King & Princeがたどり着いた新しい表現方法、手にした新しい表情 アルバム『STARRING』先行視聴レビュー

King & Prince『STARRING』先行レビュー

 12月24日に発売となるKing & Princeのアルバム『STARRING』。発売に先駆け、マスコミ向けの先行視聴会が行われた。

 前作『Re:ERA』に続き、コンセプト盤となる今作のテーマは“映画”。収録曲を架空の映画の主題歌に見立て、特報映像やポスターまでもが用意された、文字通りの意欲作だ。音楽と映像、ビジュアルと多面的に楽しめる仕掛けが施されている。発売前にもかかわらずリード曲「Theater」のSNSでの総再生回数は、すでに1億回を超えており、幅広く期待と注目を集めている。

 まず上映されたのは、「Theater」のMVのフルバージョン。同曲は「moooove!!」に続いてAyumu Imazuによるファンキーなダンスナンバー。リード曲、そして1曲目ということもあり、アルバムのコンセプトを強烈に示す、勢いのある楽曲だ。

King & Prince「Theater」MV

 クラシカルで不思議な映画館に誘われるようなオープニングは、アルバムの幕開けにふさわしく、観る者を引き込む力があった。随所にビートが効いたダンスシーンが差し込まれており、楽曲の展開と同様に映像でも惹きつける。MVの後半には、収録曲が主題歌として設定されている架空の映画のワンシーンが次々に映し出され、“映画”という言葉から連想されるさまざまなジャンルの映像美が、怒涛のように詰め込まれていた。

 このMVは、過去最多のシチュエーション数、最多の撮影日数で制作され、King & Princeのふたりも最高傑作と自負する作品とのことだが、全体のアートワーク、細かいディティール、パフォーマンス――すべてにおいて強いこだわりが感じられる。

 今作に収録されるのは、全12曲。シングル曲「HEART」、「What We Got ~奇跡はきみと~」「I Know」に、『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)で話題となった50TAによる「希望の丘」、いきものがかり・水野良樹提供の「4月1日」、King & Princeに2度目の楽曲提供となったTempalay・小原綾斗による「だんだん」、eillによる永瀬廉のソロ曲「Darling」、これまでにも数々の楽曲を提供しているBBY NABE、Matt Cabによる新曲など、豪華アーティストが名を連ねた。さらには髙橋海人自らの作詞作曲と、バラエティ豊かな楽曲が揃っている。ポップソング、バラード、ダンスナンバー、R&Bと、ファンのみならず音楽好きにも刺さるようなコアなサウンドまで、断片的とはいえ、アルバムの充実度が窺えた。

 特筆すべきは、会の最後に披露された特報映像。「Starring盤」に収録される特典映像で、全12曲中、「Theater」を除く11曲において制作された力作だ。

King & Prince『STARRING』

 King & Princeのふたりがそれぞれ優れた役者であることが活きた映像の数々。「Theater」のMVでもポイントポイントに使用されていた特報映像だが、一つひとつのクオリティも凄まじいものだった。

 まず、青春映画、サイバーパンク、サスペンス、ホラー、ラブストーリーと、ありとあらゆる映画ジャンルを網羅したラインナップに唸らされた。そして個性的なキャラクター設定はもちろんのこと、ふたりが織りなす双子、親友、バディ、ライバル……と多彩な関係性は観ているだけで楽しく、多くのファンに驚きと喜びをもたらすものだと思う。そして、特報映像らしくテンポよく展開するムービーのなかで、楽曲や歌詞の空気感とストーリーの相互関係が次々と提示されていく様は圧巻だった。

 たとえば、「HEART」を主題歌とした『MODERN LOVE』は、シックでキュートな印象的だった「HEART」のMVとはまた違う印象の“作品”だった。ビビッドな色味や映像の奥行きは、ところどころにソフィア・コッポラやウェス・アンダーソンを彷彿とさせるポップさとソリッドなテイストがあった。享楽的なシーンとふたりだけのシーンのギャップ、そしてテンポよく交わされる恋愛にまつわるセリフのなかにはヒリヒリとする瞬間まで描かれていて、歌詞の世界を一歩発展させるとこんな映画になるのか、という新たな発見があった。映画をモチーフにした楽曲「MEET CUTE」を主題歌に設定した『ROOFTOP PICNICS』は、広がる空と楽器を奏でる彼らの対比がスタイリッシュ。青春の1ページを覗き見たような一瞬が美しく、話の内容が気になってしまう。

 ほかにもミステリアスなシチュエーションと永瀬、髙橋のキャラが引き立っていた「sunset」を主題歌とした『君が誰で、僕が誰でも』、「4月1日」と同名の『4月1日』、コミカルなテンポ感が映画本編の期待を煽る「希望の丘」を主題歌にした『雷藤兄弟』、単なるホラーやアクションにとどまらないエッジの効いた『Home,Stupid Home』『The DOOMER』など、King & Princeだからこそ実現できるさまざまな表現の可能性の大きさを感じさせる映像群だ。

King & Prince『STARRING』
『STARRING』

 一方、ソロ曲の映像は、個々の特色と魅力が色濃く出ていた。永瀬のソロ曲「Darling」は、永瀬の持つ声質や空気感にぴったりのラブソング。『HARUKA 記憶の中のあなた』という映画のタイトル、切なさのあるラブストーリー、二役の演技と、ファンならずとも永瀬廉という俳優で観てみたいと思わされる要素が満載だ。役の演じ分けが一瞬の表情でキャッチできる。パブリックイメージと親和性が高いにもかかわらず、これまであまり見たことのない表情が印象深い。

 髙橋の「this time」は、彼自身の作詞作曲能力の高さを示す楽曲。『Flankly, My Dear』と銘打たれた映像のほうは、終始笑顔の明るい雰囲気、そして「何らかの秘密がありそう」という髙橋の持つムードにも合った、ノスタルジックなモノクロ映像が美しい。軽やかなダンスステップ、そしてファンタジー要素が心地好く、こちらも思わず「全編を通して観てみたい」と思ってしまう作品だった。

 もちろんディズニーキャラクターたちとのダンスシーンが胸躍る「What We Got ~奇跡はきみと~」は、まさにディズニー映画の予告編そのものだったし、11作すべて、洋画から邦画まであらゆる異なるテイストが詰め込まれていた。架空の映画ではあるが、「この映画、観に行きたいな」「続きが気になる!」とついついありもしない公開日を楽しみにしてしまうようなクオリティで、ふたりのセルフプロデュース能力と、それを実現するチームの実力に驚かされた。

 会場には、リード曲「Theater」のMVで使用された小道具や衣装、また解禁されるたびに大きな話題となった各楽曲に合わせて制作された映画風ポスターがずらりと並んでいた。さらにロゴ入りのカップに入ったポップコーンとコーヒーがサービスされるなど、隅々にまでアルバムの世界観が反映されていた。King & Prince、そしてチームがひとつの作品に対し熱意を持って創造力を発揮していることがこんなところからも感じられた。

King & Prince『STARRING』
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King & Prince『STARRING』
King & Prince『STARRING』
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 前作『Re:ERA』でもそれまでとは違う角度から永瀬と髙橋のさまざまな表情を見ることができたが、『STARRING』もKing & Princeの新しい魅力を随所に発見できるアルバムだと確信した。アルバムの完成形を隅々まで聴いた時に、どんな景色が広がり、そこにどんな思いを抱くのだろうか? 12月24日のリリースを楽しみに待ちたいと思う。

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