YRD Leo、活動5年で確立した自身のカラー JAGGLA、dodoら参加の最新アルバムに溢れるオリジナリティ

YRD Leoが確立した自身のカラー

 大阪府出身、1999年4月20日生まれの26歳。ラッパー/シンガーのYRD Leoが12月10日、自身初となるフルアルバム『COLORFUL』をリリースした。

 2019年11月、YouTubeにてMV「Model」を公開したところから音楽活動を本格化させたYRD Leo。同楽曲のほか、2021年9月リリースの「Bye」など、これまでに数々の作品がSNSで拡散されスマッシュヒットに。Z世代を中心層として、確かな人気を集めている。

 待望のフルレングスとなった今作には、地元の大先輩にあたるJAGGLAをはじめ、dodo、テークエムといった異色の顔ぶれが客演参加。この並びに加えて、ラッパー/シンガーの枠をボーダレスに飛び越える、優しさや切なさの同居した歌声などを意味して、タイトルには“COLORFUL”を掲げたという。

 リアルサウンドでは今回、アルバム収録曲の制作エピソードはもちろん、自身のルーツミュージックから、JAGGLAとの制作を経て進化したリリックの書き方。さらにはそこで模索した“新たな自分らしさ”まで、YRD Leoにたっぷりと語ってもらった。(whole lotta styles)

KANDYTOWNが自身のルーツに 「ここまで音楽にのめり込むとは思っていなかった」

ーー今年1月、YRD Leoとして活動5周年を迎えました。

YRD Leo:この5年間、すごく濃かったです。ワーナーミュージック・ジャパンさんとも契約できて、応援してくれるみんなには順風満帆な印象に映っているのかなと。でも、日単位でフォーカスすると、しんどいときもそこそこ多かったですね。

ーー今年で26歳。これまでの人生で換算すると、5分の1を音楽に捧げてきたに等しくなります。

YRD Leo:そうなんですよ。もともとは高校生の頃、友だちと遊びでDJを始めたのがきっかけだったのに。というか、最初はラップに対しても遊び感覚でした。好きなときに好きな曲を書こう……なんて思っていたら、キャリア2曲目の「Model」がTikTokで一気にバズって。あの頃は、ここまで音楽にのめり込むとは思っていなかったです。そこから年齢を重ねて、色々なことを考えて、たくさんの方が関わってくれるようにもなって。責任感というか、一つひとつの作品をちゃんと作っていきたいと改めて思います。

ーーそもそも、ヒップホップと出会ったきっかけは?

YRD Leo:KANDYTOWNでした。もうドンピシャで世代(笑)。もっと掘り下げると、高校時代にSuchmosに少しだけハマっていて。すると同じ時期に、彼らがKANDYTOWNのRyohuさんを迎えた楽曲をリリースしたんですよね。

ーー「GIRL feat.呂布」ですかね。

YRD Leo:それです! あの曲に始まって、普通の高校生だったところからヒップホップに感化されるようになり。それこそ当時、僕は野球、プロデューサーを務めてくれているkitはバンドをしていたんですけど「俺らもイケイケな風を吹かしてみたいよなっ!」とか言いながら、僕の方は野球をやらなくなり……。あとはヒップホップ以外でも、インディーズのロックバンドをよく聴いていたな。踊ってばかりの国とか、少し尖った系の。

ーーなるほど。KANDYTOWNがルーツにある一方で、ご自身が現在、恋愛にまつわる楽曲を中心に歌っている理由が気になります。

YRD Leo:そこはもう、僕自身がそういった曲をよく聴いて、普通に“喰らって”いるから。これはもうヒップホップとか抜きに。

ーーとなると、リアルタイムで影響を与えられている音楽は?

YRD Leo:J-POPが多いです。いわゆる洋楽を全然聴かなくなって。制作にあたり、近い音楽を聴いてインスピレーションを得ているんですけど……てか俺そもそも普段、どこからアイデアが出てきてるんだっけ。(取材場所に同席したいたkitに向けて)kit、わかる?

kit:友だちと喋ったこととかだと思う。Leoは制作となると、とにかく音楽だけに集中するタイプなので、色々な分野からインスピレーションを受けるアーティストさんたちとはまた別なんですよ。

YRD Leo:あ〜、そうだよね。というか僕、基本的に外に出歩かないんですよ。だから時々、人と喋って、自分とは違う視点を得るのを大切にしています。いま思い出したんですけど、昔はよくドラマを観ていました。しかも韓ドラばっかり。あれは最早、インスピレーションとか以前に、単純に韓ドラにハマってただけかな(笑)。

地元の大先輩=JAGGLAと念願のコラボを果たすも? 「ジャグさん、マジで頼みます」

ーー本題に入り、アルバム『COLORFUL』について聞かせてください。制作にあたり、なにか事前にテーマを掲げるなどはありましたか?

YRD Leo:最大のテーマでいうと、“新たなYRD Leo”を表現すること。そのために、これまでのキャリアでは絶対に交わってこなかっただろう方々を迎えて、自分にとって新たなジャンルに挑むことを決めました。アルバム全体としては、それぞれで表情やリリックの書き方が異なる8曲を重ねられたことで、“COLORFUL”というタイトルにも相応しい、納得のいく仕上がりになったと実感できています。

ーー少し難しいかもしれませんが、各楽曲を色で例えるとすると?

YRD Leo:「Prologue」は白ですね。「scroll (feat. dodo)」は黄色。「Angel」は……う〜ん、紫かな。今回のジャケットも紫だし。で、「Over」は青。「RudeBadBoy feat. テークエム」はめっちゃ赤ですね(笑)。アルバム内でも特にトリッキーだし、これはもう作りながら赤だと思っていました。次の「GIRL」は、オレンジ。アフロビートで、だいぶ夏だから。「River」はグレー。「love letter」は桜色かオレンジ。どちらにせよ暖色のイメージです。

ーーすらすらと答えが出てきて本当に驚いています。恐縮ながら、てっきり出てきても、数曲程度になるとと予想していました。プロデューサー陣の話題だと、今作でもkitさんが大半を占めています。

YRD Leo:「scroll」は客演のdodoさんにそのまま。「GIRL」はMionくん(同楽曲を手掛けるYoungBeat's Instrumentalのディージェイ名義)。残りの楽曲はすべてkitです。ふたりで話し合いつつも、いつも僕とは違う視点から、時にはやりたいことを先回りするようなビートを作ってくれるので、kitは本当にありがたい存在です。

ーー単純に興味本位なのですが、タイプビートなどは使わないのでしょうか。この質問をしつつ、ご自身の得意な曲調からして、そうした音色のビートがネット上に転がっていないこともわかってはいるものの。

YRD Leo:それこそ僕も、3年くらい前まではタイプビートを使っていたんですよ。ただ、若い子が新しく出てくるとき、聴いてみるとタイプビートを使うせいで「みんな一緒じゃん」なんて感じてしまうことが多くて。数小節だけドラムをいじるとか細かな調整も難しいし、そうした意味でkitと一緒に作るのがベストだと思っています。

ーー間違いないです。次に、本作の軸となる楽曲を挙げるとすれば?

YRD Leo:これはもう「GIRL」。今年4月、地元の梅田クラブクアトロで『YRD Leo ONEMAN LIVE “Prologue” with BAND & DJ SET』を開催して、その日を境に自分のなかで「なにかを変えたい。少しトリッキーな動きをしてみたい」と思うようになって。これが今回、客演楽曲を収録した理由でもあるんですよね。

ーーでは、まずは件の「GIRL feat. JAGGLA」から。JAGGLAさんは、地元・大阪の大先輩にあたる方です。

YRD Leo:「好きなラッパーは?」と聞かれたとき、僕が速攻で答えるのがJAGGLAさん。そのくらい大ファンだし、僕が音楽をガチることになったきっかけの人でもあって。この活動を始めた頃、「Model」で注目をされたときにジャグさん(=JAGGLA)が僕のことをXで紹介してくださって、メッセージまでいただけたんです。なので今回は自分の原点に立ち返るべく、一緒に制作をさせてほしいとお願いしました。

ーーJAGGLAさんのリリック、とてつもなかったです。

YRD Leo:いや、エグいですよね! 僕も最初に聴いたときに「マジで渋すぎる」「完璧やん」って思って、めっちゃ鳥肌が(笑)。

ーー個人的に唸ったのが〈俺がSwizzなら君がAlicia〉。

YRD Leo:ヤバいんですよ、本当に。でもジャグさん、バースの締切当日に「これって、いつまでに書いたらいいんだっけ?」って連絡をしてきて。「あ〜ジャグさん、それもう終わってます……」「ジャグさん、マジで頼みます……」みたいな(笑)。

ーーその点も含めてthe ラッパーすぎます。そして、ビートは宮城・仙台のMionさんによるもの。私は何者でもないですが、とにかく間違いないビートでしたし、仙台の北国でアフロビートを作っている時点でバチイケだなと。

YRD Leo:オシャレでカッコいいですよね。Mionくんには以前からビートをいくつも送っていただいていたんです。あと、Mionくんは自分で手がけたビートの解説動画をYouTubeにアップしていて。「GIRL」を書く直前は、その動画をよく観たりもしていました。

ーーたしか、6本目で更新が止まっているやつですよね。

YRD Leo:そう、6本しか上がってないやつ(笑)。KEIJUさんの楽曲「Tears」が最後で、たしか4年くらい前とかだったかな。今度お話をするときにでも「次の更新、いつですか?」って聞いておきますね。

ーーあの企画、本当に好きなのでお願いします(笑)。制作順でいうと「GIRL」の次は「scroll (feat. dodo)」でしょうか。

YRD Leo:そうですね。dodoさんも僕の好きなラッパーのひとり。ちょうど1年前のハロウィン前日、THE 超 PINKでのゲストライブのために大阪までいらっしゃることがあって、そこで知り合いの方に頼み、僕がひとりで乗り込むことに(笑)。

ーー勇敢すぎます。

YRD Leo:そのときは挨拶だけだったんですけど、今回のアルバムを作るにあたってやはり参加していただきたいなと。そうしたらビートまで作っていただけました。この曲の僕のバースは、アルバム内でもいちばんよく書けたと我ながら思っています。

ーーここまでの2曲は、すでにシングルカットに。最後の客演参加曲「RudeBadBoy feat. テークエム」が書き下ろしの新曲にあたります。

YRD Leo:前述のワンマンライブでも感じたところで、これまでの僕の持ち曲だとお客さんがアガるタイミングを作りづらいなと。なので「RudeBadBoy」はライブに向けたアッパーチューンとして仕上げてみました。テークエムさんとは2022年5月、CIRCUS TOKYOでのイベント『BRILLIANT』でご一緒していたり、ご本人が所属する梅田サイファーとも定期的な交流があったり。なにより客演ラッパーの一発目がジャグさんだったので、これはもう大阪でゴリゴリに攻めるしかないなと思って。

ーーテークエムさんのラインで〈迷惑かけたら恩返し 連絡返すの超大事 でも飲んでて忘れちゃうのSorry…〉が、まさに曲名そのままの“RudeBadBoy”ぶりでした。

YRD Leo:実はこの曲、僕のREC中にテークエムさんが消える瞬間があったんです。事前にリリックは仕上げてきていただいたにも関わらず、なんでも別室でイヤホンを付けて「ちょっと書き直してきたわ」とのことで。その理由が、僕らがREC直前にスタジオで喋っていた何気ない会話を、そのままリリックに入れ込むためという。〈野良犬から初代スター〉とかがそうなんですけど、本当にビビりましたね。

ーーこれ、どんな会話をしていたんですか?(笑)

YRD Leo:友だちにいる“一代社長”の話でした。昔はヤンキーだったけど、頑張って社長になった、みたいな。

ーーそういうことでしたか。改めて、客演参加の全3曲とも、本当に色々な方面への濃さが詰まっていますね。

YRD Leo:kitからも「ジャグさんの次がdodoさんのアーティストはさすがにいないだろ」って言われたくらいには(笑)。対極も対極ですよね。いまのシーンを見渡しても、特にオリジナルな3名にご参加をいただけて本当によかったです。そんなみなさんとの楽曲を1枚のアルバムに落とし込めた点でも、“僕なりのオリジナル”が見せられたんじゃないかなと思います。

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