ナオト・インティライミが歩んだ10年間 日出づる国のお祭り男、唯一無二の音楽性とキャラクター

ナオト・インティライミ、10年の歩み

 ナオト・インティライミから10周年を記念した2枚組ベストアルバム『The Best-10 th Anniveresary-』が届けられた。DISC-1「BEST」にはデビュー曲「カーニバる?」からはじまり、「ありったけのLove Song」「君に逢いたかった」「LIFE」などのヒットシングルに加え、新曲「たいせつな」も収録。DISC-2「MUST」には、ラテンの匂いをたっぷり注いだ「Ole!」、桜井和寿との共演による「Amor y sol with 桜井和寿」などコアな名曲やライブの定番曲などが収められ、まさに10年間の軌跡が詰まった作品となっている。本稿では、改めてナオトのキャリアを振り返り、人間的・音楽的な魅力を紐解いてみたい。

 ナオトを語るうえで欠かせないのは、やはり“世界各国・一人旅”(2003年〜2004年)というエピソード。じつはナオトは大学在学中にシンガーソングライターとしてメジャーデビューしているのだが、思うような結果が残せず、契約を切られた経験がある。もちろん彼の音楽人生にとっては大きな挫折だが、その状況を自ら打ち破り、夢である世界ツアーを実現すべく飛び込んだのが“世界各国・一人旅”だったのだ。訪れた国は香港、エジプト、スペイン、アルゼンチン、ペルー、キューバ、アメリカなど28カ国。ブラジルで地元テレビ局が主宰するフェスに出演、パレスティナではアラファト議長の前で「上を向いて歩こう」を歌い、平和について語り合うなど、音楽(とサッカー)で世界中の人々と繋がってきたナオト。彼のコミュニケーション能力の高さ、そして、どんな状況であっても人を楽しませることができる人間力はそのまま、アーティストとしての最大の武器となった。

 帰国後は自らのソロ活動のほか、Mr.Childrenのツアー『Mr.Children DOME TOUR 2009 SUPERMARKET FANTASY』にコーラス&ギターとして参加したことをきっかけに知名度を上げ、翌2010年に「カー二バる?」でメジャーデビューを果たした。さらにシングル「タカラモノ〜この声がなくなるまで〜」「今のキミを忘れない」が100万ダウンロードを超えるヒットを記録。2012年リリースの3rdアルバム『風歌キャラバン』がオリコンウィークリーランキングで1位を獲得するなど、瞬く間にブレイクを果たした。

ナオト・インティライミ「カーニバる?」Music Video

 デビュー当初のシングル曲は、リスナーの感情に寄り添うようなバラード、ミディアムナンバーが中心。シングルのカップリング曲、アルバムの収録曲には、ラテンを軸にしたワールドミュージックーーそれはもちろん、ナオト自身が世界各国で体感してきた音楽だーーを取り入れた楽曲も多く、作品を重ねるにつれて音楽的な幅を広げてきた。また、ライブにおいては“インティライミ”(南米インカの言葉で”太陽の祭り”)という名前通りの解放感、そして、すべての観客に対する丁寧なホスピタリティを発揮。会場の規模もツアーのたびに大きくなり、2015年には京セラドーム(大阪)で4万人ライブを成功させた。

 アーティストとしての挫折、そして、世界旅行での経験を糧に、日本の音楽シーンで確固たるポジションを手にしたナオトだが、2017年に転機が訪れた。すべての活動を止めて、音楽との向き合い方を取り戻すべく、自分の原点に戻るための旅に出たのだ。移り変わりの激しい音楽業界のなかで、半年も活動を停止することはリスクも大きい。それでも彼が旅に出た理由は、“このままアウトプットを続ければ、消耗するばかりだし、いつか飽きられる。今こそインプットが必要だ”という直感だった。

 訪れた国は半年で20カ国。最初の国・モザンビークでいきなり現地のフェスに飛び入りし、タンザニアではアフリカのアーティストが集まる大型フェスを経験。さらにアフリカの伝統楽器に触れ、東欧のジプシー・ミュージシャンとセッションを行い、最後に訪れたアメリカのLAではスタジオワークの日々。新たな刺激と好奇心に満ちた日々を送ったナオトは、2017年7月10日の“ナオトの日”ライブから活動を再開させた。

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