King & Prince、5年の軌跡を背負ったふたりが伝えた覚悟と希望 再出発のツアーを観て

King & Prince、再出発のツアー

 新体制となって、ふたりで作り上げた全国アリーナツアー『King & Prince LIVE TOUR 2023 ~ピース~』。このツアーの意味は、「My Love Song」から始まり、「Magic of Love」、「koi-wazurai」、「恋降る月夜に君想ふ」、「Happy ever after」を歌い、本編の締め括りに「シンデレラガール」を選び、再びアンコールでステージに上がり、ふたりの始まりの曲「なにもの」が未来へ届くように祈り歌われる――そうして永瀬廉と髙橋海人によるKing & Princeが歌い紡ぐ2時間10分という時間、そのものなのだと思う。より正確に言うのであれば、出会いや再会、もしくは別れ、そのすべてを愛すること、一緒にいた時間から逃げないということ。その覚悟と信念を信じたいとあらためて感じさせ、希望を教えてくれるのが『King & Prince LIVE TOUR 2023 ~ピース~』だ。

 10月22日13時。定刻に客電が落ち、暗くなったKアリーナ横浜。12公演目。ちょうどツアーの折り返し地点だ。スクリーンに映し出されたオープニング映像を経て、登場した永瀬と髙橋。彼らが1曲目に選んだのは「My Love Song」だった。薄い黄色のシャツに白基調のジャケット、永瀬と髙橋それぞれのペンライトカラーで彩られた衣装を着たふたりによって、ふたりによるラブソングが大切に歌われていく。永瀬が「『King & Prince LIVE TOUR 2023 ~ピース~』へようこそ!」とツアータイトルを告げ、髙橋が「楽しんでいこうぜ!」と続けて叫ぶ。2曲目「Magic of Love」で客席へ手を振り、一人ひとりと目を合わせるようにして花道を歩き、アリーナ後方に位置するサブステージへと向かっていく彼ら。ユニゾンで高らかに歌われる「koi-wazurai」の冒頭を経て、永瀬と髙橋は笑いながら目を合わせ、肩を揺らす振り付けをこなす。たった3秒ほどの時間だったと思う。けれど、今の彼らの絆――と言うとどうしても軽く聞こえてしまうのだが――ふたりを結びつける温度が直に伝わってきた瞬間だった。

 花道の途中に設置されたリフトに乗り、3階、5階、7階席へと一気に近づき、目の高さを合わせながら歌われたのは「恋降る月夜に君想ふ」。リフトを降りてメインステージへと戻り、髙橋の「最後までみんなで幸せな、ピースな時間を過ごしましょう、よろしく!」という声が飛んでいく。それに応える形で会場に響いた拍手と歓声を受け止め、ふたりはステージを一度後にしたのだった。

King & Prince 永瀬廉 ツアー ピース ライブレポ 『King & Prince LIVE TOUR 2023 ~ピース~』 Kアリーナ横浜 10月22日 3日目
永瀬廉

 永瀬と髙橋がステージへと戻ってくるまでのあいだ、オープニングからここまでの時間を振り返ってみると、「ああ、そういうことか」と思った。〈「愛してる」って歌うから/僕のすべてで伝えるよ〉という使命が、オープニングを飾った1曲目の「My Love Song」ですでに歌われていたのだ。つまり、この日、この時間に自分たちが何を伝えるのかという宣言を、ふたりはいちばん最初にしていたということだ。〈飾らない〉本音を共有し、〈どんな遠く離れてても 想いが届きますように〉と思いながら過去も未来も全部を抱いて、〈時は流れてくけど 気持ち変わらずに〉と巡り会えたことに感謝し、〈いつもの笑顔でやっと会えたね〉と出会い/再会を喜び、〈Can we be happy?〉なんて少し怖がりながらも、その想いを100%で伝える。King & Princeが自分たち自身に「自分たちが歌い続けたラブソングとは、自分たちが伝えてきたこととは一体何だったのか」という問いかけをしながら、これまでの楽曲で歌われてきた視点とメッセージが、それぞれの本当の一人称だったのだと気づく。その気づきを手にした今、ツアーを通してこの日、この時間に結んでいこうとしているのは、一対一という本物の関係性なのだと思った。

 ファンタジックなサウンドで象られた「静寂のパレード」でアリーナ後方からトロッコに乗り、再び姿を現した永瀬と髙橋。センターステージでは、本ツアーのバックを務める7 MEN 侍の6人がフラッグを手に、ダンサーと共に楽曲を彩る。メインステージへ降り立ち、「That's Entertainment」で目まぐるしく展開されていくパフォーマンス。曲中、髙橋から永瀬へと繋がれたダンスタイムを経て、永瀬がニヤリとしながら「いっちょ咲かせてやりましょー!」と歌い叫ぶ。

 ステージを7 MEN 侍に任せ、自分たちは天井にごく近い位置まで上がり切ったゴンドラから「Super Duper Crazy」を弾き飛ばしたメンバー。この曲のサビで、彼らは客席と一緒になって腕を回すのだが、いちばん高くまで上がったゴンドラは、その動きにあわせて当然大きく揺れるわけである。たぶん、すごく怖いと思う。それでも手を振り、腕を回すことをやめない。

 前日の公演を観に来ていたという髙橋の父親(メンバー曰く「リアルビッグダディ」)のエピソードを経て、少し肌寒い気温だったのにも関わらず半袖短パンでこの日会場入りした髙橋、“オシャレが楽しい季節”の永瀬なりのファッション観、目前に迫ったハロウィンにまつわる思い出、前日に髙橋がInstagramにアップした永瀬が鎖骨の窪みに水を溜めて作った“永瀬湖”について……ツアーも中盤を迎え、朗らかな表情で楽しくお喋りをするふたりの周りには、とても安心できる空気が巡っていた。

 最新アルバムとなる『ピース』には、永瀬と髙橋、それぞれのソロ曲が収録されている。まずひとつは、髙橋による「ワレワレハコイビトドウシダ」。クリープハイプ・尾崎世界観が作詞作曲を手掛けたこの曲は、7 MEN 侍のメンバーがバックバンドとして楽器を奏で、パフォーマンスされた。白いシャツにデニムを合わせ、スタンドマイクに手をかけて歌う髙橋は、まさしくフロントマンのそれだ。不器用に、だけれど歌詞にあるアンバランスな言葉一つひとつを丁寧にメロディに乗せて歌う姿は、どこまでも正直だった。

King & Prince 高橋海人 髙橋海人 ツアー ピース ライブレポ 『King & Prince LIVE TOUR 2023 ~ピース~』 Kアリーナ横浜 10月22日 3日目
髙橋海人

 「Kiss & Kill」、さらに続けられた「TLConnection」では、グループとして初めてツアーで使用したというレーザー照明が会場を埋め尽くし、艶やかな赤色に染まる。EDM調の不穏な空気をまとったサウンドの上で展開されていくのは、彼らが24歳のひとりの表現者、ひとりの青年として日々を過ごし、歳を重ねてきたからこそ手にしたパフォーマンス。その時間を思うと、やはりどこかエモーショナルな気持ちになってしまう。

 髙橋にジャケットを着せてもらい、7 MEN 侍によるバンドを背に、スタンドマイクの前に立った永瀬。アルバム『ピース』に収められたもうひとつのソロ曲、永瀬による「きみいろ」だ。永瀬の声は、落ち着きがあって、どこか高いところで鳴っていて、すごくいい声だと思う。その声で歌われた「きみいろ」は、とても近くにあるように思えた。永瀬の声の優しい温度がここまでダイレクトに伝わるのは、彼自身が「届けよう」と切実に願い、歌っているということだ。

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