あいみょんや優里ら輩出 ストリートライブシーンで頭角現す若きシンガーソングライター・Gaku、夢に近づくための挑戦

遡ればゆず、いきものがかり、あいみょん、優里など、J-POPを代表するストリートライブ出身のアーティストは少なくない。昨年『NHK紅白歌合戦』初出場を掴んだOmoinotakeも、渋谷でストリートライブを重ねるなかで実力や知名度を高め、ドラマタイアップをきっかけにブレイクした。
近年、ストリートライブシーンを後押しする動きが加速している。その背景には、東急株式会社が発起人として推進する「FROM STREET PROJECT」の存在がある。インディーズアーティストの創作・表現活動を支援して世の中を楽しくする“舞台”を街につくるプロジェクトだ。
渋谷では、“公認”のストリートライブ「Shibuya Street Live」を展開。渋谷アクシュ、渋谷サクラステージ、渋谷駅東口地下広場など複数の会場でミュージシャンに敷地を開放している。特に渋谷アクシュでは毎週水曜、渋谷サクラステージでは毎週金曜日にストリートライブイベントが定期開催されており、若手ミュージシャンたちが渋谷の街に歌声を響かせている。
新宿・歌舞伎町にある東急歌舞伎町タワーでは、2022年より「Kabukicho Street Live」プロジェクトがスタートした。年間700組が参加する公認ストリートライブ制度は、複雑な申請手続きが不要で、LINE公式アカウントから希望の時間を予約するだけで無料利用できる画期的なシステムとなっている。平日17時〜21時、土日祝13時〜21時という時間帯は、仕事帰りや休日を過ごす人々に音楽を届けるうえで理想的だ。インバウンド人気の高い新宿では、海外からの観光客が足を止めることも多い。毎月開催される「Kabukicho Street Live Fes.」では、歌舞伎町シネシティ広場をメイン会場に約20組のアーティストが集結。ライブの様子は東急歌舞伎町タワーの巨大屋外ビジョンにも投影され、街全体が音楽に包まれる。
ストリートライブの魅力は、いつどこでファンと出会えるか分からないという可能性の大きさにある。音楽を目的としない通行人の足を止め、心を動かせるか――そんな挑戦のなかでアーティストの実力やメンタルは鍛えられるだろうし、成功を経験すれば大きな自信になるだろう。また、通りかかった人がスマホで撮影した映像がSNSで拡散され、一夜にして知名度が跳ね上がる可能性も、現代ならではの醍醐味だ。
そんなシーンで活動する一人、Gakuが11月11日に歌舞伎町で行ったストリートライブの模様を取材した。

Gakuは、22歳の若手シンガーソングライターだ。自身のTikTokアカウントでは、オリジナル曲やカバー曲の弾き語り動画を投稿。力強さと切なさを併せ持つ歌声でファンを着実に増やし、現在TikTokでは2.1万人のフォロワーを抱えている。今年4月に1stシングル「偽り」をデジタルリリースし、ソロアーティストとしてデビューした。そんな彼の夢は、音楽を始めるきっかけとなった父と日本武道館で共演すること。この壮大な目標に向かって、都内近郊でライブ活動を精力的に展開し、まだ見ぬリスナーとの出会いを求めている。そして12月28日には、今年の活動の集大成として、ワンマンライブ『楽祭 ~Gaku LIVE 2025~』を下北沢DaisyBarで開催する。
11月11日の19時を過ぎたころ、Gakuがシネシティ広場に登場。広場内は3区画に分けられ、各区画3名のアーティストが順に演奏する「3×3」形式でライブが展開されており、活気が溢れていた。


そんななか、Gakuは最初に、前週にリリースしたばかりの新曲「燈」を届けた。やはり新曲を一番に聴いてほしい。そんな純粋な想いを感じさせるオープニングだ。以前インタビューをした時に「マイクがいらないと言われるほど声が大きい」(※1)と話していたが、生で聴いてみると確かにその通りだ。よく通る声は遠くにも届いていたようで、Gakuが歌い始めると徐々に人が集まり始めた。2曲目は、秦基博「鱗」のカバー。中音域が豊かな彼の声域によく合った選曲だ。誰もが知る楽曲の登場を受けてさらに人が集まってきたため、間奏では「こんばんは、Gakuです!」と名乗るなどアピールも欠かさない。オリジナル曲「切夏歌」が続けて披露されるなか、海外からの観光客も立ち止まって耳を傾けていた。

ライブの後半に差し掛かると、Gakuは、back number「ヒロイン」をカバーした。TikTokに投稿したカバー動画の中でも特に再生数の多いこの曲は、Gakuにとって自信のあるレパートリー。冬の訪れを感じさせるこの日の空気にぴったりだったのも相まって、スマホで動画を撮りながら近づいてくる人も多くいた。その一人ひとりに体を向け、笑顔で歌を届けるGakuの姿が印象的だった。5曲目は、自身の楽曲「Blue」。感情を込めた歌声が夜空に響き渡る。翌月に迫ったワンマンの告知を挟み、Gakuは、デビュー曲「偽り」でこの日のライブを締めくくった。最後まで残った観客が温かな拍手を送るなか、Gakuは長くお辞儀をして、観客への感謝を表現した。

ライブ終了後、Gakuに話を聞きに行くと、早くも今回のライブを振り返り、よかったところや改善点をピックアップしながら、「次はこうしたい」と意欲を燃やしていた。Gakuは渋谷や歌舞伎町だけでなく、川崎でのストリートライブにも挑戦している。「音楽のまち・かわさき」というスローガンを掲げる川崎もまたミュージシャンに開かれた街であり、「川崎駅東口ストリートミュージックパス」という登録制のストリートライブ制度を実施している。複数の拠点でストリートライブを重ねることで、Gakuは歌を磨くとともにファン層を広げている最中だ。12月28日のワンマンでは、ストリートで出会った人々も引き連れて新たなステージを迎える。夢への道は、まだ始まったばかりだ。

※1:https://realsound.jp/2025/09/post-2165985.html

























