米米CLUB、シリアスなことも笑いで吹き飛ばしてきた40年 カールスモーキー石井&BONが追求するライブの美学

米米CLUB、追求するライブの美学

言っちゃいけないを言うのが米米CLUB流ーー「笑いはアイロニカルであるべき」

『米米大興行 人情紙吹雪 〜踊ってやっておくんなさい〜』ぴあアリーナMM公演の模様
『米米大興行 人情紙吹雪 〜踊ってやっておくんなさい〜』ぴあアリーナMM公演の模様

ーーステージセットが立体的なのも米米CLUBの特徴で変わらない魅力です。今回も巨大な般若の面が鎮座して、お稲荷さんとか鳥居とかも。

石井:お客さんって正面だけじゃなく、横からとか上の階から観ている人もいる。映像だったらただの光の点滅でしかないけど、立体の造形物は観る角度によって違ったかたちに見えて、それによってお客さんが感動したり面白かったり、すごかったと思う部分とか感想が変わってくるんです。立体の造形物にはそういうすごさがある。だから俺は立体にこだわっています。もちろん映像で済むものもいっぱいあって、幕間でショートムービーを流すアーティストも多いけど、『a K2C ENTERTAINMENT TOUR 2017 ~おせきはん~』のときはその15分くらいを使って、寅さん(『男はつらいよ』)をモチーフにしたお芝居をやったんです。そうやって、できるだけ濃いものを提供できるようにやってきました。

ーーペンライトも入場時に全員に配布して振ってもらって。

石井:このご時世でみんな苦しいのに集まってくれるから、その場で使えて、参加している感のあるものがいいなと思って。米米って、俺はバンドのライブだと思ってなくて、ショーだと思っているんです。見世物感覚というか。みんなを圧倒させてなんぼという。踊りがこんなに上手いんだぜ!とかではなくて、楽しくてしょうがないというところにどこまで持って行けるかを勝負としている。

ーー久しぶりに声を出して笑いました。

石井:でしょう! このご時世、やっちゃいけないこと、言っちゃいけないことだらけだから。だからこそ1万人の前で「ウンコ」って言いたかった(笑)。ジェームス小野田が任俠の親分で、ずっと「ウンコ臭い」と言われる役で。でも人間というのは残酷だし、笑いはアイロニカルであるべきだと思っていて。ちょっとくらい曲がったことをやらないと、なかなか笑ってもらえないし、まっとうなことを言って笑いが取れるのは政治家だけですから(笑)。

BON:最初は気の弱い親分という台本だったんだけれど、いつの間にか痴呆症の親分に変わっていって。でもこれってけっこうリアルな話で、うちらの世代は親がもうそういう年齢で、うちは母親が施設に入っているから「こうだったよ」みたいな話をしたことがあって。そのときに(石井が)ニヤニヤしながら聞いていたから、「こいつ絶対何かやるな」と思っていたら、本番でそれをネタにし始めて。でも、ファンも同じように歳を取って来ているから、そういう経験をしている人もけっこういるんです。

石井:ああやって笑い飛ばしてほしいと思っている人は多かったと思う。

BON:介護って本当に大変だから。それを「大変だね」じゃなくて。

石井:それを笑うことって、すごく大事だって思う。シリアスにとらえすぎることによる悲劇もいっぱい起きてるじゃん。それを1回、「笑っていいんだ」って肩の力を抜いてあげるところを作ってあげないと、息が吸えなくなっちゃう。そういう世代もいっぱい会場には来ているから、笑い飛ばしてあげられたらいいなって。

BON:本当にそう思うよ。

石井:それに1万人規模の会場で、「気の弱い親分」という演技は難しいんです。うしろのお客さんにまで届かない。でも「ウンコ」は、最後尾まで一発で届くんですよ。

『米米大興行 人情紙吹雪 〜踊ってやっておくんなさい〜』ぴあアリーナMM公演の模様
『米米大興行 人情紙吹雪 〜踊ってやっておくんなさい〜』ぴあアリーナMM公演の模様
『米米大興行 人情紙吹雪 〜踊ってやっておくんなさい〜』ぴあアリーナMM公演の模様
『米米大興行 人情紙吹雪 〜踊ってやっておくんなさい〜』ぴあアリーナMM公演の模様

ーーあのネタの裏に、そんな深い意図が!

BON:あったんです。まさかの任俠と介護問題というテーマが!

石井:ただあのころの任俠映画を観ている人はそんなに多くはいないと思うんです。でも何となくは知っている、何となく共有している世界観を探すのが、何よりも楽しいんです。

ーーココだ!という小さなポイントがあるんでしょうね。

石井:あるんです。それにセリフも、わざと難しい専門用語を入れていて。“手妻”とか。映画を観ていないと知らないんだけど、知らなくてもいいというポイントをわざといくつか作るんです。“喝采”も賭場の言葉なんです。サイコロを振るときの手さばきのことで、ただ「喝采」カバーをしたのではなく、ちゃんと任俠の話に繫がってる。MINAKOも歌っているときはわかってなくて、「お兄ちゃん、そういう意味があったんだね! 深いわ~!」って、終わってから(笑)。

ーー第二部は時代を作ったヒット曲のオンパレードでした。ゴスペラーズのゲスト出演も見応えがありましたね。

石井:ただ、ゴスペラーズには悪いことをしたと思って(笑)。でもしょうがないですよ、米米CLUBに飛び込んで来てしまったんだから。

『米米大興行 人情紙吹雪 〜踊ってやっておくんなさい〜』ぴあアリーナMM公演の模様
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『米米大興行 人情紙吹雪 〜踊ってやっておくんなさい〜』ぴあアリーナMM公演の模様
『米米大興行 人情紙吹雪 〜踊ってやっておくんなさい〜』ぴあアリーナMM公演の模様

ーーゴスペラーズとはけっこうご縁が?

石井:同じソニーだし番組などでの共演経験、カバーもしてくれていたり、シンパシーを感じてくれているみたいで。それに彼らはアカペラというシンプルなものを武器にしているから、米米のような派手なステージングに対する憧れもあったのかな。決して遠い関係ではなかったから、ああいうこともできたと思います。

ーーゴスペラーズが「浪漫飛行」を一緒に歌ってくれて、歌詞を40周年のお祝いに変えていた部分もあって。

石井:グッときましたね〜。「俺らのことが、そんなに好きなのか〜」って涙が出ました。

BON:機会があったら、また一緒にやりたいなって。

石井:もうやってくれないよ。米米CLUBと一緒にやったアーティストは、大体2回目は嫌がるんです(笑)。

ーー「ひとり」はゴスペラーズだけで歌うはずが、石井さんも参加して。あれはリハーサルとは大幅に違ったということですよね?

石井:ああいうのは台本を作ってしまうと面白くないですから。

BON:ああいうときのてっぺいちゃんって、生き生きしてるよね(笑)。ぴあアリーナMMの1日目はおとなしくしていたけど、2日目はやりたい放題で「また始まったな」って思いました(笑)。

石井:村上(てつや)さんは「一緒に歌いましょう」と言ってくれたんだけど、1日目は紳士な振る舞いをして、うしろで斜め上を見ながら下唇を嚙んで我慢してました。

BON:カメラ収録が入った2日目に大爆発!

石井:でも、ちょうどYouTube「THE FIRST TAKE」で「浪漫飛行」が公開された後で、YouTube「OPEN MIC by JIM BEAM」で俺とゴスペラーズのセッションが公開されたばかりだったし。みんな喜んでくれて良かったです。

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