中を押しているような言葉を書けたっていうのは、この曲で新しくできた創意工夫なのかなと思います。




















