DEUXのAIによる奇跡の帰還から、RIIZEと美術館のコラボまで――韓国トレンドレポート 2025年12月号
K-POPや韓国ドラマにとどまらず、2025年の韓国カルチャーはアート、ファッション、フード、ストリートまで多彩な分野を横断し、グローバルでの存在感をさらに強めている。この連載では音楽・ファッション・食が交差する“今”の韓国を毎月スナップしていく。
11月の動きを追う今月号では、AI技術によって28年ぶりの新曲発表を成し遂げた伝説的デュオ・DEUXの帰還、RIIZEが一民美術館とともに行った異例の現代美術展、YENAと初音ミクによる次元を超えた共演、eスポーツ界の歴史を塗り替えたT1の3連覇、そして『第46回青龍映画賞』授賞式で大きな話題をさらったHWASAとパク・ジョンミンの特別なステージまで、注目の5トピックを通して韓国カルチャーの最前線を読み解く。
DEUX、AI技術が架橋する時空を超えた帰還「Rise」
1990年代、韓国の若者たちにヒップホップとニュージャックスウィングという新たな音楽的言語を根付かせ、今までも繋がる影響力を与えた伝説的デュオ・DEUX。イ・ヒョンドと1995年に急逝したキム・ソンジェによるこのユニットは、音楽のみならず、ファッションからライフスタイルに至るまで、文化全般に“新世代の美学”を鮮烈に刻み込んだ存在だった。人気絶頂の1995年、突如の解散とキム・ソンジェの急逝により活動が途絶えていたが、その伝説が11月27日にAIという翼を得て新曲「Rise」とともに、時を超えて劇的な帰還を果たした。
イ・ヒョンドの総指揮のもと、AIの復元技術を用いて帰還したキム・ソンジェの歌声と姿は、ソウル・光化門の世宗文化会館とKTスクエアの大型メディアファサードを通じて2025年の夜景に顕現した。ここに世界的ダンススタジオ・1MILLION DANCE STUDIOが、「もし90年代に活動が続いていたら」という楽曲制作の根幹となった想像力を振り付けで具現化。この視聴覚体験は、来年リリースが予定される4thアルバムへの期待を増幅させる狼煙となった。
28年ぶりの新曲を公開する現場には、H.O.T.のKANGTAやラッパーのPaloalto、日本からはMIYAVIらも駆けつけた。スクリーンにキム・ソンジェが登場すると歓声が上がり、その後にYouTubeでMVのコメント欄には追憶と感激のコメントが殺到している。〈시간을 넘어 영원으로/나의 꿈을 지켜낼 거야〉(時間を超えて永遠へ/僕の夢を守り抜く)という歌詞通り、DEUXという偉大な遺産はテクノロジーを通じて歴史から目覚め、K-POPに新たな地平を開く実験的モデルを提示した。
RIIZE、一民美術館でK-POPの成長譚を展示する
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ボーイズグループのRIIZEが、ソウル・光化門にある一民美術館で大型企画展を開催した。1920年代に建てられた旧・東亜日報社屋を活用した同館は、韓国の近現代視覚文化を扱う際の代表的な美術館だ。今回、同館がK-POPアーティストを単独テーマに選び、全フロアを使用した大規模な企画展を開催するのは、開館以来初の試みとなる。
『Silence: Inside the Fame 고요와 파동』(『Silence: Inside the Fame 静寂と波動』)と題された本展は、RIIZEがデビューから掲げてきた“成長”と“実現”のプロセスをアートの文脈で再構成したものだ。2025年5月に発売された1stフルアルバム『ODYSSEY』のテーマとも連動し、内面的な成長への航海を経て、名声の中で感じる静寂な波動を視覚化した。会場には、イギリス・ロンドンの邸宅で撮影された写真作品や、メンバーの肖像を用いたメディアアート、そして現代美術家のコ・ヨソンがメンバーそれぞれの特徴を解釈して制作したオブジェなどが設置された。メンバーたちが“愛”や“認定欲求”、“不安”といった内面的な主題について語るモノローグ映像も上映され、華やかなイメージの裏側にある等身大のリアリティを記録した。
本展示は11月16日から30日までの15日間行われ、累計約1万4000人の観客を動員した。全日程が事前予約制で運営されたが、チケット販売開始直後に全回完売を記録し、高い関心を証明。今回の企画はK-POPのIPが“展示芸術”としても十分に機能することを示す実証的な事例となった。
YENAと初音ミク、国境と次元を超えたコラボレーション
K-POPシーンで独自の地位を築くYENAが、初音ミクとのコラボ曲「STAR!」をリリースした。IZ*ONE出身のYENAは「NEMONEMO」などで見せた徹底したコンセプト構成とその消化力が評価され、今回の共演も「彼女だからこそ似合う」と熱狂的に迎えられた。
新曲公開の直後、ソウルでは韓国初の『HATSUNE MIKU EXPO 2025 ASIA』が大盛況となり、その熱気と共に楽曲も注目された。弾けるピアノとシンセが融合したエレクトロニック・ダンスポップで、YENAのユニークな歌声とミクが絶妙なアンサンブルを奏でる。AdoもInstagramストーリーズで「KPOPとボカロがつながるのうれしい」と絶賛していた。現実と仮想を溶解させるサウンドが反響を呼んでいる。
MVではサイバーパンクな背景をバックに二人がダンスを披露し、YENAがミクの象徴である「ネギ」型のステッキを実体化させて手にする演出も話題だ。ダンスチャレンジにはPLAVEやISEGYE IDOLら人気バーチャルアイドルも続々と参加。リアルとバーチャルが入り乱れる様子は、まさに“メタバース時代のK-POP”を象徴する光景となった。























