小泉今日子「Someday」での学び、AKB48「Beginner」の斬新さ――井上ヨシマサが語る40年、“表現者”としてのポップス

もっとスマートなやり方もあったかもしれないけど、僕はこの人生でよかった

――歌詞の話が出ましたが、ヨシマサさんは作曲だけでなく歌詞を書くこともありますよね。今作にもご自身が作詞している楽曲もありますが、歌いたい内容や届けたいメッセージに関してはどのように考えていますか?
井上:たとえば、最近イライラしたこととか、理解できないことや悲しいことをきっかけに曲作りがスタートすることが多いんですけど、メロディを作っていく過程で、一緒に歌詞が生まれることも多くて。作曲だけをお願いされる場合もありますけど、デモテープを作る時、毎回その時の最初の思いを綴った歌詞は入れて作ってますよ。ただ、メロディを聴いて、作詞家さんがどう感じてくれるのかというのも興味深くて。自分の意図を汲み取ってくださる方も多いですが、なかには自分にはなかった発想で歌詞を書いてくださる作家さんもいます。自分としては作詞は、「このメロディを作る際に一緒に生まれてくる言葉」という感覚なんです。
――このメロディはこういう思いが表現されている、それを捕捉するための言葉みたいな?
井上:逆も然りで、メッセージと主にメロディが生まれてくることも! 「悲しい!」って気持ちからスタートした曲作りだったら、それがメロディにも反映されるわけですし、「そういう歌詞はやめてほしい」と言われても、作った本人がそういう思いのもと曲を書いたんだから、これしかないわけですよね。その落としどころで言うと「やっぱり許してあげよう」という展開になる、その選択が曲だけでなく自分を良い方向に導くこともあります。
たとえば、とある曲では歌詞の締めくくりが〈あなたにさよなら………〉だったものを、作詞家に「未来が見える締めの歌詞にできないか」と懇願し、戻ってきた歌詞が〈あなたの過去に さよなら………〉になったケースなんかもあります。
――作家として楽曲制作に携わる場合は作詞家に対してもそういうこともある、と。あと、前2作は他アーティストへの提供曲のセルフカバーなので、曲によっては提供したアーティストさんが歌っていたり、ヨシマサさんとデュエットしていたりしましたが、今作に関してはすべてご自身のオリジナルアルバムなので全曲自分ひとりで歌ってよかったところを、「In Your Sky」では吉岡忍さん、「Unlimited」では柏木由紀さんが歌唱しています。そこはちょっと意外でした。
井上:『再会 ~Hello Again~』も『井上ヨシマサ48G曲セルフカヴァー』も、最初からコンセプトが決まっていたのでゲストに声をかけ実現しました。3枚目となる今回はフルオリジナルアルバムですから、自由です。全部自分で歌ってもいいし、全部ゲストでもいい。このアルバムではヨシマサが歌ったほうがいい曲を制作してます。つまり、歌う人優先で楽曲制作が進むのではなく、歌に最適な人間を抜擢して制作が進むということが音楽においてとても重要だと考えたりするんですよ。マーケットや宣伝を考えると、、どうしても「誰が歌うの?」「誰が中心なの?」「誰の? どこの誰?」ということばかりに興味がいきがちですが、歌に寄り添ってただただ奏でられてるヴァイオリンが世界的な名演奏だったりすることもあります。「Unlimited」に関してお話ししますと、前回2作のアルバム作りを通して来年は“作曲家として”とか“シンガーソングライター”などの境界線を取っ払って、ひとつのグループやユニットとして活動するのもいいなと思い、ゆきりん(柏木)にもその話をしてみたら、本人もすごく乗り気でした。実現するかどうかは未知ですけどね。で、ここでは架空のユニットとしてアルバムに納めさせていただいてます。リードアルバムでありながらも、「この曲は彼女の声で歌ったほうがいい」と思い、やっていただいたものです。「In Your Sky」もそうです。吉岡さんの声があの楽曲に命を吹き込んでくれています。
――お話を聞いていると、このアルバムは40周年企画の集大成という側面だけでなく、ここから先の音楽人生をいかに豊かにしていくか、そのヒントも散りばめられているわけですね。
井上:作り始めた時はそこまで考えていなかったんですけど、結果的にそういう形になりました。一連のアルバム制作を機に再会したアーティストさんも多かったですし、おっしゃるように、ここから先のヒントをたくさん見つけられた、いい機会になりました。
最初は作曲家は5年ぐらいで辞めようと思っていたけど、40年かけてようやく表現者になれたような気がします。本来は、「作曲家としてもちょっと活動してたんですけど……」って言いたかっただけなのにね(笑)。でも、実は“職業作家”は35年前にとっくにやめているんです。そこからは“仕事を選びまくるわがままな作曲家”として続けてます(笑)。40年続けてきて、失敗もたくさんあった40年なんですよね。それは僕だけじゃなくて、きっと誰しもそうだと思うんです。失敗する時もあれば、うまくいくこともある。そして、また何かに挑戦しまた失敗する。「売れそうな曲を書いてください」「バズる曲をどんどんください」って、それだけに応え続けるのもひとつの生き方かもしれないけど、僕はそういう人生を選ばなかったから40年やってこられたんだと思うし、その結果やっと表現者という看板を得ることができた。もっとスマートなやり方もあったかもしれないけど、僕はこの人生でよかったなと思っています。
■リリース情報
ALBUM『Y-POP』
発売中
購入URL:https://king-records.lnk.to/YPOP
配信URL:https://king-records.lnk.to/Y-pop
<収録曲>
01. Lonely Umbrella(作詞:佐藤舞花/作曲・編曲:井上ヨシマサ)
02. それぞれの夢2025(作詞・作曲・編曲:井上ヨシマサ)
03. In Your Sky (feat.吉岡忍)(作詞・作曲・編曲:井上ヨシマサ)
04. ノンアルコールで乾杯(作詞:川咲そら/作曲・編曲:井上ヨシマサ)
05. 上がってなんぼ(作詞:川咲そら・井上ヨシマサ/作曲・編曲:井上ヨシマサ)
06. 融合(作詞・作曲・編曲:井上ヨシマサ)
07. Unlimited (feat.柏木由紀)(作詞:佐藤舞花/作曲・編曲:井上ヨシマサ)
08. BANZAI(作詞・作曲・編曲:井上ヨシマサ)
09. リハーサルタイム(作詞:川咲そら/作曲・編曲:井上ヨシマサ)
10. 僕の居場所(作詞・作曲・編曲:井上ヨシマサ/コーラス:村山彩希)
■公演情報
『井上ヨシマサ40周年アルバム 第3弾発売記念ライブ「ヨシマサがやって来る YYY」』
2025年12月14日(日)OPEN 15:00/START 16:00
Club Mixa(池袋)[Mixalive TOKYO_B2F]
GUEST:柏木由紀/吉岡忍
<チケット>
全席自由 8000円(税込)*配信あり
※整理番号順
※当日券500円増し
※未就学児入場不可
受付:https://www.confetti-web.com/@/inoueyoshimasa48
電話受付:050-3092-0051(平日10:00~17:00受付)
井上ヨシマサ オフィシャルサイト:https://inoueyoshimasa.com/
X(旧Twitter):https://x.com/everydayyoshim1
Instagram:https://www.instagram.com/yoshimasa444inoue/
YouTube:https://www.youtube.com/@444yoshimasa





















