King & Princeの芸術性の高まりを観た――花火と楽曲、ふたつの音の狭間で遊ぶエンターテインメントの進化

King & Princeの芸術と『うちあげ花火』

 King & Princeの音楽と花火がシンクロするダイナミックエンターテインメント『King & Princeとうちあげ花火 2025』が11月15日、16日に千葉・ZOZOマリンスタジアムで行われた。音楽と花火、そしてKibg & Princeのパフォーマンスとともに楽しむこのイベントは、昨年デビュー5周年イヤーを記念して初めて開催。それがパワーアップして、今年も開催された。

 11月16日。開演前には、マスコミを集めての囲み取材が行われた。2回目の開催にあたって気持ちを聞かれた永瀬廉は、「“花火”という嫌いな人がいないようなイベントを、ファンの方々と、なおかつ冬のこの時期にやれることが嬉しい。我々自身も『毎年やりたいね』って言っていたくらい去年楽しかったので、今年もこうやって開催できるのがすごく嬉しいです」と笑顔で語った。

『King & Princeとうちあげ花火 2025』
永瀬廉&髙橋海人

 髙橋海人は「めちゃくちゃ幸せです。去年たくさんのファンのみんなと(花火を見ることで)同じ方向を向くことができて、これが新鮮で。みんなも同じ気持ちなんだろうなと思うことが嬉しくて。2回目、また同じ場所で千葉に来られて、天気もよく、前回よりもパワーアップしたものがいっぱいあって。King & Princeを語るうえで(花火は)特別なイベントになってきてるなと実感してます」と感慨深げだ。

 去年からの進化を問われると、髙橋は「ステージにおいては、冬に開催するということで冬ならではの音楽、業界の先輩の楽曲をカバーさせていただいたりして、去年はできなかったことをやったり。『うちあげ花火だからこそできるよね!』ということを、たくさん詰め込みました」と、この季節に行う花火イベントならではの工夫を語った。

『King & Princeとうちあげ花火 2025』

 去年同様にスタジアム周辺には、イベントが行われるDJエリア、キッチンカー、フォトスポットなどが用意されており、こちらもパワーアップ。「屋台の台数が増えたり、『MYうちわFes』でみんながデコレーションして持ってきてくれたうちわを見て、『うわあ、すげえ!』って思ったり」「それから『ティアラFes』。ファンの方々がKing & Princeの楽曲をワンコーラス歌って盛り上がろうというイベント。動画を観せていただいたんですけど、すごく盛り上がっていて、今日も『Funk it Up』を男子が歌ってくれていたりして。(そういうものは)ファンの方々もなかなかできない体験だと思うし、このイベントのいいところだと思うので、今後もいろんな進化を見せていけたらなと思います」と、ファンも参加できるこのイベントを今後も盛り上げていきたいと語る。

 12月24日発売の7thアルバム『STARRING』についても尋ねられると、「前回のアルバム『Re:ERA』(2024年リリース)は世界観重視で作って、総合エンターテインメントとしてたくさんのコンテンツをファンのみんなに楽しんでいただけた。だから、『Re:ERA』を超えてやろうぜってことで、『Re:ERA』の制作活動が終わって、すぐに(チームの)みんなで『次のアルバム何にする?』と取り掛かって。総制作時間も1年以上かけた。アルバムに対しての稼働、撮影日数も過去最高の時間をかけた作品になっているんじゃないかなと思っています」と髙橋が熱を込めて語る。

 今回のイベントで初解禁されるアルバム表題曲「Theater」について、永瀬は「海人が言ってくれたとおり、King & Prince史上最高に時間も労力もかけて、アイデアも想いも込めたアルバム。その作品の表題曲なので、いろんな力を込めたんです。MVも3日くらい撮影して、それも最長だし、今まででいちばんスケールのデカい作品の表題曲、いちばんスケールのデカいMVになっている。曲も楽しんでもらえるし、MVもダンスも。いろんな楽しみ方ができると思います」と楽曲への自信を窺わせた。

『King & Princeとうちあげ花火 2025』

 まだ明るさを残したZOZOマリンスタジアム。開演を待ち望むTiara(ファンの呼称)のコールと手拍子で高揚した空気のなか、照明が落ちるといよいよイベントが始まる。オープニングはふたりのパフォーマンスからスタートした。

 メインステージのポップアップから浴衣姿のふたりが登場。1曲目は「HEART」だ。煌めきに満ちたダンスパフォーマンスと笑顔で、イベントの幕開けを飾る。「最高の思い出、作れますか?」と呼びかけると、Tiaraも大声でそれに応えた。続いて「なにもの」「My Love Song」と楽曲を披露。トロッコで左右に分かれると、Tiaraとのコミュニケーションを楽しみながら後方へ移動していく。

 後方ステージに置かれたベンチに座り、『ティアラFes』に参加した男性Tiaraの感想を尋ねたりなど和やかに交流をしたあとは、いよいよ花火の時間だ。カウントダウンの数字がモニターに映し出されると、会場の期待が高まっていく。髙橋が「(カウントダウンの0の部分を)『よいしょー!』にしよう」と決めると、会場がひとつとなって声を合わせ、カウントダウンスタート。「よいしょー!」の声に合わせて、ついに花火が打ちあがった。

 最初は、6thアルバム『Re:ERA』からの選曲。「LOVE HACKER」「Odyssey」といったアルバムを象徴する楽曲に加え、「POPSTAR in the KINGDOM」「染み」と、ソロ曲や異色の人気曲「Harajuku」も組み合わさり、アルバムの世界観を音と花火で堪能できるブロックだ。

 『Re:ERA』のジャケットを思わせるようなカラフルな色彩の花火が眼前に交差していく。ビートにあわせ、各曲の華やかさや、エモーショナルさ、キッチュでポップな世界観まで花火に反映されていた。それぞれの曲のつなぎ目で、永瀬と髙橋は観客とともに声を上げたり、「いいねー!」と感嘆の声を溢したりと、全力で花火を楽しんでいる様子も垣間見られた。

『King & Princeとうちあげ花火 2025』

 幕間映像では、ツアー『King & Prince LIVE TOUR 24-25 ~Re:ERA~ in DOME』でも登場した“城之内くんとたけやん”が登場。「Harajuku」の世界観にあわせ、永瀬と髙橋が扮したキャラクターだが、ふたりの織りなすシュールな会話と独特の空気に、会場からも笑い声が起こる。

 続いてのブロックは“Danceムード”選曲。「I Know」「Namae Oshiete」「moooove!!」「Spark and Spark」「I MY ME MINE」とさまざまなタイプのダンス楽曲が連なる。言葉を畳みかけるようなリズムで花火が舞い、特に強いベース音が効いた楽曲などは花火の破裂音とのシンクロが全身に響き渡る。

 今回のイベントの目玉のひとつとなったのは、“冬に聴きたくなる曲”と“今までしたことのないチャレンジ”というテーマのもとに行われた、弾き語りMCコーナーだ。この日はback number「ヒロイン」をカバー。ファルセットを駆使した、永瀬と髙橋、ふたりの声の相性のよさ、美しさを堪能できるエモーショナルでロマンチックなカバーとなった。歌い出しを失敗してしまったという髙橋は、やり直しを希望し、アカペラで一節を披露。その力の入れように「本気だ!」と永瀬が驚くなど、和やかなトークが繰り広げられる。「ヒロイン」の選曲は永瀬によるものだという(前日の公演では桑田佳祐「白い恋人達」のカバーを披露したそう)。次に披露したのは、ふたり曰く「しっとりバージョン」となったアコースティックアレンジの「I promise」だ。ここでも美しいハーモニーで聴かせ、会場中が優しいムードに包まれた。「ちょっとでもあったかくなってくれましたか?」と客席に呼びかけると、拍手と歓声が巻き起こる。

 引き続いての花火も、「Winter Love Story」「Happy Holy Night」「Little Christmas」「I promise」「君とメリークリスマス」といったウィンターソングで固められた。赤や緑のクリスマスカラーの花火をはじめ、雪や冬の星座を思わせる白い光が夜空から降り注ぎ、夏の花火とはひと味違う季節感たっぷりのロマンチックなブロックである。

 12月発売のアルバム『STARRING』のアルバムロゴがモニターに映し出されたかと思えば、不思議な映画館から招待状が送られるというコンセプトフィルムが展開されていく。アルバムのリード曲である新曲「Theater」には驚きの歓声が上がり、リズムにぴったりとあわさって次々と花火が打ち上げられていく。どこよりも早く花火とともに新曲を体感できる、贅沢で強烈な体験となった。

『King & Princeとうちあげ花火 2025』

 ふたりは、冬らしいベージュや黒といったシックな衣装に身を包み、再び登場。後方ステージに用意されたこたつのセットに入り、「本当にハンパないことになってる!」
「夜なのに空が明るかったね」と、リリース前の新曲をいち早く花火と一緒に届けられた喜びを語る。しかし、カバーコーナーの歌い出し失敗の件を「もう一回」とやり直し。さらには前日に披露したカバー曲「白い恋人達」の一節も歌うなど、笑いを交えつつ、遊び心満載にTiaraを喜ばせた。

 いよいよ花火も最後のブロック。「シンデレラガール」「Funk it up」「君に届け」「High On Love!」「僕の好きな人」「Lovin' you」「君がいる世界」と、King & Princeの歩み、音楽性の幅広さ、そして変わらないスタンスを再確認するような構成の楽曲だ。スタジアムの上空は見渡す限り光で埋め尽くされ、この瞬間にしか味わえない音と光と振動が会場を包み込む。瞳に移る花火の光と、真剣なふたりのまなざしからは、音楽への深い愛情、ファンへの熱い気持ち……あらゆる大切な想いが見て取れるようだった。「ハッピーにも感傷的にもなれる」「感傷に浸っちゃう」「花火が音楽に寄り添ってくれている」と感想を語り合う姿も印象深い。

 最後は、ふたりのパフォーマンスブロックだ。トロッコに乗り込み「What We Got 〜奇跡はきみと〜」を歌いながら、終始手を振り、さまざまなポーズを取ってTiaraのうちわを通してのリクエストに応えていく。続く「WOW」でメインステージに到着すると、ふたりの背後に大きな花火が再度打ちあがった。花火の音と楽曲、ふたつの音のあいだで遊ぶようにして楽しむの姿は、『King & Princeとうちあげ花火』を象徴するようなワンシーンだ。「ありがとう」「また遊ぼう」の言葉とともに笑顔で手を振り、ステージからふたりの姿が消え、イベントは終了した。

 今年の花火は昨年と比べ、楽曲やアルバムのコンセプトを忠実に花火として再現させる芸術性に加え、より身近に彼らを感じられるステージ構成となっていた。これは、King & Princeの作り出す作品が緻密な計算のうえに成り立つコンセプチュアルな作品が近年多いにもかかわらず、ふたりの醸し出す個性やファンとの関係性によって高い温度感を保っていることがそのまま反映されているように思えた。それはつまり、“King & Prrince”と“音楽”、“King & Prrince”と“Tiara”の結びつきの強さを、花火という形で打ちあげているということだ。

 冬の匂いの混じった野外、2日間で6万人を動員した大きなイベントでありながら、あたたかさとアットホームな優しい雰囲気に満ちていた。それはKing & PrinceがTiaraと過ごす一瞬一瞬を何よりも大切に想っている証拠でもある。今後のイベント開催にも意欲を見せたKing & Prince。次はどんな光と音で思い出を紡いでいくのだろうか――。

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